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本を介してーお正月の実家

実家で過ごしたお正月。


お供の本は、先月入手した串田孫一さんの『星々の戯れ』。
バラバラと短い文章が書き連ねられている「断想集」。
手元に置いてその時々の琴線に触れる「断想」を味わっていきたい本だ。

リビングでペラペラと本のページをめくりながら、
母親に「串田孫一って知ってるー?」と聞くと「知らないなー」と返ってくる。そこで、「私も知らなかったのだけどね…」と彼の本に出会った経緯とにわか串田さん情報を話した。

しばらくして、私たちの会話を遠くから聞いていたらしい父親がリビングにやってきて、「これ、その人の本」と、ギリシャ神話の解説をした文庫本を差し出してきた。

串田さんについては特に何も知らず、ギリシャ神話に関する本としていつしか買った本だとのこと。
「へぇ~」
「あ、表紙挿絵が安野光雅さんだ~!」
なんて、差し出された本のページをパラパラと眺める。
すると何も頼んでいないが、父親は「持って帰っていいからね」と一言残してまた立ち去っていった。

他のことに関心が移ってからも、本はそのままテーブルの上に放置していた。すると、母親があるタイミングで私の持ってきた本を手にとってページをめくり始めた。
数分後には鼻を啜る音が。
「辛い。こんなの涙なしには読めないよ~」と涙を拭く母親。

胸打つ文章が散りばめられていると思ってはいたが、そんなに?と驚きながら、笑ってしまった。

本を介して、父と母から返ってきた一部始終が
私の父と母らしくって、あたたかった。
帰れる場所があることがありがたい。


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