夢が破れた日
ぼんやりと目指した夢。
夢がないと格好がつかないと思っていたのかもしれない。
それでも夢を見たかった。
それがあれば生きていいと思われると思っていた。
子供の頃から好きで、目指した美術業界は、
非正規雇用で転々としなければいけない世界だった。
給料は手取りで10万ちょっと。
それでもやろうと思った。
持病の偏頭痛が酷かった、家の状況も最悪だった。
そんな中で仕事を続けていくのが辛くなって、
逃げるように夢の世界に飛び込んだ。
幸いにもいることができたけど、今となっては良かったのかわからない。
母には何も知らないまま、指をくわえて見ているよりいいじゃないとは言われたけど。
でも、やっぱり、
人が一人生活していく給料を渡さない
優秀だとしても契約がきたらさようなら
こんな世界じゃ夢もなにもないと思う。
それでも美術業界に夢を見て、
それでもよいと多くの人がくるのだろう。
夢が破れる人なんて私ばかりじゃないけど、
ビリビリと張り裂けた心はすごく痛い。
内側からなにかが暴れだす。
今は正社員。
ボーナスも3ヶ月目だけれど、
与えてくれる会社を選べた。
残業代もきちんとくれる。
お金のために働くのは初めてじゃない。
2回目だ。
あのときは父が無職になって、とにかく働いた。
ぐちゃぐちゃと感情が混じる。
私だけじゃない、
私だけじゃない、
私だけじゃない、けど、
あの子は呑気にまた美術業界で働いていきたいという。
旦那さんの稼ぎがあるから、
雀の涙程度のお給料でも良いのだ。
「美術業界で働いているんです」
(手取りは10万ですけど)
夢ってなんだろう。
やりたいことってなんだろう。
ただ、働いて、好きなものを買って、
食べて、飲んで、
たまに一緒にいたい人たちといれたら
幸せじゃだめですか?
こんな私は何をしているんだと言われるんですか?
私は、
一生懸命生きていた。
私の人生を、その時はこれが最善なのだと。
夢が終わりました。
もう二度と戻ることはない世界。
ただ、哀しかっただけ。
さよならも言わせてくれない。
ただあるだけの世界。