あたらしい家中華と私
朝の満員電車に押しつぶされて車輌の角っこに追い込まれ。そこでふと顔を上げた時、背の低い私の文字通り目の前にあったのが、あたらしい家中華の広告でした。
酒徒さんの本…!中国好き、中華料理好きの私はもちろんSNSで酒徒さんのお名前を見聞きしたことはあり、ネットで公開されているレシピをスクリーンショットにとって眺めたりしたこともあるのですが、本を出版されていたことはその広告で初めて知りました。すでに何度も重版されている模様。全く存じ上げなかった。買って帰らなければ。
その日の仕事帰りに迷わず会社の最寄で本を購入し、待ちきれず電車の中でパラパラとページをめくりながら帰路に着きました。
さきほど酒徒さんのレシピのスクリーンショットを眺めたことも、とサラッと書いたのですが、そう、実はつくったことはなかったのです。スマホでレシピを見ていると、気づいたら他の調べものをしていたり、SNSを見ていたり。本があったらいいな〜と心の隅で思っていたら、知らないうちに出版されていた、こんなに嬉しいことはありません。
2週間経ったか経たないかといううちにあっという間に10品以上つくり、自慢して写真を送りすぎてついには友人が我が家に椎茸の肉詰め蒸しを食べにやって来たこともありました。
なぜこんなにも私がこの本にハマってしまったかといえば、特別料理に詳しくない私も実は中国で同じように素朴なお家ご飯に感動した経験があるからです。
大学時代は中国語科に所属しており北京に留学していたこともある私、中国語の次に好きだったのは本場の中華料理でした。数年前最後に渡航した中国の地は雲南でしたが、そこで数日泊まったゲストハウスでホストのおじさんが毎日つくってくれる家庭料理が美味しくて美味しくて。ひき肉と海苔と豆腐のスープなんて、シンプルな食材で私も日本でつくれそう。でもこの味私には絶対に出せない。何が違うんだろう…。
そこで、美味しかったな〜また食べたいけど食べられないな〜と思っているだけで、それ以上の探究心を発揮させなかったのが私とレシピを出版される酒徒さんの違いなのだと思いましたが(笑)、私はこのあたらしい家中華を手に入れたので無敵です。私も家であのゲストハウスのおじさんの家庭料理の数々が再現できるかもしれないのです。
まず、あたらしい家中華に出会って、頻繁に蒸し料理をつくるようになりました。蒸し器なんてもってないし、置くスペースもないしなあ…と、これまで蒸し料理に挑戦する気もなかったのですが、深めのフライパンの中に台を置いて湯を沸かし、台の上に皿をのせて蓋をして蒸すだけ、と書いてあり、目から鱗でした。
これで私の日々の料理のレパートリーに、中華茶碗蒸しや客家式蒸し豚などが加わりました。
料理酒を紹興酒にするだけで、なんとなく中国を思い出す味わいになったり、塩や醤油のシンプルな味付けなのに、あ〜これこれ、という味になったり。
素朴な中国の家庭の味だけど、中国になんの思い入れがない家族が食べても美味しいと感じてくれる(笑)、そんな料理の数々が載っているのがこのあたらしい家中華です。
つい美味しかったものばかりをリピートして、まだつくりきれていない料理もあるのでつくりたいですし、この本に載っていないけれど自分でつくってみたい大好きな中国の家庭料理もまだまだあるので、ひそかに第二弾を期待していたりします(笑)。