【8/7巨人戦●】心の中で、ぽんと背中をたたくこと。
「ママ、あれ見て」と、息子が言った。荷物を片付けながら「どうしたの?」と聞くと、「丸ちゃんが…一塁から立てないみたい」と、言う。息子が指差した方を振り返ると、丸ちゃんは悔しそうに、一塁ベースにうずくまっていて、コーチに手を差し出されてようやくその場から立ち上がったところだった。
それは長いペナント一つの敗戦のはずだけれど、そのたった一つの敗戦には、多くの悔しさが集う。
代打で打てなかったぐっちの悔しそうな表情を見た。Twitterでは、ベンチから最後まで立ち上がれないてっぱちの写真を見た。1イニングを投げきれなかったうめちゃんの、そして打たれた田口の、みんなの思いがそこに、凝縮されている。
「ベンチのみんな、田口の背中叩いてなぐさめてたよ。はらじゅりもなぐさめてた。」と、ベンチを見ていた夫は言った。「なんか、いいチームだなって思ったよ。雰囲気はきっといいんだよ。それで勝てるのかどうかはちょっと…わからんけど…」と、言っていた。
打たれた瞬間、打てなかった瞬間、負けた瞬間、「ああ…」と、大きなため息をつく。うまくいかなくてもどかしくて、ああまたあのしんどい日々がやってきたのかと思うとやるせなくて、ここまでうまくいっていたのになんでという気持ちだって湧いてきて、どうしようもなくてふと、神宮の空を眺める。そこには、きれいな半月が浮かんでいる。
ベンチから立てないてっぱちの思いを、一塁ベースにうずくまった丸ちゃんの思いを、みんなの悔しいその思いを、月が照らし出す。それを目にして私は、なんだか泣きそうになる。大丈夫、大丈夫、いつかきっと、うまくいくからと、背中をぽん、と叩きたくなる。もどかしくて、やるせなくて、どうしようもないのは、私じゃなくてきっと、選手たちなのだ。その当たり前の事実をまた思い出す。
私にできることは、心の中でぽん、と、みんなの背中をたたくことなんだよな、と、なんとなくそんなふうに思う。
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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ
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