16年前の9月
私は16年前に猿之助さんの歌舞伎に出合いました。
8月の自主公演「亀治郎の会」でした。
母の影響で小学生の頃から時代劇をTVでよく観ていました。人生の初観劇は千葉真一さんが主催していたJACです。
中学高校時代は演劇部に所属。女子校だったので男役もしたし、裏方も好きだったので演出みたいなこともしました。
当時は小劇団ブーム。三宅裕司さんのラジオが好きで、スーパーエキセントリックシアターをよく観に行っていました。平行して劇団四季も時々観ていました。
学生時代で観劇熱はいったん納まり、卒業後はいろんな仕事をしながら修行時代を経てプロとして司会を生業としていました。
ブライダルの司会は裏方です。人前に出るけど裏方。そして新郎新婦の絶対的な味方。しゃべることができるのは当たり前で、コミュニケーション能力が問われる仕事でした。
観劇熱が再燃したのは16年前です。
それまで気晴らしに時々観劇する程度でした。生きていくのに疲れた時がありました。司会を頑張り過ぎていたことや、いろんなことが重なり心身ともに疲れてしまった。
そんな時、歌舞伎ファンの友人ができました。以前から興味があったので誘ってもらい2008年9月歌舞伎座のチケットを一緒に手配してもらいました。
楽しみすぎて予習をしていると、TVで観た市川亀治郎という人が8月に自主公演をすることを知りました。実践の予習を兼ねて一人で行くことにしました。
そこで衝撃を受けました。
亀治郎さんの「京鹿子娘道成寺」は圧巻でした。役者さんはもちろん、衣装、道具、音、光。。舞台上にあるもの全てに生命を感じました。
全てから波動を感じるというか、生きてそこにいて、私の心にバンバン訴えてくるのです。
約1時間を踊りっぱなしの亀治郎さんにも驚きました。繋いできた歌舞伎の血を感じたのです。
観ながら涙が出て、私もこんなふうに生きてみたい、と思えました。
カーテンコールはスタンディングで劇場が揺れているのかと思うほどの拍手でした。私は立ち上がって呆然と見ていました。
翌月、亀治郎さんは昼は歌舞伎座、夜は新橋演舞場とハシゴで出演していました。私は亀治郎さんを知りたくて昼夜行ける限り通いました。
その翌月は平成中村座の二カ月公演に毎週のように行きました。平成中村座はチケット代が私にはとても高額。でも観たくて週1回ペースでした。
勘三郎さんを観て号泣しました。芝居を観て号泣したのは初めてでした。お客と一体になってくれる勘三郎さんに心をハグされたような気がしてました。
1年間、東京の歌舞伎公演は全て観ました。全体の中の亀治郎さんを知りたかったのです。そして、やはり私の心が動くのは亀治郎さんだと澤瀉屋の「鬼揃紅葉狩」を観て心が決まりました。
人生が何だか楽しくなりました。
亀治郎が猿之助になり、観るのがつまらなくなったらSNSも止めようと思ってきました。でも猿之助さんはいつも面白かった。
約15年の私の人生は猿之助さんの舞台とともにありました。
司会を辞めて、観劇を生活の中心にして生きるようにもなりました。
事件から1年ちょっと。こんなに猿之助さんを観ない期間が訪れると思っていませんでした。怪我をしても病気をしても必ず復活してきましたし。
わかっていたつもりでも「明日はないかもしれない」という言葉がやっと身に沁みました。
この1年の私の心を救ってくれたのが芝居でした。猿之助さんがご縁を結んでくれた大衆演劇は、猿之助さんと共演をした恋川純弥さんをはじめ「猿ゆか仲間」の皆さんに癒されてきました。
特に、澤瀉屋と書かれた衣装を着ている純弥さんの写真を見て私がどんなに嬉しかったことか。そして、猿之助さんと共演した時のインタビュー記事にどんなに救われたか。
舞台を観に行くうちに、いつしか純弥さんの芸や芝居を好きになっていました。
今強く想うのは、観始めの頃は苦手だと思った「触れ合い」に私の心が癒されてきたということです。
大衆演劇は舞台が近く、役者さんもお客との一体感を大事にしてくれます。終演後に「お見送り」をする劇団が多く、純弥さんは基本的になさる方です。
親しくない人との握手は苦手だったけど、その触れ合いがいつの間にか心地よくなってきました。これが大衆の醍醐味の一つなのかなと思う。1分もないことだけど。
猿之助さんと初めて握手するまでに7~8年かかってます。純弥さんとはすぐに回数も超えてしまった。当たり前かもしれないけど、私には当たり前ではないのです。
私自身を変えてもらったように思うのです。
会いたい人や好きな人とは触れ合っていきたいと思うようになりました。時間を作って触れ合うことは、心を豊かに柔らかくしてくれることなのだと気づいたのです。
それに芝居熱が再燃しました。
純弥さんは多才でクリエイティブな方です。演出もします。純弥さんのお芝居が大好きになり、大衆のお芝居に興味が出てきました。劇団暁の暁人座長の演出も好きになりました。
今月は二人が揃う一か月です。
猿之助さんと出合った16年前と同じように、篠原演芸場に通っています。
「TEAM JUNYA」公演。
座長の純弥さん、メンバーの暁人さん、二人中心のお芝居を毎日違う作品で観ることができるのです!こんな幸せな一か月はありません。
また、45才の純弥さんは芸能生活45周年です。
もう本日ですが。。11日12日は篠原演芸場を飛び出して、北区にある北とぴあ つつじホールで特別公演が行われます。
富山県の「おわら風の盆」を題材にした坪田塁さんのオリジナル脚本のお芝居、プラス舞踊ショーです。
おそらく当日券が出ると思います。Xでタイトル検索していただけるとサイトを見ることができます。是非、チェックしてみてください。
とても楽しみにしています。私は45年の1年ほどしか知らないけれど、「今」の純弥さんの舞台から役者人生や人間を感じられると信じています。
最近は私のnoteを新しく読んでくださっている方もいらっしゃるようなので自身のことを含め近況を書いてみました。
私は楽しく猿之助さんを待っています。
aya