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<2010年アメブロ編序幕⑨>
2010年の亀治郎さんの9月以降は舞台出演は1つでした。毎月のように舞台がある現在からは信じられません。亀治郎さんがいない歌舞伎を楽しみながら私なりに澤瀉屋を追いかけていた年末のこと。
10月22日 猿之助歌舞伎の魅力@百段階段
目黒雅叙園に行ってきました。「猿之助歌舞伎の魅力」三代目市川猿之助さんゆかりの衣装展です。
展示会場は、東京都指定有形文化財「百段階段」昭和10年に雅叙園の3号館として建てられた木像建築です。百段階段へ行くためだけのエレベーターに乗ると現世とは別世界へ連れていかれるようでワクワク。
入り口には、当時の「スーパー歌舞伎」のポスターが貼ってあり、出演者の中に、今は猿之助さんのもとを離れている亀治郎さんのお名前が。私の知らない時代が新鮮です。
その先に、ケヤキ板の階段が99段。途中途中に7つの部屋があり、テーマに添って展示がしてあります。
畳の上に飾られた衣装たちが近い!30㎝ないくらいの手の届きそうなところに、それぞれのオーラを放ちながらそこにあるのです!三代目の舞台姿は拝見したことはないけれど、舞台の上で役者さんとともに光り輝いていたかと想うとドキドキして拍手が聞こえてくるような気さえしてきます。
静かにそこにあっても、衣装にも命があり、生きているのだと想い知らされました。どの衣装にも、役の性根と歌舞伎ならではの遊び心が感じられて粋です。
それに、拝見したことがある演目の衣装に出会うとやはり嬉しいですね!石川五右衛門や濡髪長五郎、「黒塚」の老女。岩長姫や更科前の着物や、写真で穴の空くほど拝見した「加賀見山~」の岩藤は、縫い目や模様を間近で見ることができて感動です。すれてほころんでいる箇所もリアルで、舞台の壮絶さがわかりました。
「澤瀉(おもだか)屋」の家紋、澤瀉や、本名「喜熨斗(きのし)」にちなんだ柄なども面白かったです!
スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の衣装が凄かった。肩に大きな蛸や蟹が乗ってます!柄じゃないのです。花魁みたいに前に垂らす帯も大きい。カツラも着けて総重量20キロは有るそうです。目の前にすると、その迫力に圧倒されます。
中でも私が一番テンションアップしたのは、舞踊の世界をテーマにした「清方の間」。美人画で有名な鏑木清方の絵が描かれてある部屋です。
「悪太郎」はお正月に亀治郎さんが踊ったばかりですし「浮世風呂」は偶然にもTVで、猿之助さんの’三助’、’なめくじ’の亀治郎さんを拝見してました。’なめくじ’と平仮名で着物に書かれてあり、肩から針金で目が飛び出しているのです。
そして、泣けたのが「吉野山道行」の’佐藤忠信 実は源九郎狐’の衣装。先日の「亀治郎の会」で亀治郎さんが、猿之助型で演じて記憶に新しい!!
各部屋に歌舞伎の小道具も飾ってあり楽しいです♪扇子が大きくてびっくり!五右衛門のキセルもありました。岩藤の草履もしゃがんでじっくり見ちゃいました。
夢のような時間を過ごすことができました!役者さんの温もりまで伝わってくるようです。もちろん、衣装をはじめ裏方さん方のこだわりやご苦労も感じることができ感動です。
歌舞伎の「気」に負けない会場「百段階段」だからこそ、三代目猿之助さんの世界が創り出せたと想います。楽しませていただき、ありがとうございました。
10月28日 じゃじゃ馬馴らし!
行ってきました’彩の国さいたま芸術劇場’ 彩の国シェイクスピア・シリーズ第23弾「じゃじゃ馬馴らし」役者さんすべてが男性というオールメールシリーズとしては第5弾です。
演出・芸術監督は蜷川幸雄氏。主演のキャタリーナ役は市川亀治郎さんです。NINAGAWA十二夜の時に、蜷川さんが亀治郎さんにまた一緒にやろうと言った言葉が実現となりました。15分の休憩を含む約3時間はあっという間。めちゃめちゃ楽しくて笑いっぱなし。亀治郎さんが生き生きしていて楽しそうでサービス精神いっぱいです。
規模はコクーンの半分くらいのイメージでしょうか。一体感を感じる響きが良いホールでした。開演直前に蜷川氏の姿もありました。
もう、セリフセリフセリフ!!というくらい言葉だらけ!それに早い!歌舞伎の真山作品を2倍速で観ている感じ。途中、実は適当なことを言っているのではないかと疑ったくらい早いです。
亀治郎さんはダンスも上手。パニエでフワフワに広がったドレスが似合います。そして動きが一番キレイです!
腰の位置が動かないから、スカートが床と平行してスーッと歩いてくるのです。扇の扱いやのけぞり、草履ではなくハイヒールなのに変わらずキレイです。歌舞伎って凄いです、どんな芝居でも通用するのですね。亀治郎さんは、言葉のリズムで歌舞伎のテクニックを取り入れようと考えたそうです。
セリフが時々、わざと歌舞伎っぽくなり、見得もする。キャタリーナがですよ。大向うが入ってほしかったです。間が良くて笑えますし、グーパンチも面白いです。男声と女声を使い分け、啖呵を切るのも笑えます。
そのキャタリーナを調教する夫、ペトルーチオが筧利夫さん。TVの印象どおりの方で、サイコーに面白いです。セリフが全部早口言葉ではないかと思うくらい早い。
すべての役者さんから目が離せなくて、クオリティが高いです。それぞれのキャラが面白くてとてもリアルでした。
ラストのキャタリーナのお説教のシーンは圧巻!じゃじゃ馬から改心した彼女が、世の女性に「旦那様に尽くしなさい」とお説教するのです。舞台から客席にむかってお説教する言葉から亀治郎さんの心意気を感じました。空気がギュッとなる感じ。気持ちがバンバン心に響いてきます。
そして、ペトルーチオがキャタリーナの手を引いて去る瞬間の亀治郎さんの意味深な笑み。キャタリーナは、無意識に調教されたのではなく、自分の意思で調教され、進化したのではないかと。精神的な夫婦逆転の形が、近い将来やってきそうな。女性は、タダでは調教されないのよ~なんて。
空間が異空間になり、お客とお芝居が一体になり、夢の世界へと連れていってもらいました。
亀治郎さんが綺麗でした。目力と存在感は歌舞伎並みでした。カーテンコールの亀治郎さんを見た時、2年前に「亀治郎の会」で京鹿子娘道成寺を踊り、スタンディングオベーションの中、頭を下げた姿を思い出しました。ひときわ大きな拍手の中、ちょっと誇らしげに、ちゃめっ気たっぷりなおじぎは、亀治郎さんらしかったです。楽しませていただきました。ありがとうございました。
11月2日 「独歩」の書
週末の夜、NHK衛星ハイビジョンで「男前列伝」という番組に亀治郎さんが出演されていました。「独楽(独りを楽しむ)」という言葉を座右にした熊谷守一(くまがいもりかず)という画家(1880-1977)に、「独歩の精神」で生きている亀治郎さんが対峙する番組でした。
亀治郎さんの独歩とは「好きなことをやる。独りでもやる」ということだと以前に本で知りました。三代目猿之助さんのスーパー歌舞伎をそのまま継ぐことが、精神を継ぐことではないと思って独歩の道を行くことを選んだと理解しています。
私は、亀治郎さんのそういう精神にとても惹かれます。ある本の中で亀治郎さんが、メンター的存在の哲学者・梅原猛氏が書かれた「独歩」という書を部屋に飾っているとおっしゃっていました。番組を見ていると、しゃべっている亀治郎さんの後ろにその書が置いてありました。力強い「独歩」でした。
対する熊谷氏は孤高の画家と言われ、亡くなるまでの30年間は自宅の敷地内を出ず、大自然と一体となり、15坪の庭を毎日いろんな角度から眺めて独りを楽しむ達人だったそうです。
亀治郎さんは、その庭で同じように寝そべったり座ったり。結果。。。とてもじゃないけど、一週間もじっと庭を眺めて暮らせない、自分はまだまだその域ではない、と。
独りを楽しめることは、人としてとても強いと思う。そして、独り歩くずっと先に「楽しい」という境地があるのではないか。
きっと、好きなことをやる、独りでもやる、という道は厳しく険しいものなのだと思います。亀治郎さんは、いつか「楽しむ」という境地に着くのでしょうか。
「独歩」は私に勇気を与えてくれた言葉です。他人の人生と比べない。私も私の道を歩いていきたい、そう思わせてくれたから。改めて考えることができた番組でした。
12月30日 歌舞伎のおかげ
ゆっくり一年を振り返っています。好きな歌舞伎をたくさん観劇させていただき、そのおかげで生活も仕事も頑張ることができました。歌舞伎の作り手の方々には感謝の気持ちで一杯です。夢をありがとうございます。
今年は国立劇場~新橋演舞場のハシゴから始まり、海老蔵さんの「伊達の十役」にワクワク。歌舞伎座で勘三郎さんの下駄タップにエキサイティング!3月の「染模様~」では、染五郎さんと愛之助さんにドキドキ。階段落ちは凄かった!
そして、なんと言っても4月の歌舞伎座さよなら公演大千穐楽。あのお客さんの雰囲気と会場の「気」は忘れません。コクーン歌舞伎の心からのラップや、初体験の赤坂大歌舞伎。
チャリティ公演「伝統芸能の今」、そして「亀治郎の会」で亀治郎さんに興奮したこと。三津五郎さんのカールおじさんのような悪太に笑った「馬盗人」新橋演舞場では重鎮たちの歌舞伎に魅了されました。演舞場自体が少しずつ変わってくる様子もファンとして嬉しかったです。
12月の忠臣蔵に大満足し、菊之助さんの玉手御前はサイコーでした。猿之助さんの衣装展や、歌舞伎座展も思い出です。福助さんのブログが始まり更新頻度にびっくりして嬉しかったこと。少しづつ好みもわかってきて、自分自身の進化も楽しかったです!ワクワクすることが、ここには書ききれないくらいたくさんありました。
歌舞伎を初めて観た時の衝撃。役者さんの動きやせりふ・音・道具・衣装・照明・空間にあるもの全部に生命を感じたこと。それは、役者さんだけでなく、空間にあるもの全てがストーリーや登場人物に感動し、心を添わせているから伝わるもの。
自分自身もそうなりたい、そんな司会をしたいと想う気持ちは今も変わりません。それには「感じる心」になることが必要だと信じています。感動することができる素直な心。
歌舞伎のおかげで、いろいろな「気づき」がありました。ありがとうございます。来年もたくさん楽しませていただき、一緒に進化できるよう頑張りたいです。歌舞伎に感謝。
aya