「四の切」熱さと冷静さ
今日は初日以来の歌舞伎座でした。
初めての第二部を観て、続けて第三部を観劇。
偶然にも友人三人と一緒だとわかり、久しぶりの再会に歓喜でした。
まずは「四の切」のお話。
初日の私はドキドキしていました。
それについてはnoteでさんざん語ってきました。今日は冷静に観ることができて発見もありました。猿之助さんも初日はドキドキしていたのでしょうか。お芝居がとても落ち着いていました。
動きにキレが増して独特なリズムができていました。ケレンに体が馴染んできたのか、慎重ではあるけれど躊躇はなくて、以前のような猿之助さんが戻ってきたように思います。本当にすごいな、この方。
本物の忠信の出のかっこよさが増し増し(笑)あの七三の様子は極めちゃった感があります。これ以上の形の良さってあるのだろうか?みたいな。究極の型の美。これは惚れ直しちゃいました。
忠信の時は力みはなく、でもスキがない。集中している様子が、義経とのやり取りの緊張感と相まって見応え抜群。
偽物の忠信、狐忠信の出がスムーズで、これぞ猿之助さん!とテンション上がりました。欄干渡りや欄間抜け、百周りなどのケレンにキレが増し、スピードもアップしていて驚きました。
そして、何だろう。。この可愛さ(笑)猿之助さんの狐忠信を初めて観た友人は「四代目がこんなに可愛いのは初めてみた」と言ってました。あの口角をニッと上げた微笑みは昔から可愛くて好きだけど、やっぱり目の表情とか、雰囲気が変わったのだと私は思います。
至近距離から見ていたので、こんな表情したことあった?とか、こんな笑顔はあった?とか。一瞬一瞬が愛おしくて目が離せませんでした。
セリフや義太夫の言葉がこんなにも耳にすんなり入ってくるのは初めてです。猿之助さんと葵太夫、淳一郎さん薫さんの三味線の阿吽の呼吸も心地かったです。三位一体でした。
初演時から思うと、芝居は変わらないのに、いろいろ削ぎ落されてシンプルで完結になったような印象です。細かい手順はたくさんあるだろうに、全くそれを感じさせない巧さ。狐っぽさも私にとっては良い塩梅。階段を下りる時や欄干から飛んで着地する時に全く足音がしないのがいつもながらすごいです。
近くで見て思いました。お役として演じる熱さと、俯瞰で見ている冷静さ。猿之助さんのたまらなく好きなところ。演じていながら、あらゆることを察知している空気感があります。
今日は宙乗りを見送りました。
花道七三からグングン上っていくのを見て、また泣けた(笑)
何だか本人がその瞬間をかみしめているように見えたのです。
猿之助さんは、ここに帰ってきたかったのだなぁ。。
そんな妄想が止まりませんでした。
帰り道は、猿之助さんの狐忠信を初めて観た友人たちと興奮気味に感想を話しながら歩きました。そうでしょ、そうでしょ(笑)澤瀉屋の「四の切」はひと味違います。
今も楽しい余韻に浸っています。
aya