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<2011年アメブロ編序幕17>

猿之助さんのことを中心に書いてきた過去blogをピックアップして再編集しています。

2011年は翌年に四代目猿之助襲名へのカウントダウンが始まりました。亀治郎ラストのお役は何になるのだろうとドキドキしていた時期でもあります。

また、2008年以来の平成中村座で、名物「桜席」を初体験したのもこの時期でした。その体験記、亀治郎さんの現代劇、そして一年の結びへ。当時の日記です。


11月16日 平成中村座☆桜席初体験!

こんばんは。
平成中村座「十一月大歌舞伎」昼の部です!町にはいたるところに中村座のポスター。何だかワクワクしちゃいます。

小屋周辺は木々で覆われ、見上げると「楽しんでって~」と小屋が言ってくれているようでした。胸が熱くなりました。

懐かしいような、やっと会えたというか。。誘導するスタッフの方が楽しくてわかりやすくて全てがスムーズ。お手洗いも数が増えていて、列ができてもすぐに順番がきます!小屋が進化してます!

桜席サイコーです。裏方さんにも興味津々な私にとっては贅沢なお席。定式幕の内側、舞台上の2階にあります。

開演前に役者さんがスタンバイする様子は新鮮です!凄いのが、幕開きの柝の音でスッと全員が役に変わる瞬間!感動でした。それに役者さんと一緒に出番を待っているかのような勘違いに陥ります。幕があくと何故か私まで緊張。ここで客席全体が初めて見えます。

柝の音も、いつもは遠くに聞こえるのに、目の前でたたいているのでダイレクトに体に響いてきます。浄瑠璃や下座音楽、すべての音に包まれている感覚がずっと続き、役者さんはこのように体感しているのだとわかりました。

舞台転換も、幕の内側なので見ることができました。静かに流れるように無駄なく装置を替える様子は、厳かでもあり神聖な感じがしました。幕間はお弁当を食べながら、ずっとその様子を見てました。

幕切れになり、幕の内側に残る橋之助さん(現 芝翫)と勘太郎さん(現 勘九郎)が上手下手の桜席のお客に挨拶してくれました。嬉しい。

あ、あと孝太郎さんの地声が凄く低くてびっくりしたり、大道具さんに女性がいて格好良かったり。

以外な発見は、カツラが素晴らしく綺麗なこと。艶があり形も魅力的で、個性がでていて。上から見ていたのでよく見えました。

また、黒衣さん方の活躍ぶりが間近に見えます。役者さんとの連携プレーに感動でした。

何より、勘三郎さんを近くで感じることができて嬉しかったです。心の中で’待ってましたッ’大向こうをかけました。

そして、私の位置からスカイツリーは見えませんでしたが、舞台の後ろが開き、勘三郎さんがスカイツリーを眺める姿は歌舞伎と未来が繋がる象徴的なシーンだったと思う。

でも、この日一番は仁左衛門さんの迫真の演技でした!!血だらけの知盛の目を見ただけで泣いてました。そして、碇とともに海へ身を投げるシーンは号泣。

私のお席は知盛と同じ舞台上、同じ高さ。こんな間近で拝見できるなんてもう一生ない。仁左衛門さんの波動で息苦しいくらいです。目を開けたままダイブしてました。凄いです。

碇知盛を拝見してこんなに涙したのは初めてです。仁左衛門さんは神のようでした。未だ興奮が続いています。楽しい時間に感謝です。


12月23日 シアタートラム「その妹」

こんばんは。お仕事もあと少しです。

さて、先日拝見しましたお芝居「その妹」

武者小路実篤氏の作品です。亀治郎さん主演の現代劇。私の観劇納めとなりました。台詞が多く、どの役者さんも大変だな~と思いました。

戦争で盲目になってしまった兄を妹が献身的に支えます。ラストは妹が兄の一生を守るため、

望まない結婚をして兄のもとを去ります。兄を亀治郎さん。目が見えない人の特徴を細かく演技の中に入れていました。本当に器用な方です。歩き方や気配の感じ方はとても細かい!

暗い内容のお芝居ですが、亀治郎さんの間が良くてその面白さに時々笑いを誘っていました。絵描きだった自分が盲目になり人生のどん底へ。自身で生活ができないことをダラダラ言い訳し、時には当たり散らします。本当に情けない男です。妹がいなければ何もできない。

亀治郎さんは、プライドが高く力が抜けた投げやりな感じで、観るほど嫌な人でした。大正時代の少し高貴な位の人々の話言葉は、私にとって奇妙で慣れるまで時間がかかりました。でも、上から目線のすました話し方、時には軍隊のような激しい口調、亀治郎さんは自在で神がかっているような瞬間もありました。

そして、妹が結婚、つまり身売りをする決心を兄に伝えるラストシーンでは、あれだけ情けなくて嫌な人と思っていたのに私の心に愛情が湧いていました。

母性なのかもしれません。妹もこんな感情だったのでしょうか。兄は自分にはどうすることもできないから良いとも悪いとも言えないと妹に言います。そして、力が欲しいと言って泣きます。

内心は身を売って自分を助けてほしいし、でも側にいて世話を焼いてほしい。亀治郎さんは本当に泣いていました。

その叫びは現代の人の心に響く言葉。でも私は人間は生きる力を与えてもらっていると信じています。兄が言う生きる力とは目に見えるもののことなのか。妹を守る力のことなのか。

終わってわかったのは、人間は生きるために生まれてきたのだということ。登場人物一人一人を観ていてもそう感じました。いろいろな境遇に生まれどんな人生であっても、命ある限り人は生きていかなければならない。

強くも弱くもすべてを受け入れ前進していかなければいけないのです。

情けない兄が愛おしく思えたのは、苦しんでいる姿に’生命’感じたからかな。。

兄の友人役の段田安則さんがとてもよかったです。兄妹の面倒をみるのですが、妻がありながら妹に好意を抱きます。凄く人間臭くリアリティありました。亀治郎さんと二人のシーンは見応えあります。

蒼井優さんは不思議な存在感のある女優さんです。凛として愛嬌があり魅力的でした。

2時間以上のお話があっという間でした。パンフレットの亀治郎さんのコメントに、襲名後はしばらく歌舞伎に専念するとありました。’亀治郎’としてラストの現代劇になるのですね、きっと。

現代の舞台役者さんたちの中に入っても引けを取らない存在感は凄いです。楽しませていただきました。ありがとうございました。


12月31日 歌舞伎のおかげ

大晦日は毎年お墓参りです。
手を合わせると今年が終わる実感が湧いてきます。今年もたくさん歌舞伎を観ることができました。そして元気をいただきました。ありがとうございます。

1月の玉三郎さんの阿古屋は衝撃的。2月の染五郎さんと亀治郎さんのテアトルは息がピッタリ。「女殺油地獄」は好きな演目と再確認。

3月の震災で’歌舞伎を観る’ことを真剣に考えました。いま歌舞伎に救われたと心から想います。5月の明治座では亀治郎さんの’四の切’で大興奮!

7月は海老蔵さんの復活を目に焼き付けました。8月の「亀治郎の会」は亀治郎としてのラストの会になってしまいました。葛の葉の曲書きはエンターティナー!

10月の愛之助さんの義賢で魅せられたこと忘れられません。’一心太助’の獅童さんと亀治郎さんの夫婦が面白かったです。小栗判官での亀治郎さんのキリッとした姿は印象的。

11月の平成中村座桜席で拝見した仁左衛門さんの知盛は役者さんの偉大さが改めてわかりました。演舞場では菊之助さんの花子にしびれました。12月は染五郎さんが古典を復活させたことに感動です。中村座の試演会で皆さん頑張っている姿に元気をいただきました。

他にもここには書ききれないほど楽しみました。

私は幸せ者です。

歌舞伎にはすべてに生命が宿り、観ている私にそれが伝わってきます。役者さんはもちろん、音、装置、照明、衣装。。。一瞬に集中して気持ちを込める。

大向こうや拍手、笑う声までお芝居の一部なのです。そしてその瞬間のすべての出会いは一生ありません。マイクを使用せず、その波動は直接届きます。その感動が毎回たまりません。

私も’生命’を感じさせることができる人間になりたいのです。歌舞伎はそのことを教えてくれました。歌舞伎のおかげで大変な一年を乗り越えることができました。本当にありがとうございます。

来年は尊敬する亀治郎さんの’猿之助’襲名の年。

’襲命’という言葉。名前だけではなく先代の命を継ぐという考えもあると聞きました。

命に新たな命を重ね、大きな風をたくさん起こしてくれることを期待します。6月が楽しみです。

私も歌舞伎に負けず、カブイていきたいと思いますッ!来年1月は、浅草歌舞伎に始まり、新橋演舞場、平成中村座、国立劇場を楽しみます!

来年もよろしくお願いいたします。


aya


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