2012年 スーパー歌舞伎ヤマトタケル 2
今月4日から新橋演舞場で上演される「スーパー歌舞伎ヤマトタケル」を応援する気持ちをこめて、2012年四代目猿之助襲名時のヤマトタケルを観た感想blogをポストしています。
物語に少し触れているのでご注意ください。
6月15日 「ヤマトタケル」ストーリー編2
新橋演舞場は連日大入りのようです。時が経つと余計にもう一度観たくなってきました。
「ヤマトタケル」の世界を細部までもっと感じたいです。驚いたことの一つに、適役のキャラクターがとても愛すべき者だったということがあります。
最初の熊襲征伐では、首領タケル兄弟が面白い!兄タケルは彌十郎さん、弟タケルは猿弥さん。隈取りではじめは誰なのかわかりませんでした。お声で彌十郎さんとわかりびっくり。
お二人とも豪快!舞台上ひときわ大きく見えました。お衣装の大きさも尋常ではありません。後ろを向くとそれぞれ大きなタコとカニ!背中に張り付いているようなお衣装です。
正面はお相撲さんの化粧まわしのよう。鯉と龍だったかな。。全部で何㎏あるのでしょう。。その姿でお二人が動く動く(笑)
もうめちゃめちゃ格好良いのです。演技派のお二人が魅せてくださいますっ!それに、猿之助さん対猿弥さんの立ち廻りもサイコーです。
あ~こういうシーンが拝見できるなんて夢のよう。兄弟からは自国やその人々を愛する想いを。。お顔は恐いけどけっして憎めない優しい空気を感じました。
兄弟は小碓命(猿之助さん)に殺されてしまいます。弟タケルは死ぬ前に小碓命にヤマトタケルの名を与えます←この場面の猿弥さん素敵です。
次の蝦夷征伐でも、ヤイラム役で猿弥さんがまたまた登場です。やはりヤマトタケルに殺されてしまいます。
米を作り、鉄作りの技術などが発達し生活能力はどんどん高くなります。良い武器を持っているタケルに、持っていない者たちは勝てるはずもないのです。
ヤイラムの台詞が良いのです!
「人の心の中にこそ宝がある」
それまでタケルが敵を殺して勝つほど心踊っていた私も、この台詞でハッとさせられました。
そして、伊吹山の山神退治では彌十郎さんが山神です。山神もハマッていました。姥神の門之助さんも隈取りで最初誰だかわかりませんでした。
お二人とも凄いパワー!まさに神でした。
猿之助さん対彌十郎さんの立ち廻りも初めて拝見!彌十郎さんの長刀さばきが格好良いです。
巨大な白いイノシシが登場します。山神のもう一つの姿です。イノシシが本当に生きているようで凄い。彌十郎さんとの入れ替わりのタイミングも絶妙で鳥肌ものでした。
ラストのダイブは’知盛’もびっくりの大ジャンプ!壮絶な最期に感動でした。
適役=悪役という先入観がありました。でもタケルに侵略される側なのですよね。みんな必死に自分の国を守ろうとする気持ちに心打たれました。
実はタケルは慢心し、刀を持たず山神退治に臨みました。そのため負傷していまします。そしてそれが原因で大和の国に帰る前に命絶えてしまうのです。
山神の台詞
「さすがのヤマトタケルも傲慢という人間の病気にかかったのか」
これは胸が痛かったです。自身にも当てはめて考えてしまう。。。タケルが死に際、何度も言う「帰りたい」は耳について離れません。
故郷を思う心は日本の心。家族を想いながら死ぬ姿は悲しかったです。でもだからこそ、魂が白鳥になった姿に安堵感が湧いてきました。
天翔る心、それが私だ。
白鳥となってもなお天翔ていく姿に幸福を感じました。そして猿之助さんの宙乗りはものすごいオーラ!優雅で力強く、どこまでも自由でした。ロマンティックなのにとてもリアル。
心に響くストーリーに前に進む勇気をいただきました。私も何かを追い求め天翔る心でありたい。。と強く想います。
6月16日 「ヤマトタケル」スピード編
梅雨らしい空になりました。
新猿之助さん、おもだか屋一門の皆様が上演中の「ヤマトタケル」の脚本は、三代目猿之助さんのために梅原猛氏が書いたもの。
猿翁さんがおっしゃるには、原作どおりに上演すると9時間かかる。それをおよそ4時間に短縮して上演なさってきたそうです。
そして、今回四代目猿之助さんはさらにスピードアップ!
16時に開宴して20時30分まで。30分と20分の二回の幕間があるので内容は3時間40分です。てっきり21時すぎまであるのでは?と思っていたので拍子抜けというか感謝というか。
猿之助さんは「時間にこだわる」という発言どおりにしてくださいました。
お芝居自体のテンポが気持ち良いくらいスピーディでした。すべてが0.5秒早い感じ。だから、逆に通常の歌舞伎のテンポ感の妙もわかった気がします。
スーパー歌舞伎のテンポ感が気持ち良かったのは、早い中にも緩急がついていて言葉や動きの’間’や’ためる’ところがより際立っていたからだと思いました。
皆さん、台詞は流れるようにスムーズ。特に猿之助さんは爽やかで若々しさに溢れていました。現代劇初演時を思い出しました。
立ち廻りのスピードもハンパではなかったですっ!私はどの歌舞伎でも立廻りシーンが大好物です。猿之助さんのこんなシーンがずっと観てみたかったです。夢が叶いました。
熊襲の新宮では、タケルが女装をして侵入し舞を披露。久しぶりの女形の踊りは艶があり優雅で美しかったです。
そこから一転、早替りで男装となりダイナミックな立ち廻り!殺陣も見得も早くて美しい!二刀流も初めて拝見しました。
附けの音がまたサイコーにリズミカルでテンポありワクワクします。群衆や大道具、小道具、照明、音がすべて一体となり、まるで私もそこにいるかのようにハラハラしました。
早替りもさすがお家芸です、早すぎます!
一幕で’これでもかっ’というくらい堪能できます。10秒かかっていないくらい、たぶん6~7秒で登場してしまう。吹き替えの方との息もぴったりで一門のパワーを感じます。
ラストはそれまでのテンポ感から一新、白鳥になったシーンは優雅でたっぷり。夢の世界でした。
猿之助さんが初役なのに’水を得た魚’のようでした。右近さん(現 右團次さん)、猿弥さんをはじめ一門の皆様の底力と想い。全員の体にスーパー歌舞伎が染みついているのですね。
猿翁さんが46才の時に初演された「ヤマトタケル」猿之助さんはそれより10才くらい若くして初役です。
このスピード感は若いからこそのタケルだと思う。年齢や経験を重ねたタケルも拝見したいですが、今回の体のキレと初々しさは特別なのかもしれないですね。
でも猿之助さんのことですから、ますますスピードアップしていくかもしれません。
aya