鬼揃紅葉狩の進化
連休は仕事を頑張り、現在は三日間連続で歌舞伎座第一部を観られるスケジュールです。一日目は’グリル梵’のヘレカツ&エビカツのミックスを幕間に黙食しました。定式幕を見ながら食べられるの最高です。
さて、猿之助さんの「鬼揃紅葉狩」は先週よりかなり進化していました。休演日はドラマの撮影がありリフレッシュできたからか、キレキレを通り超して、特に後半はキレ気味なのか!?と思ったくらい激しかったです。いつも思うのですが、まだまだ公演が続くのにそこまでやる?というくらい全力を感じます。これは疫病禍になって顕著に感じることです。明日があるとは限らないということが変化に繋がったのかなぁと思います。
そういう時は見ていて泣けてくる。舞台は命がけとわかっているけど、猿之助さんは瞬間瞬間を攻めている。その姿が美しいのです。
昨晩のインスタライブを見ることができませんでした。友人から聞いたところによると、今月の歌舞伎座は特に観に来てほしいという感じだったとか。翌日の今日の舞台は、まさにそれを体現していたように思います。猿之助さんの心の叫びが踊りや立廻りとなって表現されていると。
心技一体。そんな言葉が浮かびました。自分には歌舞伎の道しかない。。という覚悟が根底に。あまり言葉にする方ではありませんので妄想ですが、歌舞伎の力を誰よりも信じている方だと思っています。その想いが踊りになり伝わるのです。
前半の’更科の前’は、艶やかで色香が増していました。幸四郎さんの平維茂を見る目が妖艶。やっぱり恋が始まっちゃう(笑)それを受けて幸四郎さんの色気もまた匂い立つよう。こんなお二人は本当に久しぶりです。嬉しい。
響き合っているのですよね。猿之助さんが変われば幸四郎さんも変わる。その逆も然り。観るたびに印象が変わるのが面白い。お酒を酌み交わし、維茂が眠くなっていくと、だんだんと更科の前の本性、鬼が顔を出してくる。
私の血が体中を駆け巡ったのは、更科の前が引っ込む直前の群舞。ここは澤瀉屋型の見せ場の一つなのですが、姫姿で鬼の本性丸出しでスピーディなテンポの群舞になります。赤姫の恰好で猛スピードでクルクル回る役者さんを見たことあります?(笑)澤瀉屋だけだと思う。
迫力が亀治郎時代を遥か超えてきたと改めて感動でした。そして、侍女役の若手たちが、それに呼応しているかのようで激しい踊りになっていました。呼吸が合ってきて踊りが揃ってきました。
この場面のフォーメーションは、上手にいる猿之助さんを先頭に、後ろに三人づつ縦に二列に並びます。そして、さらに上手で眠っている維茂のほうに向かって、矢印のように右(上手)に進むような動き。全員でほぼ同じ振りで踊ります。太鼓の激しい連打に乗って最高なんです!
この群舞の初めに「お~りゃ」と男声を姫姿で出すのですが、これがまた先週とエライ違ってきた。ドスが効いてきちゃった(笑)私の近くのおじ様おば様方が大ウケしてました。ここ、本当に皆さんに観てほしい!何度見てもテンション上がる場面です。
そうそう、侍女の種之助さんと猿之助さんが踊る場面がより素敵になってびっくり。二人の「浮世風呂」もよかった。今の種之助さんの’なめくじ’が観たいなと思いました。
鬼女になってからも先週と全く違う印象です。踊り。。というかお役が体に入ったのだな、という感覚が私にもわかるような。踊りが理屈ではなくなっているのです。長袴を手を使わず動きやすく捌くのですが、これが無駄がなく美しい、そして速い!足にクルクル巻き付けて回りやすくしたりするのが神技です。
鬼女になった侍女たちの動きも激しくなり、毛振りはまだまだ余力ある感じですごいです。動きに一体感が出て、キュッと集まる場面が可愛いです。
侍女たちがいる時は猿之助さんは激しい踊りはあまりないのですが、幸四郎さんと二人になると俄然、激しくなります。太鼓の連打で強さを、笛の音で弱っていく様子を。緩急が巧み。
舞台中央前面の際で海老反りをします。その前後が最高にエキサイティングです。倒れちゃうのではないかと思うほどスピードある暴れ方で海老反りの体制に入るところは、すごくて泣けてくる。海老反った後もまた暴れる。維茂にこれでもかと挑む姿勢が猿之助さん自身に重なることもあります。
踏ん張っているような声というか、息が客席まで聞こえます。まだまだ公演期間はあるのに、この全力感。これが猿之助さんなのだと感動です。そして、その’気’は私の生きる力になるのです。明日も頑張ろうと思える。幕が引かれる時、有難いなと思う。
観て楽しいので、歌舞伎を観たことがない友人に勧めています。残念ながらお安い席があるので観に来てくれています。初めて観る毛振りに興奮したとか、隈取とか、何よりTVでしか知らない猿之助さんの赤姫姿の衝撃(笑)感想が面白いです。
私は今月はまだまだ楽しませていただきます。健康に感謝して楽しみたいです。
aya