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チームワーク@新版伊達の十役

今年の歌舞伎座公演はあと6回です。

新版とはいえ、いつか猿之助さんで観てみたいと思っていた伊達の十役を観ることが叶いました。

歌舞伎を観始めた頃、私の祖母くらいの年齢の三代目猿之助ファンの方と知り合いになりました。その方に、聞いてほしい話がある、とお食事に誘われました。ご婦人が目をキラキラさせてお話してくださったのが、当時歌舞伎座の7月恒例だった「猿之助奮闘公演」のカーテンコールの話。

一世一代で「伊達の十役」を演じきった千穐楽。嵐のようなスタンディングオベーションだったそう。あまりのすさまじさに劇場が揺れているようだったとか。舞台中央に三代目が一人。ですがよく見ると舞台袖にスタッフ役者がギューギューな感じで集まり、みんなが拍手をしていたそう。

ご婦人はこの光景に感動し、仲間や裏方さんに慕われる三代目の人柄を表す光景に涙したそう。そして「思い出は美化されるから、オーバーな話になっちゃってるかもしれないけど(笑)立ち会えたことは私の宝物」と。

幸せのおすそ分けをいただき、いつか私も四代目で味わいたいと思っていました。歌舞伎座で。。というのはまだですが、猿之助さんの襲名公演千穐楽のカーテンコールは舞台までお客が押し寄せてしまうほどすごかったですし、ワンピース歌舞伎の大千穐楽カーテンコールの一人一人登場するバージョンは本当に楽しく盛り上がりました。

四代目猿之助さんも仲間やスタッフを大事にしている様子はいろいろな場面で感じてきました。今月のようなお家芸を観ると、どのお家もそうかとは思いますが、座頭を中心に表裏の全員で団結しているのを感じます。

早替りがあれだけ速いのはチームワークゆえ。猿之助さんだけではなく、裏に引っ込んだ瞬間にF1のピットのように数人で同時に着替えを完了させます。早替りがお家の得意技ですから、培ってきた技術と呼吸は圧巻かと。

先日の「歌舞伎ましょう公開会議」でも壱太郎さんが猿之助さんの早替り動画を観て’勉強になる’と言っていましたね。それくらいすごい。

また、猿之助さんの吹き替えの役者さんが登場します。猿之助さんが裏で着替えてきる間、舞台に上がり、顔をほぼ見せずに演技をして間を持たせます。

今回、この吹き替えの、特に与右衛門の方がお上手で目が離せません。なぜなら猿之助さんと入れ替わるタイミングが速かったりすると「ここでコンマ1秒違ってくる」と私的にテンションが上がってきます(笑)ただ着替えが速いだけでなく、入れ替わりもスムーズだと、これだけ回数があると時短に関わってくるからです。8月の巳之助さんの早替りはここが違いました。

そして、日数が経ち、全体が慣れてくるとテンポアップしてきます。より時間が縮まってきます。でも、じっくり見せる芝居の場面は、逆にたっぷりになってくるので上演時間が縮まることは大歌舞伎ではほぼありません。

先週水曜日に拝見した時は、猿之助さんの立廻りや踊りのスピードがかなりアップしていたように思います。おそらく相手の方は大変かと(笑)

とはいえ、高速で芝居をしているわけではありません。歌舞伎だからゆっくり、というわけではないということ。猿之助さんが時折おっしゃる「古典だからゆっくりとは限らない」これは目から鱗でした。昔の音声や映像を観るとテンポが今より速いそうです。歌舞伎は’今’を生きる演劇ですから、現代人である自分たちの今の感覚も大事なのかと思います。

そうそう、前回の観劇で書き忘れていました。もう一人のねずみ役の方、尾上まつ虫さん。松也さんの一門の方です。ねずみの扮装をして、アクロバティックな立廻りや、愛嬌のある仕草で魅せてくださいます。

この方が初日あたりと全く違って男前のねずみになってた(笑)動きがキレキレ。初日は玉太郎くん?と思ったけど違いました。以前、猿之助さんが蝦蟇の着ぐるみで登場していたことがあるので。。(笑)

このねずみは仁木弾正が化けている姿です。弾正ねずみ、手強し。どうぞ注目してください。

猿之助歌舞伎は澤瀉屋一門以外の方とのチームワークも見どころです。私はあと1回。今年の歌舞伎納めは伊達十になりそうです。

aya

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