演奏家のための個別メンタルトレーニングつきレッスンの実際
こんにちは。京都・出町でピアノサロンのオーナーをしております坂田です。
既にこちらの note に有料記事を投稿しておりますが、ここで、自己紹介も兼ねて、私どものサロンで行っている演奏家向けのメンタルトレーニングの実際についてお話してみようと思います。
なお、有料記事に投稿している内容は、そのメンタルトレーニングにおける知見をコンパクトにまとめたものです。できるだけ多くの方に、トレーニングのエッセンスを端的にお届けしたいと思っておりますので、ご興味がおありの方は、ぜひ合わせてお読みいただければ幸いです。
以下は、私どものブログでもご紹介している内容ですが、こちらに再掲したいと思います。
私どものところに来られる方は、「緊張してしまって上手く弾けない」ことに長年悩んでいらっしゃるせいか、既にいろいろなメンタルトレーニングの書籍類をお読みになっている方も結構多いですね。もちろん、これらの書籍類には、沢山のヒントが記載されていますし、ぜひ上手に活用していただきたいと思います。重要なのは、「読むだけで分かったつもり」になるのではなく、実際に行動してみて、自分にとって本当に有効な方法なのか、効果があったのか、効果がなかったとしたら何が問題だったのか、どこをどう修正するのか、そのあたりご自身でPDCAサイクルに落とし込むことですね。頭で理解したつもりになっていることと、本当に実践できることとの間には、相当程度の隔たりがあります。
実際問題、相談にいらっしゃる生徒さんは、皆さまとても真面目にピアノに向き合っていらっしゃる方ばかりで、本をいろいろ読んでみて、いろいろ試してみて、ということをされている方、かなり多いのですね。ところが、こういうお声があったりするのです。
「人前で弾く練習を増やしてみようということで、弾き合い会とかにも沢山行ったりしているのです。それなりに人前で弾くのに慣れた気もするのですが、やっぱりここぞというところでは、緊張してしまって、どうしようもないのです。本読んでいろいろ対策したつもりなんですが…」
なぜでしょうね。実は、ここらあたりに問題があると私は思っています。まさに、この「なぜ」を一緒に探して解決するお手伝いをする、これが私の役割ではないかと思っています。
では、実際にどのようなレッスンを行うのか。今日は、少しだけレッスンの実際について、お話してみたいと思います。
まず私どものところでは、いろいろと質問をお出してお答えいただいたり、少しワークをしていただいたり、ということで、とにかく通常のピアノのレッスン以上に生徒さんに沢山お話いただくようにしています。それに加えて、私の前で実際に弾いていただいて、その演奏について双方でコメントしていく、ということも行うようにしています。
というのも、実際に生徒さんに弾いていただくことによって、本当にいろいろなことが見えてきますし、そこで浮き彫りになった課題に注力することが何よりも重要、私などはそう感じてしまいます。ほら、「演奏を聴くと人柄が見えるような気がする」という話、よくあるではないですか。それと同じで、演奏を拝聴すると、その方ならではの問題点が見えてくることが結構多かったりするのですね。なので、ただ一方通行の座学よりは、実技つきの個別レッスンの方がより実践的ではないか、と思っています。
弾いていただいた後、通常のピアノのレッスンであれば、即先生からいろいろなコメントがあると思いますが、私のレッスンでは、私からいくつか質問をお出ししたり、ご自身の演奏を自己評価していただいたりしています。そして、ここでのコミュニケーションに、できるだけ沢山の時間をかけるようにしています。
特徴的なのは、個人差もありますし、一様ではないのですが、ご自身の演奏に関する「音楽的な自己評価」をお聞きすると、実は、あまりご自身の演奏について具体的に覚えていらっしゃらないことが結構多い、ということでしょうか。
あるいは、演奏中にどんなことが頭によぎったか、ということも、詳しくその場でお話いただいたりします。そうすることで、演奏中の思考パターンが結構見えてきたりします。
少し驚くべきことですが、それこそショパンのバラードとか、ラヴェルのソナチネとか、そういう曲をバリバリ弾かれるような方でも、「緊張のあまり、音が合っているかどうか、それだけしか考えられない」とか、「違う音を弾いた後、ちゃんと戻れるだろうか、それでいっぱいいっぱいになる」とおっしゃるケース、結構ありますね。
これこそ、よくピアノの先生が仰る「自分の音が聴けていない」という事例だったりするわけです。残念ながら、音楽表現がお留守になってしまっているようなんですね。
でも、これを「自分の音が聴けていませんね」という一言で済ませるのはちょっと安直すぎる、と私は思っています。
ここまで話を進めてきたら、今度は具体的に音楽的表現の話について、しっかりとコミュニケーションをとるようにしていきます。楽譜にどういう指示があったか、作曲家の意図はどうなのか、それを具体的にどういうイメージに落とし込むのか、ということをとことん話し合うようにしています。そして、「次の音のイメージがどうか、今出した音がどういうものであったか、まさにそのわずかな時間の幅だけを感じながら進む。実は、自分の音を聴いて弾いている、とはそういうことだと思う。この状態になると、頭の中はある程度静けさを保つことができるし、いわゆるフロー状態に入りやすくなる」という説明をするのです。
このように説明していくと、生徒さんの側でも、「暗譜が飛ぶかも…と焦っていました。ただ正しい音(注・正しい高さの音名)のことしか頭にありませんでした。この音で合っているのかな、違ったかな、そればっかり考えていました。ほかのことはおろそかになっていたかも…」と納得していただけることも。
ということで、緊張対策の話もいたしますし、演奏表現の話にもしっかり入り込んでいくのが私どものスタイルです。もちろん、心理学も駆使しますが、結局、心や脳の一般原則だけではなく、実際の演奏の場面に即した対応策を見つけることこそ、より実践的な方法だと思っています。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
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