【あ~あ 残念なピアノ弾き 語源は一緒でも ― アニメ違い!】
「あ~あ 残念なピアノ弾き」シリーズ、止まりません、全く。なぜなら、あまりにもネタがありすぎますので。長年ピアノを弾いてきたこともあり、「残念なピアノ弾き」の失敗談だけは事欠きません。
今日もその中の一つをご紹介しましょう。この年になってくると、こういう恥ずかしい失敗談も、ネタに出来るようなりますね。これ、実話。もちろん、お粗末な私の経験談です。ご笑覧下さいませ。
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とある曲のレッスン中 con anima の意味を問われた私、当時何の疑いもなく「いきいきと、活気をもって」と答えてしまいました。言い訳するようですが、実際のところ、そう書いてある音楽事典の類が(今でも)存在しますので、自分ではそれで正しいと思い込んでおりました。
即座に師匠から「それ違うから!」というダメ出しが飛んできたことは言うまでもありません。
「魂をこめてという意味だから!! 快活に弾くことではない!」
そう、 animato と混同していたのです。まさに私の勉強不足が露呈した瞬間でした。
animato と con anima は、出発点は animare (動詞:「…に生命を与える」意)でしょうが、意味は全く異なります。 名詞形になった場合、 anima の意味するところは「魂」 ― まさに生命を与えられたものの核心 ― を意味するものである、ということだったのでした。いきいきとした動きのある状態を意味する animato とは似て非なるものなのです。
例えば、ブラームスのヴァイオリン・ソナタの第1番の第1楽章の第2主題には、 con anima と書かれた箇所があります。心震えるようなとても美しい旋律です。だから、まさに「魂を込めて」弾くべき箇所です。
ところが、ここ animato と混同されるケースが結構あるようで、いろいろな演奏録音等を確認していても、明らかに animato のニュアンスで弾かれていることがあるようです。でも、そんなとき「あ~残念だな~」ということになってしまうのですね。
ほかには、ラフマニノフの Trio Élégiaque の第1番にも、あの長調の美しいメロディの部分に con anima の指示がありました。あるいは、 con anima cantando ということですと、ランゲの「花の歌」の中間部とか。
いずれにしても、楽譜を確認していると、心揺さぶられるようなメロディが登場する箇所に con anima の指示は書かれていることが多いようです。
最後に、イタリア語を母国語としない日本人が陥りがちな勘違いが網羅されている良書をご紹介しましょう。
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