二日酔いの朝にはじゃかいも畑で小石を拾え
昨日は飲みすぎた。
朝起きてこんなに脳がフワフワしてるのはこれが初めてだ。
今日は10時からじゃがいも畑の手伝いに行く予定があった。朝が遅めで助かった。
自分は今とある地方の港町にいるが、そこで知り合ったじいちゃんがそれはまぁパワフルなじいちゃんで、70数歳だと言うのに自分のお店を持ちながら区長会の会長を務め、色々なイベントの長を務めている。大型トラックも運転できる。
今度は家の隣のサッカーコートくらいある荒れ地をじゃがいも畑にして、この地特産の魚と一緒にフィッシュアンドチップスを作って祭りで売るらしい。名前はもう決まっていて「ぽてぎょ」らしい。
そのじゃがいもを作っている。
実は手伝いに行くのはこれが二回目で、この前はじゃがいも植えをした。
じゃがいもはほっとけばそのまま芽が出るように、あれがもう種である。切って小さくなったやつをそのまま植えた。
つまりじゃがいも植えである。
今回は何をするのかを特に聞いてはいなかったが、また何人かで同時に作業するらしく、よかったらおいでと誘われたのでとりあえず行く約束をしておいた。
その日は久しぶりにお酒を飲んだものだったから体調を気にせず思ったよりも飲んでしまった。
まあ楽しかったし、港町の夜風に当たって大勢で散歩をしたのはとても気分がよかった。
半分くらいは何を話していたか覚えてないけど、ふらっふら軽快に音楽流しながら歩いてたのは覚えてる。
そんなもんだからお酒が弱い自分は当然翌朝に延長戦でフラフラフワフワローテンションタイム。
なんとか起きてじゃがいも畑には10分遅刻。
荒れ地の一角には既に10人くらいの人影があった。コンテナに何かを拾って入れている感じだった。
「ぉはようございまあ゛す」とガラガラの声を地面に響かせると、例のじいちゃんが「よう来たね!よろしく頼むよ!」と今日も元気ハツラツという言葉が似合う。
今日のやることは畑の小石を拾うことらしい。
前回はデカい機械でふかふかにした土で山を作ってそこにじゃがいもを植えた。その土が時間が経って固まって、石が目立つようになっていた。
前回は土がふかふかだったからそんなに気にならなかったけど、改めて見返すとめちゃめちゃ小石の多いこと。いや本当に多いこと。砂利道かと思った。
一瞬途方に暮れようとしたが、二日酔いで全く動かない頭はかえって考えるのをやめて、無心で無限の石を拾い始めた。
拾う。
拾う。
拾う。
頭ふわふわの時は自分の腕が、手が、神経伝達が自分のものでないように感じる。
それが不思議と心地よい。
思考が別次元に隔離されてるような感覚で、身体操作のプレイヤーになれる。
動いてない時は脳が体調とリンクして気分が悪いだけだが、疲れに身を任せて体を動かすだけで脳は身体から分離して、目が回った身体は酔いを覚まし、漫然と整っていく。
無限に続く行為の中に、果たしてどれだけの意味があるのか、それを思うことすらない。
無に身を任せて時が経つのを見つめることに、今日の時間は生きている。
無意識が作業をマクロ化させて、意識を介在させないようになる。
よくわからないけど、たのしい。落ち着く。
二日酔いの朝にはじゃかいも畑で小石を拾え。