HFpEF vs HFrEFの概要:N Engl J Med. 2006 Jul 20;355(3):251-9.
Trends in prevalence and outcome of heart failure with preserved ejection fraction
Theophilus E Owan, et al.
N Engl J Med. 2006 Jul 20;355(3):251-9.
要旨
この研究は、1施設における15年間の駆出率維持心不全(HFpEF)の有病率を調べたものである。その結果、HFpEFの有病率は1987年から2001年にかけて、特に紹介患者に比べて市中患者において有意に増加した。この増加にもかかわらず、HFpEFの生存率は横ばいであったが、駆出率が低下した患者の生存率は改善した。この研究は、HFpEFの増加が高血圧、心房細動、糖尿病などの疾患の有病率の増加と関連している可能性を示唆している。さらに、この研究は、HFpEFの病態生理と治療に関するさらなる研究の必要性を強調している。
この論文は、この分野の既存の研究と以下の点で関連している:
これまでの研究で示唆されていたHFpEFの有病率の増加傾向を確認するものであるが、より長期間の観察期間と一貫した方法論を提供するものである。
心不全の分類に関する現在進行中の議論に貢献し、「拡張期心不全 」よりも 「駆出率維持心不全 」という用語の使用を強化した。
この論文はまた、駆出率が低下した患者と駆出率が保たれた患者との間に生存率の改善における格差があることを強調し、HFpEFに対する有効な治療法におけるギャップを強調している。
HFpEF, HFrEFそれぞれの特徴
なぜ分けるか?=治療方針が変わってくるから
HFpEF
・特徴
Female, older age, BMI, AF, hypertension, extra cardiac comorbidities, Metabolic diseases, Mitral valve defects, Obese(海外)
・Phenotype(Cohen JB et al., The TOPCAT study. J Am Coll Cardiol Heart Fail 2020)
高齢女性で心房細動は非心臓血管死が多い(日本に多い)
若くて男性の人は肥満+DMが多く、CKDやうつが多く、突然死や心臓血管死亡が多く生存率低いが、スピロノラクトンの反応性が良い
HFrEF
・特徴
Male, vounger age. diabetes, CAD. CMD. CKD. cardiac comorbidities
・治療
Fantastic4=βblocker, ARNI, SGLT2-I, MRA
(+ Ivabradine, Vericiguat)
※Fantastic4は後ろ向き試験ではEF 50~55%ぐらいまでは有効なデータが出てきている
→EFによる基準は今後なくなり、Indivisualに判断されるようになるかもしれない
Abstract
背景
人口動態の変化,心不全の危険因子の有病率や治療法の変化により,駆出率が保たれた心不全の有病率は変化している可能性がある。駆出率が維持された心不全の有病率の変化は心不全の自然史の変化に寄与している可能性がある。我々は,単一施設における15年間の駆出率維持心不全有病率の経年的傾向を明らかにするために研究を行った。
方法
1987年から2001年にかけてミネソタ州オルムステッド郡にあるメイヨークリニック病院において、非代償性心不全で入院したすべての連続患者を調査した。患者を駆出率が保たれている場合と低下している場合に分類した。また、患者を地域患者(オルムステッド郡の住民)と紹介患者に分類した。心不全のタイプ、関連する心血管系疾患、および生存の経年的傾向を定義した。
結果
15年間で合計6076例の心不全患者が退院した。このうち駆出率に関するデータが得られたのは4596例(76%)であった。このうち53%が駆出率低下、47%が駆出率維持であった。駆出率が維持された心不全と診断された患者の割合は時間の経過とともに増加し、紹介患者よりも地域患者で有意に高かった(55%対45%)。心不全患者における高血圧、心房細動、糖尿病の有病率は時間とともに有意に増加した。生存率は駆出率が保たれている患者でわずかに良好であった(死亡の補正ハザード比、0.96;P=0.01)。生存率は駆出率が低下した患者では経時的に改善したが、駆出率が保たれた患者では改善しなかった。
結論
駆出率が維持された心不全の有病率は15年間で増加したが、この疾患による死亡率は変化しなかった。これらの傾向はこの増大しつつある公衆衛生問題の重要性を強調している。
主要関連論文
Vasan RS, Levy D. "Defining diastolic heart failure: a call for standardized diagnostic criteria." Circulation. 2000;101(17):2118-2121.
Bhatia RS, Tu JV, Lee DS, et al. "Outcome of heart failure with preserved ejection fraction in a population-based study." N Engl J Med. 2006;355(3):260-269.
Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, et al. "2013 ACCF/AHA guideline for the management of heart failure: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines." J Am Coll Cardiol. 2013;62(16)