
NIPTは「認証」施設と非「認証」施設のどちらがいいか?
NIPTを受けるのに「認証」施設と「非認証」施設のどちらがいいかを聞かれました.両者にはいくつかのちがいがあります.検査対象が13トリソミー,18トリソミー,21トリソミーの3つの疾患だけか,それともそれ以外の染色体の「数の異常」や「構造の異常」もふくむかはたしかに大きなちがいのひとつです.
しかしそれより重要なのは,きちんとした専門家(遺伝専門医や遺伝カウンセラーなど)による相談(カウンセリング)の体制が整っているかにあります.認証施設のNIPTで調べる3つのトリソミーは,染色体の病気の70%を占めます.一方,非認証のNIPTではたしかにそれ以外の病気もわかることがあります.
それ以外の病気の多くは,X, Yなどの性染色体の数の異常ですし,ほかには染色体のほんの小さな構造異常(欠失とか重複,転位など)のこともあります.しかし性染色体の数の異常というのは,たとえばターナー女性やクラインフェルター男性といったひとは,知的な面でも運動面でもまったく正常です.
たしかに生殖機能に問題があって,成人してからの妊娠出産に苦労されるかたが多いようです.だからたとえばクラインフェルター男性は子どものときは気がつかれず,結婚後不妊治療となってはじめてみつかることもあるくらいです.こういった正常な子どもを,あなたは出生前に見つけて中絶したいですか?
後者の染色体の微小な構造異常はさらにむずかしい.その子の病気として発症することもありますし,通常の変化のひとつでなんら病的な意味がない場合もあります.これは非常に専門的で解釈がむずかしいですし,実際に生まれてみないとわからないことも多々あります.そういう子をあなたは中絶しますか?
「認証」施設があえて3つのトリソミー以外を診断しないのは,このようにはっきりした理由と哲学があるのです.判断がむずかしいこともしばしばあり,そのために専門家もいます.検査をすればするほど正しい,あるいは望ましいわけではけっしてありません.そういったことを考慮のうえお決めになってください.