ワクチンが多くのこどもたちの命を救ってきた
この50年くらいの世界の医療と衛生の普及はおどろくほどのもので、とくに子どもの健康状態は劇的に改善しています。何百万人もの命を救ったのはなんといってもワクチンの普及でしょう。世界中の子ども全体のワクチン接種率は、1980年当時の20%から、2020年には86%まで増加しています。
子どもたちはワクチンによって、はしかや破傷風、ポリオなどさまざまな病気から守られてきました。最近は新型コロナのパンデミックで世界各地の子どもたちがワクチンを受けづらくなっていますが、これまでワクチンの接種のあとおしをしてきたいろいろな団体は、コロナ前の状態に戻そうと努力しています。
すでに根絶された病気もあります。天然痘です。天然痘は三千年間世界に蔓延し、何億人もの命を奪いました。ワクチンができたのは1796年だから根絶するまでにほぼ200年かかりました。1976年にWHOが基本計画をうちだし、各国がそれに協力して事業を進め、1980年にとうとう根絶宣言がなされました。
ポリオも根絶まであと少しのところにきています。日本でも1960年の大流行は有名であり、5千人以上の子どもたちが感染し、死亡からおおきな後遺症までさまざまな爪痕を残しました。1988年には125か国で35万人の感染者がでましたが、2019年には世界でわずか2か国、40人未満まで減少しています。
ワクチン接種がこれほどおおきな成果をあけているのは、WHOをはじめロータリークラブ、ビルゲイツ財団などのおかげです。近年はGAVIアライアンスという2000年にできた非営利の国際的協同体も活躍しています。豊かな国々の援助を受けながら、発展途上国に必要なワクチンが届くように活躍しているのです。
WHOやGAVIなどの主導のもと、コロナワクチンを世界に公平に届くように製造費や輸送費を分担しあった国は170か国以上です。このパンデミックで世界のひとびとがいかに強く結びあっているかがわかりました。ひとつの国あるいは自分たちだけでなく、世界で団結してコロナと戦っていく必要があるのです。