福島原発事故による妊産婦への影響はなかった

原発事故の妊産婦への影響の論文が,最近3つ続けてでました.ひとつめは福島県の妊産婦調査の報告.外部被曝線量が推定できた6875人で,1mSv未満にたいして1-2mSvでの奇形発生のオッズ比は0.81,2mSv以上で奇形はなかったとの結果でした.早産やFGRとの関係もありませんでした.

ふたつめは,全国的におこなわれた前向き出生コホートであるエコチル調査の検討結果です.福島県では12,958人,福島以外の14県では88,771人の乳幼児が健康調査の対象となりましたが,先天異常の発生がそれぞれ324人(2.50%),2,671人(3.01%)ととくに有意差を認めませんでした.

みっつめは,福島医大産婦人科が,2011-16年の県内医療機関の自然流産と人口中絶を調べたものです.原発事故後の自然流産はまったく変化ありませんでした.中絶は事故後の5月に若干の増加があったが,この時期の増加は毎年みられており事故だけが原因でないと推測されました.

これらは調査主体も方法論が異なる研究です.ひとつめは福島県の調査でpopulation-basedのもの,ふたつめは環境省のエコチルによる抽出者にたいする精密調査,みっつめは産婦人科医会の協力による福島医大産婦人科のhospital-basedのものです.これら異なる三つの研究が期せずして一致した結論でした.

2011年の原発事故直後は多くのデマが飛びかい,なによりも福島の女性たちの心をひどく傷つけました.たとえば以下のものなどはSNSに投稿された有名なツイートです. 先天疾患は一定の割合で出生するので,こう言った取り上げかたはやめてほしいと抗議したら,おまえは放射能と無関係と証明できるのかと逆に恫喝のような返事がきました.

10年以上かかりましたがようやく無関係と証明できました.あらためて謝罪してほしいと思っています.HPVワクチンデマの否定にも10年かかっています.コロナワクチンデマの否定にもそのくらいかかるかもしれませんね.デマは口先だけだから,その場でいくらでもでてきますが,科学的にきちんと否定するためにはこれだけの時間と労力がかかります.この非対称性には気が遠くなりそうです(苦笑)

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