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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(4回)第一部 こんな医療では治らない!

【第4回】

第一部
こんな医療では治らない!

国家財政を圧迫するほど医療費が膨れ上がっているのに、
効果の薄い医療が減る気配がない。
なぜ不要な医療が蔓延しているのか、
その背景には何があるのか――。
患者側と医療側の視点で見ていこう。

第一部(1)
その医療は本当に必要か?
無駄が無駄を呼ぶ5つの背景

 「医者任せではダメ。言われるがままわけもわからずただ切られる、とか。不必要な抗がん治療を受ける、とか私は反対です」「自分のかかった病をよく研究し戦略をじっくり練りベストチョイスをすべき」
 2014年春、女優の川島なお美さんが肝内胆管ガンの治療を受けたとのニュースに触れた。本人がインターネット上で日常の出来事や思いをつづっているブログ『「なおはん」のほっこり日和』の文章には、どんな医療を受けるべきか悩んだという告白がつづられていた。
 「肝内胆管ガンは診断の精度に課題がある」。肝臓の医療に関する2012年の報告でこう指摘されているように、肝内胆管ガンの診断は医師の間でも難しい問題として認識されている。その中で答えを得ようとするのは困難を伴うはずだが、川島さんのブログの言葉からは、それでも答えを得ようとする決意が見て取れる。そういった思いは、同じように病気に悩む全国の患者に共通するところだろう。
 「この検査や治療は必要ないのでは?」と、素朴な疑問を多くの患者が感じている。医療側は、この検査や治療が必要だと、正しく分かりやすく提示しなければならない。その必要性は、これまで以上に増してくるに違いない。
 そこで、まずは医療の現場を取材する中で触れた患者の経験談を振り返りながら、今の患者が直面する典型的な問題を見ていこうと思う。具体的にはガン、心臓病、精神疾患、検査、高齢者医療の実例を通して確かな医療を求める患者の姿と、要求に応えられない医師ら医療従事者の姿、さらにその奥にある日本の課題もつまびらかにするつもりだ。
 なお、プライバシー保護のため、一部の情報には変更を加えていることをあらかじめお断りしておく。

実例1
開腹か、腹腔鏡か、医師の意見が二分
情報に振り回されて右往左往

第4回おわり、つづく、第5回へ

(Photo: Adobe Stock)

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