【連載詩集】No.27 友だち。
友だちって何だろう。
その昔、子どもだった頃は、
友だちというのは、
割り当てられた環境の中で、
気の合う人という意味だった。
クラスメイトだとか、部活だとか。
学生ってそういうもんだよね。
でも、大人になると、ちょっと違う。
割り当てられた環境の中で、
生きるわけではない。
仕事を自分で選び、
住む場所も自分で選び、
人間関係も自分で選ぶ。
だから、友だちも、
自分の意志で選ぶものになる。
新卒で働いていた頃、
強烈な個性を持つ経営者に出会った。
その人は、一代で財産を築き上げ、
港区の巨大なレジデンスに住んでいて、
ヘリコプターまで持っているような人だった。
ある日、僕は職場の人間関係に悩んで、
六本木のバーでひとり、ふさぎ込んでいじけていた。
そのとき、その経営者からなぜか、
僕に直接、電話がかかってきた。
「おい、お前のいる場所はわかっとるぞ」
「えっ、なんでですか」
「今から行くから、そこで待っとけ」
その後、その人は、
僕のような青二才のために、
わざわざひとりで、
六本木のバーに来てくれた。
「おまえ、何でひとりでこんなところにおるんや?」
「人間関係などで、いろいろと、悩んでいまして」
「ちゃんと働け。暇やからそんなこと考えるんや」
たぶん、その人なりの、励ましだったのかもしれない。
しかし、その人が、僕に話してくれた内容は、
当時の僕には理解できないことばかりだった。
たとえば、友だちについての話だ。
「お前、友だちは何人おるんや?」
「東京に何人かいます。地元にも…たぶん、十数人くらいです」
「俺はな、友だちは3人しかおらんで。全員経営者の先輩や」
「えっ、でも、地元のご友人などにはお会いしないんですか」
「お前のいう友だちはな、本当の友だちやない。
地元の人間なんて、ただ生まれた場所が同じなだけやんけ」
そんな風に考えたこともなかった25歳の僕は、
40歳のその人の言うことが、全然理解できなかった。
なんとなく、実はさみしい人なのかな、とも思った。
何せ、強烈な生き様で、お金を稼ぎ続けている人だ。
周りに人が寄り付かないのも無理はないのかもしれない。
でも、34歳になる僕は、今、
あの人が話していたことが、
本当によくわかる。
あの人は、自分の人生を生きるために、
本当に大切に想える人たちとだけ、
時間を共にすることを選んでいたのだ。
そして、僕もまた、あの人の言葉を胸に、
結局、似たような人生を歩んでいる。
お互いに尊敬し合えるような、
常に高め合えるような、
そんな人たちだけが友だちだ。
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