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映画「ザ・デプス」ブルーレイレビュー「本作品の本質は深海の異形によって次々と人の死ぬ海洋ホラー映画ではなくミゲル・フェラーのやらかしによって次々と人の死ぬ人災映画なのだ。」

戦略上の機密性から海面下1万メートルに設営された
アメリカ海軍の深海秘密基地「DEEP STAR SIX」。(本作品の原題でもある。)
この秘密基地の本来の目的は深海の未知の資源の調査,
未知の深海生物の研究ではあるがアメリカ海軍が全面協力した目的は
基地の近傍にミサイル基地を併設することにある。

しかし深海での調査・研究・ミサイル基地建造の困難さは
予想を遥かに上回り加えて半年に及ぶ深海生活は
総勢11名のスタッフの精神をも蝕み始め
研究スタッフと海軍スタッフとの摩擦が絶えない。
そうした状況下でミサイル基地予定地に仕掛けられた爆雷によって
深海の「底」が陥没し海底洞窟が発見された。
海底洞窟の探査を開始した研究スタッフたち。
しかし海底洞窟内は異形の怪物の住処だったのだ。
縄張りを侵され静寂を破られた異形の怪物は激昂し
スタッフの生命をひとつまたひとつと奪ってゆくのであった…。

本作品の監督は「13日の金曜日」の生みの親ショーン・S・カニンガム。
ハッキリ言ってしまえば「エイリアン」の舞台を宇宙から深海に移して
やっつけでパニックホラー映画を作ってやろうという志の低い作品である。
だがしかし異形の怪物の造形は実に独創性に満ち一見の価値がある。
僕の記憶では本邦では本作品はVHSビデオ化され
LD化されたもののDVD化はされていない筈だ。
それが突然のBD化!
「驚き桃の木山椒の木」とはこのことだ!

本商品の特典はリーフレットのみという寂しさはあるが
日本語吹替えが搭載されていて僕的には何ら不満はない。
BDの高画質・高音質で異形の怪物と再会できる日が愉しみだ。

2014/11/4追記:本日本商品が届き一通り視聴したので所見を述べる。
まず画質についてはノイズ皆無,退色皆無,チリ皆無と3拍子揃っている。
解像度も極めて高く人間の汗によるテカり具合,異形の怪物のヌメヌメ感が
目視確認でき作品冒頭に登場する男の胸毛の数や,男が身につけている
黒いビーズのネックレスの玉の数が勘定できる。
発色については深海の青の重厚さを帯びた透明感,血の赤の鮮明さ,
潜水艇の黄色の瑞々しさがこれまた3拍子揃っており
あまりの美しさに我が眼を疑うほどだ。
なおかつ,ごく自然な発色が実現されているのだから驚きだ。

音質については日本語字幕についてはヒスノイズ皆無で
喋っている人間の息継ぎ音が聴き取れ,金属が擦れ合う音,
コンソールの操作音まで拾えている。
なお、本商品の包装ビニールに貼付されたラベルを見ると
「5.1chサラウンド」を「売り」にしているが
実際は「DTS-HD Master Audio 2.0chステレオ」である。
日本語吹替に関しては当初本商品の日本語吹替のスペックは
「ドルビーデジタル2.0chモノラル」の予定だったのだが
実際には「DTS-HD Master Audio 2.0chモノラル」にスケールアップしていて若干のヒスノイズを認めるものの
原音である英語音声に引けを取らない内容に仕上がっている。
こういう「いいこと」はもっとアピールすればいいのに…。

本商品の唯一の特典映像は予告編なのだが
映画本編がシネマ・スコープ・サイズなのに対し予告編は
16:9対応の画面一杯に画像が表示され
画質音質ともに決して良好とは言い難い上に日本語字幕がついていない。
また「リーフレット」は白黒の一枚紙を三つ折りにしただけのもので
内容は山崎圭司氏による本作品の解説となっている。

何かとライバル視されることの多い本作品と「リバイアサン」であるが
「「リバイアサン」が「ロボコップ」の「中の人」(ピーター・ウェラ―)を
起用するなら本作品はオムニ社のロボコップ計画最高責任者の「中の人」
(ミゲル・フェラー)を起用するぜ!」
の意気や良しだ!
「ロボコップ」におけるミゲル・フェラーと
本作品におけるミゲル・フェラーには共通点がある。
それはロクでもない役柄を演じる点とロクでもない目に遭う点だ。

本作品は「エイリアン」の設定を宇宙から深海に移しただけの
底の浅いホラーを指向して作られたのだが
実際に映画を観てみると本作が海洋ホラー映画ではないと気付く。

本作品の本質はホラー映画ではなく
ミゲル・フェラ―のやらかしのせいで次々と人の死ぬ人災映画なのだ。
深海の異形によって殺される人間より
ミゲル・フェラーのやらかしによって死ぬ人間の方が多いのだから
僕の見立てに絶対に間違いはないのだ。

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