ダリオ・アルジェント監督の映画「スリープレス」レビュー「この映画のトリックが『アンフェア』なら全てのミステリ小説のトリックは『アンフェアの連続』ですぅ~」
1983年にトリノで発生した
女性ばかりを狙う凄惨な連続殺人は,
事件を担当した
モレッティ警部(「エクソシスト」のマックス・フォン・シドー)の
捜査により小人症の作家の犯行とされたが,
作家は行方知れずとなって捜査は未解決のまま打ち切られた。
17年後(2000年),ある娼婦が客の私物に事件の関与を窺わせる
新聞記事の切り抜きと件の小人症の作家が執筆した
「動物農場」なる童話を発見し,何者かに列車内で惨殺される。
その殺人を皮切りに童話「動物農場」になぞらえた連続殺人が始まる。
小人症の作家が生きていて連続殺人を再開したのか,
当時の事件を知っている愉快犯の仕業なのか。
今や隠居の身のモレッティ元警部は17年前に殺人鬼に母親を眼前で殺され,
今では若者に成長したジャコモ(ステファノ・ディオニジ)とふたりで
影なき殺人鬼の謎を追い始めるのであった…。
冒頭の移動する列車内という密室内で最初の殺人が行われる一連の流れ…。
即ち黒手袋の殺人鬼,うら若き女性の悲鳴,飛び散る血潮,原色の照明,
ゴブリンサウンド…。
全てが「何処を切ってもアルジェント印」で痺れてしまう。
特典映像の「ジャッロへの回帰」でアルジェントの
2021年インタビューを観ると,本作の製作に当たって
アガサ・クリスティ,ディスクン・カー,エラリィ・クイーン等々の
ミステリ作家の名を挙げ,
ある非常に著名なミステリ小説のトリックを下敷きにしたと言う。
そのタイトルを聞いて「やっぱり」と思った事を告白する。
Amazonレビューでは
本作の「謎解きがアンフェア」と書かれているが一体何がアンフェアかッ!
アレがアンフェアだったらミステリ小説なんて一冊も読めないよキ・ミ!
ミステリ小説への造詣の浅い人間の妄言であると断言する。
本作で探偵役を演じるマックス・フォン・シドーは
「エクソシスト」で今にも死にそうなおじいちゃん
メリン神父を演じた事で著名で,
「サスペリアPART2」ファンとしては,
幼少時に不幸な体験をして異性を愛せなくなった役を演じた
ガブリエーレ・ラヴィアが悩める父親役を好演しているのが嬉しい。
特典映像のアルジェント監督やガブリエーレ・ラヴィアのインタビューを
観て,高齢になって中々「自分の望む言葉」が出て来ない様子を
イライラしないで待てるようになったのは自分も同じ様に加齢してるから。
予告編が「21世紀の映画の予告の作り方」になっていて複雑な心境となる。