ロバート・ハーモン監督 ルトガー・ハウアー主演の映画「ヒッチャー」レビュー「ジムを鉄郎とするなら…ジョン・ライダーは…彼の青春の幻影…即ちメーテルであり…ジムはジョンとの別れを経て…オトナになったのである…。」
シカゴからサンチャゴへの砂漠地帯を運送屋の
ジム青年(C・トーマス・ハウエル)が車を走らせている途中,
何と言う事もない親切心から
ジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)と名乗るヒッチハイカーを乗せる。
だが彼はナイフでジム青年を脅し
「俺を止めてみろ」
「俺を殺してみろ」
と訳の分からぬ要求を突き付けて来る。
何とか彼を車外に追い出すものの彼は別の車にヒッチハイクし,
運転手と,その家族を殺しながらジム青年に追い縋って来る。
そして何故か彼の凶行がジム青年のやった事にされ,
官憲から追われる身の上となる。
一体自分の身に何が起こっているのか…。
混乱する中,ジム青年から急速に少年らしさが消え,
一人前の男の顔付きへと変貌して行くのだった…。
ヘンな映画。
コレが初見の感想の全てである。
ルトガー・ハウアー演じるヒッチハイカーが
人に魔を差させる魔性・通り魔として描かれ,
魔性に魅入られたジム青年の成長を促す
一風変わった青春映画と僕は受け取った。
「魔性」なら女の方が適任かとも思ったのだが,
途中ジム青年はドライブインレストランのウェイトレス・
ナッシュ(ジェニファー・ジェイソン・リー)と一時行動を共にするのだが,
彼女はジョン・ライダーの手によって退場させられてしまう。
「オマエは俺に魅入られたんだ。下らないオンナなんかに浮気するなよ」
と言わんばかりに。
いみじくも保安官がジム青年とジョン・ライダーの関係を
「妙な関係」と評していて,
同性同士でなければ醸し出せない「妙な関係」は…
性交渉を伴なわない恋愛を感じさせ,
観ているコッチも「妙な感じ」となる。
だからAmazonレビューで,
「ジョン・ライダーが死んで
ジム青年とナッシュが抱き合ってキスしてエンドの方がいい」
と指摘されていたのはナッシュが
ジム青年とジョン・ライダーの「蜜月」に割って入る
「夾雑物」として描かれている事実を見落とした「的外れな指摘」なのだ。
この映画は最初から最後まで
「ジョン・ライダーの魔性に魅入られたジム青年の話」
なのであって…
ジョン・ライダーは最初から自分の望みを
ジム青年に告げていて…
その望みが叶えられた瞬間エンドロールが流れ始める
疑似恋愛映画であり,青春映画なのだ。
僕はたまたま男なので,この様な感想となったが…
全く持って舌足らずであり
「同性同士の性交渉を伴わない恋愛関係」
に関する卓見を有識者に求めたい心境である。
本作品の劇場公開時の煽り文句は
「地獄に触れる。青春の最終章」
とある。
ジム青年にとってジョン・ライダーは…
ジムの少年の日の心の中にいた青春の幻影…
即ち…ジムを星野鉄郎とするなら
ジョン・ライダーはメーテルであって…
鉄郎にとってメーテルとの別れが…
少年の日の終わりだった様に…
ジム青年にとってジョン・ライダーとの別れが…
ジム青年の青春の終わりであり…
ジムはジョン・ライダーとの別れを経てオトナになったのである…。
なるほどなあ…コレはコレで非常な卓見と言える…。
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