光武蔵人監督の映画「マニアック・ドライバー」レビュー「「最初のオチ」で涙腺を緩ませておいて「真のオチ」で唖然とさせる傑作ジャッロ爆誕!」
タクシー運転手のフジナガ(木村知貴)は,かつてフルフェイスで全裸の
変質者に腹を刺された上,最愛の妻を眼前で殺され,変質者も,
その場で自殺するという壮絶な過去があり,
何の希望も無い日々を送っている。
何時しかフジナガは乗客の中から"生贄"の女を選び,
フルフェイスに黒手袋という出で立ちで女を殺し,
自分もその場で死ぬ妄想に憑り付けれ,
これはという客が乗り込む度に空想に耽る様になった。
そんなある日妻と生き写しの女が乗車し,自分は,この女と心中すると決め,
女の荷物から住所情報を取得し,
女の留守宅に家宅侵入しベッドの下に潜むのであった。
3日3晩愛し合った後に女を殺し自分も死ぬと決意して…。
フジナガは妻を守れずに死なせた事をずっと悔やむ描写があって,だからこそ「最初のオチ」を観て,
「この運転手の『本当の望み』は自分が盾になって
奥さんを守ることだったんだ,望みが叶ってよかったなあ」
と涙腺を緩ませていたのだが,
その後に「真のオチ」が来て唖然とした次第である。
最後のフジナガの高笑いは,
「や~いだ~まさ~れた~アホがみ~る~ブタのけ~つ~」
と言わんばかりで見事にやられた。
如何にもジャッロな音楽の数々や,
エンドロールの"YOU HAVE BEEN WATCHING MANIAC DRIVER”や,
思わず”やれれた!”と叫ぶ脚本に,
溢れるジャッロ愛を感じる傑作だと思う。
正常位ならぬ正除霊と堂々と言う度胸と独自の言語感覚にも痺れた。
僕はサントラCD付きを購入したのだが
全21トラック1時間9分34秒収録されている。
本商品の評価は唖然とするオチと
素晴らしい音楽に敬意を表し5つ星評価とする。
正直な話,イタリアのジャッロに対抗出来るのは
江戸川乱歩の猟奇だと思っていたのですよ。
どっこい本邦には光武蔵人がいた!
夏目漱石の「夢十夜」に
現代(明治時代)になっても鎌倉時代の彫刻家・運慶が
仁王像を作り続けていて
漱石が「明治の木には仁王は埋まっていない」と嘆く話があるけど
江戸川乱歩を運慶にして延々猟奇作品の原作を求めちゃダメなんだ。
誰でも話を知ってる猟奇作品には脚色の妙はあっても新規性はない。
令和の御代に令和のジャッロを作るのは令和の監督じゃないとね。
光武蔵人監督に期待するところ大なのである。
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