映画「ノクタ」レビュー「ノクタは何故『オタクに優しいギャル』になったのか?」
ノクタは重い生理に悩み苦しんでるのに,
エルンストはカラオケに夢中で「ノクタに捧げる歌」を呑気に歌っている。
下戸の彼女が騙されて酒を飲まされて吐いてるのに
エルンストと来た日にゃあ…
「ノクタが僕の愛の歌を聴いて吐いた」
と延々「自分の事」「自分の都合」しか言わない。
エルンストが彼女に
「永遠の光」だの「僕の天使」だの美辞麗句を投げかけても
彼女の心には微塵も届いていない。
彼女にとって重要なのは
「エルンストがワタシの事を全然見ていない」
「ワタシを見もしないで美辞麗句を投げかけている」
「ワタシが重い生理に苦しみ,泥酔して吐いてるのに
呑気にカラオケに興じてる」
事実でありパーティ会場の有象無象を皆殺しにするに足る理由なのだ。
終盤彼女はエルンストにチャンスを与える。
「ワタシは「永遠の光」でも「死の天使」でもない」
「クソもすれば屁もする存在なんだ」
「ワ・タ・シ・を・見・ろ」
「オマエが40過ぎても童貞なのは!」
「『父親のせい』なんかじゃねえよ!」
「オマエが人と…女と!キチンと接してこなかったせいだッ!」
「ワタシを愛してると言うのなら!」
「ワタシのアソコにキスして経血を飲んでみろ」
「汚くなんかないよなあ?」
「美辞麗句など…霊的繋がりなどクソだッ」
「肉欲的結合で…下半身の欲求で「愛」を証明して見せろ!」
キャストインタビューで「『ノクタ』ってどんな話?」と聴かれ
脊髄反射で「ボーイ・ミーツ・ガール」と答えていたのが印象深い。
本作は「吸血鬼映画」「大虐殺映画」「ゾンビ映画」「エクソシスト」
と通過して「ボーイ・ミーツ・ガール」に着地する稀有な作品であり,
ノクタが「怒る理由」が明確にされている「大魔神」である様に思える。
魔神さま=ノクタが怒り片っ端から人を殺すには理由があり,
怒りを鎮めるにはその理由を知る必要が…「対話」の必要があるのだ。
「人の話をキチンと聴け」
「「愛」は観念でも言葉遊びでもなく常に具体であり
オマエにワタシのアソコにキス出来るかを問うているのである」
が本作の主張であり
そもそも人の話を聴かないで交際もヘッタクレもないと
「当たり前の事」を言っているのである。
…と以前レビューを書いたのだが
「ノクタは何故エルンストにみっちり説教したのか」
に関して「思うところ」があったので記述したい。
ノクタがエルンストに「ボーイ・ミーツ・ガール」の再試行を許可したのは
エルンストがノクタのコトをスキだって気持ちが
彼女に通じてるからだと思うのです。
ノクタ「オマエがワタシのコトをスキだという気持ちは分かった!」
「但し!オマエの口説き方と口説くタイミングはサイテーサイアクだッ!」
ノクタはエルンストの「何」がダメだったのかを
懇切丁寧に説明し,みっちり説教した後
ノクタ「分かったか?」
「分かったらもう一度「ボーイ・ミーツ・ガール」の最初からやり直せ」
と言ってるワケでエルンストの「スキの気持ち」が
通じてなければ絶対にエルンストに再試行の機会なんて与えませんよね。
ノクタはエルンストの本質が「40歳の子供」だと見抜いた。
恐らくは両親から正しい交際のあり方を
教わる機会に恵まれなかったのだろう…。
コイツはコドモの気持ちのまま
ワタシに「スキだ」と言ってきた…。
コイツは…40歳にしては全くヒネてない…。
誰かしっかりした導き手がいれば…。
この「コドモの真っ直ぐさ」を維持したまま
コイツを大人に成長させられるかも知れない…。
コイツは…40歳童貞とかチビデブハゲとかに惑わされていたが…
「磨けば光る石」と成り得るかも知れない…。
ノクタには…「人を見る目」があり…。
「人の将来性を見抜く目」があったと僕は思うのです。
勿論エルンストの「スキの気持ち」に心が動かされていなければ
彼の本質を見抜く気など起きなかったのでしょうが…。
SNSではノクタのコトを「チョロい」だの「押しに弱い」だの散々な評価。
1.外見に惑わされず人の本質を見抜く目を持ち
2.人の真心を受け取る感受性と純真さを併せ持っていることが
SNSでは「チョロい」「押しに弱い」と評されているのです。
バカじゃないの?
そんなだから一生モテないんだよ…。
ともあれノクタはエルンストの本質と将来性を見抜き…。
先ずみっちり説教してから
「ボーイ・ミーツ・ガール」を再試行させ…
エルンストを正しく導き…「大人」に育成する為に
「オタクに優しいギャル」になったのではないでしょうか。
「見所」が無かったらそもそも説教なんてしませんし
再試行の機会なんて絶対に与えないのが僕の論拠となります。
1.ノクタには「人を見る目」があった。
2.ノクタには人を正しく𠮟ることが出来た。
3.何よりノクタには「善性」があった。
僕はどうもこの…
根っ子に「善性」のある人物にメタメタに弱くてな…。
エルンストは良い両親に恵まれなかったかも知れませんが
彼の真心を受け取る相手には恵まれた…。
それが本作品の「救い」だと思ってます。
「良い映画」と言うのは
道を歩いていてもその映画のコトを
我が事の様に考え受け取る映画のコトだと
愚考する次第です。