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フランソワ・トリュフォー監督の映画「黒衣の花嫁」ブルーレイレビュー「何が何でも復讐を完遂せねばならぬ。」

子供の頃から将来を誓い合った男を結婚式で面白半分に射殺された女(ジャンヌ・モロー)が射殺に関わった男達を次々と殺して行く復讐譚。
手口も様々,髪型も様々,衣装も様々でモローの7変化を堪能出来る。
「女であること」を武器に男達に近付く…と書くと如何にも通俗的で本商品に収録されている米国版予告編の安っぽさに辟易するが, モローは男に決して媚びないし,己の肉体を武器にするなどと言った下世話な復讐方法を採らない。
寧ろ男達がモローの魅力に惚れ込み「俺に気がある」と勝手に思い込み,初心な少年の様に愛の言葉を囁き,油断しまくっている所で命を奪われるのだ。
相手が命乞いしようが,年端も行かぬ子供が居ようが容赦はしない。
3人殺した所で教会で懺悔するものの,神父の説教を無視し,凶行を続ける決意を固める場面は,日本で言ったら初期の「必殺シリーズ」から「お涙頂戴」を取っ払った感じだろうか。

「徹底的にハードボイルドである」と言いたいのだ。

4人目が彼女の眼前で警察に別件逮捕され監獄に送られ, 彼女の復讐計画が頓挫したかと思わせる「おやっ?」が本作のアクセントになっていて,退屈させない。
彼女は花婿殺しに関わった全ての男に自らの手で罰を与えると誓いを立て,復讐が終わって初めて愛する男の許に旅立てるのだ。
彼女の決して諦めない性格は計画を頓挫させたままではおかないのだ。

本作のDVDが結構強気な価格設定で購入に二の足を踏んでる間に廃盤になった挙句大変なプレミアが付いた。
今回のブルーレイには特典は米国版の予告編のみで, 念願の日本語吹替も搭載されない癖にDVD同様強気な価格設定が憎い憎い憎いが,
この機を逃すと今度は何時買えるか分からずエイヤっとルビコン川を渡った次第である。
悔しいがな「映画の円盤は見つけ次第買え」が鉄則なのだ。

本商品のジャケットの隅っこに小っちゃく「HD MASTER」との記載がある。
普通さあ~HDマスター使用って商品の最大の売りにする筈なのに, 流石文芸作品ばかり取り扱う天下のIVCで,一切宣伝をしやがらない。
まこと恐れ入った次第である。
画質は数か所ピントがボケる箇所はあるが,概ね良好で発色も良い。
だが予告編は画質も悪く字幕も付かない体たらくである。
もう少し商売っ気を出してもバチは当たらないのよ?

ブックレットは評論家で本作の字幕製作も手掛けた山田宏一氏によるもの。
内容を読むとトリュフォーは本作の出来に決して満足しておらず「失敗作」とすら呼び,
ジャンヌ・モローの為に選んだ題材としても不適切だったと語っていたそうな。
しかしながらブックレットで本作への監督の評価を赤裸々に綴るところに本作への山田氏の高い評価を窺い知ることが出来る。

僕としては本作と淀川長治氏が御存命だった頃の「日曜洋画劇場」で出会ってから ずっと恋してきた作品であるだけに特典の少なさ,せめて日本語吹替が搭載されてないのが悲しい。
「映画は芸術作品であって余計な付録など不要」って考えもあるかも知れないが, 僕は娯楽作品として本作を評価しているのだ。
箆棒に面白い作品に山程の特典が搭載されるのは当然だと思うのは些か通俗的に過ぎるだろうか。
作品を評価し減点はしないが不満は残る。

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