中川翔子さんの「しょこたんの秘宝遊戯 映画貪欲大全」レビュー「なんで…ワタシが『最高』と思うモノは何もかも…ワタシが生まれる前のモノなんだ…なんでリアルタイムに体験出来なかったんだ…悔しいッ!」
本書は洋泉社の「映画秘宝」というA4サイズの月刊雑誌で
アイドル・中川翔子さんによるイラストと映画レビューからなる
「しょこたんの秘宝遊戯」というA4サイズ1頁分の連載が
2006年から連載開始され…
2013年までの足掛け8年間で
12回/1年×6年分+7回=79回分で連載が堂々完結し…
映画秘宝誌で様々な映画の登場人物のコスプレ写真を撮影したものも
収録して2014年2月にA4版そのままに書籍化されたものです…。
勿論とっくの昔に絶版となっていたのを
ネットのブックオフで発見し購入させていただきました。
最初に説明した通り…
本書は…
1.中川さんによる映画イラスト
2.中川さんによる映画レビュー
(編集者からの誘い水に応える形式)
3.中川さんのコスプレ写真集
の3つから成り立ち…
1と2は一体化しておりますが…映画レビューの幕間(まくあい)に
3のコスプレ写真集が挟まれている構成となってます。
中川さんはデビュー当時にインタビューに答えられ…
「スキな漫画の登場人物」に…
「楳図かずお先生の漂流教室の関谷」
と回答してアイドルファンの思考を停止させた逸話の持ち主で…
「中川さんのイラスト」は…楳図先生へのリスペクトに満ちているのです…
因みに「関谷」は…主人公の小学生翔の通う小学校の
給食のおじさん=給食の配膳係で…
翔たちと共に遥か未来へと飛ばされ…気が狂う役を演じており…
「なんで関谷のコトがスキになるんだッ」
と思わず絶叫する人物なのですが…
ヒトをスキになるのに理由は要りませんね…。
ともあれ中川さんの熱い「漂流教室」ラブコール&楳図先生ラブコールの
結果…中川さんと楳図先生は邂逅を果たすコトとなりました…。
「後書き」を読むと…
中川さんは…連載開始してから最初の2年間は
手描きでイラストを描かれ…
イラスト1枚描き上げるのに3日間を要されたそうです…。
中川「最初のうちは…本業が暇で…時間が無限にあったんです…」
その後本業が多忙となって行き…
イラストは手描きからデジタル化に
移行されるコトとなって行かれたそうです…。
中川さんは洋泉社のムック本
「ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!」で映画秘宝誌を知り…
中川さんは…クンフー映画とゾンビ映画がお好きで…
「なんでこんな…」
「ワタシの趣味に100%シンクロする雑誌が存在するんだ…?」
と大いに驚かれたコトが
本映画レビュー執筆の切っ掛けとなったそうです…。
本書には79本の映画レビューが
中川さん御自身によるイラストと共に掲載されていますが…
本映画レビュー執筆開始の沿革及び掲載雑誌から鑑みるに…
「まともな映画レビュー」になるワケがなく…。
79本の映画レビューのうち…
ブルース・リー&ジャッキー・チェン&クンフー映画関連の記事が19本…
ホラー映画が16本…
即ち…クンフー映画とホラー映画が全体の約45%を占めているのです…。
記念すべき連載第1回が…
ブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」!
第2回がジャッキー・チェンの「酔拳2」!
第3回がサム・ライミの「死霊のはらわた」!
第4回がチャウ・シンチーの「少林サッカー」!
…とおよそアイドルの映画レビューとは到底思えぬ…
常識では到底考えられぬラインナップが無限に続いてるのである…。
ホントにねえ…
中川さんは…御自分の「スキ」に
きッわッめッてッ忠実に記事を書いてるコトがよおく分かるッ!
クンフー映画&ホラー映画以外に…
ホドロフスキーの
「ホーリー・マウンテン」「サンタ・サングレ」のレビューもある。
(母親に「エル・トポ」と共に
「コレお父さんがスキだった映画だから観ろ」と言われたそうな)
チャップリンの「街の灯」や
山田洋次の「男はつらいよ」のレビューが突然挿入され…
アタマのおかしなヒトが…
一瞬だけ正気に戻るかの様な狂気が逆に垣間見える…。
しかし…何と言っても圧巻は…
ダリオ・アルジェントの
「サスペリア」と「フェノミナ」のレビューだろう…。
「サスペリア」のレビューより
中川「この映画の色彩感覚って…物凄い狂ってて…」
「ホント70年代ってサイケでヤバかったんですね…」
「なんで…」
「ワタシが『最高』と思うものは何もかも…」
「ワタシが生まれる前のモノなんだ…」
「なんでッ!」
「ワタシはリアルタイムに体験出来なかったんだッ!」
「悔しいッ!」
「この映画は…」
「ワタシの夢とよく似てるんです…」
「ワタシもよく夢に見るんです…」
「変態に意味もなく暗いトコロに追い込まれて…」
「何度も何度も刺されて…」
「とても痛くて…」
「その変態にワタシのホルモン(焼肉屋用語で牛や豚や鶏の腸のコト)を」
「取り出されて…目の前でホルモン(腸)を切り刻まれて喰われる夢を…」
「自分の夢と映画がシンクロして…」
「コレ…『分かる』ってなるんです…」
「変態に滅多刺しにされて殺されて…」
「その変態にホルモン(腸)切り刻まれて喰われる気持ちがね…」
コレ…多分…「サスペリア」と…「ゾンビ」が…
中川さんの「夢」の中で渾然一体となっているんです…。
「フェノミナ」のレビューより
中川「アルジェントくんは…」
「楳図かずお先生や…伊藤潤二先生が…」
「『漫画でやっているコト』を…」
「映画でやってるんです…」
「ジェニファー・コネリーもそうですが…」
「なんで『巨匠』と呼ばれるヒトは…」
「『14歳』に拘るんだろう…」
「碇シンジも月野うさぎも14歳…」
「衝撃的なストーリーの主人公は…」
「絶対に14歳でなければいけないんです…」
「語弊があるかも知れないけど…」
「殆どの女性には『危険願望』があって…」
「特にワタシは…『追い詰められて刺される』夢があり…」
「『やめて!』と思いながら…」
「内心ではソレに惹かれているのかも知れない…」
「ワタシは『悪夢』がキライじゃない…」
「確かに…目が覚めて『夢だったのか』と安堵はするが…」
「悪夢の『続き』が気になってもいるんです…」
僕は…ホラー映画の…スラッシャー映画の…ジャッロ映画の…
殺害場面で…常に…『刺し殺す側』に感情移入して観ているが…
なんの世間は広い…
変態のキチガイの殺人鬼に…
『刺し殺される側』に感情移入して…
刺された脇腹を押さえながら映画を観る人間が存在したのだ…。
僕は…「長く生きてる」のが唯一の取り柄で…
「長く生きてる」分…色々なレビューを読む機会があったが…
こんなレビューは読んだ試しがない…。
このレビューは…中川さんの唯一無二のパーソナリティが生んだ
唯一無二のレビューであり…オリジナリティの化身なのである…。
拙レビューを書いてて
中川さんが自分の腸を「ホルモン」と呼ぶ件(くだり)で
僕は大阪でホルモン焼き屋を営む竹本チエ(じゃりン子チエ)を思い出し…
「チエ」の作中…
ホルモン焼きが「下品」と罵倒されるのは「精がつく」からで…
僕の母などは
「子供がホルモン焼き食ったら鼻血止まらんよヒヒヒ…」
と僕に言いながら下品な笑みを浮かべていた…。
閑話休題
本書に掲載された唯一のアニメ作品は…
ディズニー映画の「塔の上のラプンツェル」であり…
コレは勿論…主人公ラプンツェルの声の出演を担当されたのが
中川さんだからである…。
デル・トロ監督の「パシフィック・リム」のレビューで…
最後に主人公2人(男女)が抱き合うだけでキスしないで
「終わる」トコロが本作品の見所であり…
デル・トロの中二魂の発露であると断言する辺りに…
中川さんの体内にも熱い熱い熱い
「中二魂」が滾っている証明となっており…
「童貞中学生男子が作っている」
と揶揄されるコトの多い映画秘宝誌にあって…
足掛け8年もの連載が続いたのも
けだし当然と言えるのだ…
本書のトリを務めるのは中川翔子さん初主演の映画「ヌイグルマ―Z」。
中川「ワタシ…ドMだから…」
「ワタシの演じた『ダメ子』が…」
「ヒロイン様にイジメられるのが嬉しくて…」
「ヒロイン様が…」
「『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイイエローだったから…」
「殊更に嬉しかった…」
本当にね…オタクの気持ちが理解出来るのはオタクだけで…
中川さん自身…「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のレビューで…
『オタクが撮った映画は…他の国のオタクが観ても瞬時に分かる』
と…オタクマインド全開のコメントを書かれているである…。