映画「ディレンジド」レビュー「微塵もスタイリッシュじゃない猟奇殺人魔の誕生から破滅までを描いてます。」
高圧的だった母の死を受け入れられない
ショボクレマザコン中年男エズラ・コブが母親の亡骸を墓場から
掘り出し剥製にしてスープを飲ませようとするも当然満たされず
若い女を次々と拉致監禁するも目的を果たせず凶行に走る。
場慣れするにつれて男が貧弱な坊やから獲物を狙う狩人へと変貌する。
1人の猟奇殺人犯の誕生から末路迄を淡々と追う。
1人2役で死んだ母親と会話しカツラを被り女装する主人公
(エド・ゲインのモデル)にこれっぽっちも洗練されない
ノーマン・ベイツを見る。
僕は「サイコ」をより洗練させようと試みた
「殺しのドレス」より,滑稽な方向に突き進んだ本作の方が"正しい"と思う。
女性を拉致監禁して服を脱がせて拘束し,剥製達とのお食事会…。
「洗練されてない」が故にゾッとする様な現実感が伴われているのだ。
「ホラー映画愛好家の心象風景」を一言で言えば「殺風景」であり
コブが構築した一家団欒の実態もまた「殺風景」であり
コブの家に招待された感のある僕達観客は
「実家にいる様な安心感」を覚えるのだ。
コブの世界観に於いて「他者」はあくまでも異分子であって
「女」は加えて「訳の分からない存在」であり
殺して料理にするか家具にする事によって初めてコブは安心出来るのだ。
「死んだ女だけがいい女」なのだ。