NHK朝の連続テレビ小説「おしん」レビュー「おしんのしんは辛抱のしん・おしん音頭も作られる程の大話題作ですね」。
寒風吹き荒ぶ中,ひとりの妊婦が川の中に入りしゃがみ,
下半身を流れる冷水に沈めている。
一体何をしているのか。
「本当の貧困」を知っている人間だけが
「何をしているのか」を察し落涙する。
本作品は通常ならば「寸止め」すべき光景を
「寸止め」せずに視聴者に突き付ける。
衣食住に不自由した経験のない人間に
かつて本邦に衣食住全てに不自由した時代があったのだと叫んでいるのだ。
NHKに米俵を届け
「この米を「おしん」に腹いっぺえ食べさせてやってくれ」
と懇願した人間を
「現実と虚構の区別がつかない可愛そうな人」
と今日の視点で評価することは容易いが,
それほど本作品が迫真の出来であることの証明となっている。
また東南アジアの人々に
「今は,どんなに貧困に喘いでいても辛抱して一生懸命働けば,
将来自分の店が持てるのだ」
と希望を与えた功績は特筆に値する。
本作品は「連続テレビ小説」の最高傑作ではない。
本作品は「連続テレビ小説」という「規格」をぶち壊し「おしん」という,
ひとりの人間の半生を描いた不世出の物語なのだ。
本作は「おしん」の年齢に応じて
少女編(小林綾子),若年編(田中裕子),壮年編(音羽信子)に大別されるが
観ていて一番キツいのは実は少女編ではなく若年編の嫁いびり描写なのだ。
健気さで乗り切る少女編・孫が味方し貫禄で乗り切る壮年編は
意外と完走できるが,若年編は脱落者が続出し死屍累々の様相を呈した。
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