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映画「ギャラクシー・クエスト」レビュー「大昔の空想特撮番組とその出演者とその熱狂的なファンに対する大いなる愛情にあふれた作品です!」

1970年代にテレビ放送された空想特撮番組「ギャラクシー・クエスト」は…
宇宙船・NSEAプロテクター号が頼り甲斐のあるダガート艦長の指揮の下,
宇宙を股にかけた冒険をするSF作品で…。
現在(1999年)でも熱狂的なファンが多く…
全国各地でファンによるコンベンションが開かれ…
かつての「プロテクター」の乗組員を演じた
役者たちが招かれるコトも多く…
「プロテクター」のユニフォームを着用した役者たちが
ファンの質問に応じたり…サインに応じたり…
写真撮影に応じたりするもしばしば。

実際の話…「プロテクター」の乗組員を演じた役者たちの出演作は
「ギャラクシー・クエスト」1本切りで…
何故なら彼等は特撮ファンにとっては稀代の名優であっても…
実際には大根役者の集まりだからで…
コンベンションに参加してサインに応じたり…
ファンの求めに応じてかつての名セリフを言って見せ…
幾許かの出演料を得るコトが…
彼等の収入源の全てなのだ…。

ダガート艦長を演じたジェイソン・ネズミス(ティム・アレン)は
かつての共演者達からの嫌われ者だ。
何故なら…ネズミスは…
「『ギャラクシー・クエスト』の主役は他の誰でもないこのオレなんだ!」
「オマエ達はオレにくっついて来てるだけの「その他大勢」の端役なんだ!」という態度を露骨に示すからである。

そんなネズミスがコンベンション会場のトイレで
「『ギャラクシー・クエスト』なんて大昔のコドモ向け特撮番組に
何時までも血道を上げる連中は人生の負け犬だ」
って陰口を利かれて切ない表情になっても…。
僕は同情する気なんて微塵もないね。

何時もの様にネズミス達が死んだ魚の目になってコンベンション会場で
ファンの求めに応じてサインしていると
「サーミアン」と名乗る一団が現れる。

サーミアンは自分達が宇宙人であると明かし…
彼等の文化圏には「嘘」という概念がなく
彼等が地球からの電波でキャッチした
「ギャラクシー・クエスト」を「記録映像集」と受け取り…
その「記録映像集」を真に受けて
「ダガート艦長」に折り入って願い事があると言うのである。

「自分達は今…『サリス』と呼ばれる
非常に好戦的な宇宙人の侵略行為に晒されており…
『プロテクター』の皆さんにサリスの脅威を追い払って欲しい」
…と言うのである。

サーミアンは記録映像集「ギャラクシー・クエスト」を基に…
超科学力で「プロテクター」の1分の1モデルを建造しており…
コレに乗って我々に同行して「サリス」と交渉し…。
場合によっては戦ってくれと言うのである…。

しかしながらネズミス達の「本職」は「売れない大根役者たち」であり…
そんな彼らに「サリス」と戦うことなど出来るのであろうか…。

本作でNSEAプロテクター号のダガート艦長役を演じる
ジェイソン・ネズミスには明確なモデルが存在する。

言う迄もないだろうが…。
「スター・トレック」のUSSエンタープライズ号の
カーク艦長を演じたウィリアム・シャトナーである。
ネズミスの「イヤな部分」とは即ち
シャトナーの「イヤな部分」の引き写しなのだ。
…と言うよりも…「プロテクター」とは「エンタープライズ」のコトであり…
「ギャラクシー・クエスト」とは「スター・トレック」のコトなのである。

「スター・トレック」の熱狂的なファン…
有体に言えばオタクちゃんのコトを「トレッキー」と呼び…。
本作には多分に
トレッキー達の痛い痛い痛い生態を描写する側面があるのだ。

しかしながら…本作はトレッキーを笑う映画ではない。
最初に「プロテクター」の乗組員を演じた役者たちの惨めな「今」を描き…
トレッキー達の奇態を散々描いておいて…
満を持して高度に純化した「オタクの結晶」として
サーミアン達を登場させるのである。
「嘘」を知らないサーミアンは…。
「『スター・トレック』で描かれた事は全て真実である」
と信じて疑わないトレッキー達の姿そのものなのだ。

「ギャラクシー・クエスト」の(地球人の)オタクの代表して登場する
ブランドンと言う若者を演じるのはジャスティン・ロング。

ブランドンとネズミスの会話をまあ聞いて欲しい…
ネズミス「僕はジェイソン・ネズミス…ダガート艦長を演じている…」
「先日のコンベンションで僕と君たちがぶつかった拍子に…」
「僕の(サーミアンが作った本物の)通信機と」
「キミの(オモチャの)通信機が入れ替わった…」
「つまり…今キミが持っているのは本物の通信機なんだ…」
「今僕は本物の『プロテクター』で危機に瀕し…」
「キミの(オタク)知識の助けを必要としている…」
「ブランドン…キミにはコンベンション会場で沢山質問して貰ったのに…」
「冷たくあしらってしまって本当に済まなかった…」

ブランドン「艦長(コマンダー)…」
「僕は…艦長が仰られた事を僕なりに検討していました…」
「僕は…イカれてなんかいません…」
「『ギャラクシー・クエスト』が…」
「ただのテレビの特撮番組だってことくらい分かってます…」
「(『プロテクター』の動力源の)ベリリウム球体も…」
「『プロテクター』も…本当は存在しない…」

ネズミス「聞くんだブランドン…アレは全て真実なんだ…」
ブランドン「知ってました…知ってましたコマンダー!」

ねえ…一体…この会話で泣かねえ特撮オタクなんていんの?

「ギャラクシー・クエスト」の熱狂的なファンには
勿論ネットワークがあり…。
得意分野で手分けして
PCに「プロテクター」の内部構造をCGモデリング化しており…。
ネズミス達よりも…地球上の誰よりも…
「プロテクター」の内部構造に詳しいんだ…。

オタク達の…現実には何の役にも立たないと思われた知識が…
ダガート艦長を助け…「プロテクター」の窮地を救う展開に
トレッキー達は皆…滂沱の涙を流したと言う…。

ジャスティン・ロングは…
本作のオタクちゃん役が余りにも素晴らしかったので
「ダイ・ハード4.0」のオタクハッカー役…
サム・ライミの「スペル」の希少コイン収集オタク役…
とオタク役御用達俳優と化して行く…
挙句「Mr.タスク」では四肢切断されてセイウチスーツを着用させられ…
身も心もセイウチになるよう調教されるロクでもない役柄を演じている。
役者はオファーがある内が花とは思うが…少しは仕事を選ぶべきだと思う。

「プロテクター」で…艦長の命令を復唱するコトしか出来ない
マディソン中尉を演じる大根役者グエン役を演じるのが
何とシガ二―・ウィーバー!
シガ二―がメッチャクチャ楽しそうで観ているこっちも嬉しくなります。
勿論ダガート艦長(ネズミス)とマディソン中尉(グエン)の
「ギャラクシー・クエスト」通りに必要以上に親密な様子に
ある女性ファンは感激の余り卒倒し…
ある男性ファンは
「『ギャラクシー・クエスト』に!恋愛要素など不要ッ!」
と憮然とした表情をしてる模様も活写されてます!

ブランドン達…オタクちゃんの知識の助けを借りて
「サリス」の脅威を排除し…
地球に帰還したネズミスはブランドン達に…
そっと「プロテクター式敬礼」を贈りウィンクして…
ブランドン達が無言で敬礼を返す場面は…
涙で画面が歪んで見えねえよ…。

オタクがこんな仕打ち受けたら…
一生…未来永劫…オタクを止められる訳ねえんだよ…。

ネズミスが…「オレがオレが」って態度を改め…
共演者達と横並びとなる場面も泣かせます…。

エピローグで
「18年の時を経て…今…新たな冒険が始まる…」
との煽り文句と共に
「続ギャラクシー・クエスト」のPVが流れるオチまで完璧な出来。
多分「ギャラクシー・クエスト」は…
1970年代から80年代初頭まで放送されたんだろうなあ…。

本当に素晴らしい。

映画秘宝誌による2001年度最高の映画は
邦画が「クレヨンしんちゃん オトナ帝国」が受賞し…
洋画が本作…「ギャラクシー・クエスト」が受賞したのは…
ただもう…「納得」の二文字しかないよ…。

コンベンション会場の模様とか
熱狂的なファンの普段の生活とか見所一杯です!


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