リチャード・フライシャー監督の映画「ミクロの決死圏」レビュー「宇宙の海はオレの海だが…『体内』もまた未知の宇宙の海と言えるのだ。」
米国の物質をミクロ化する研究が「1時間しかミクロ化出来ない」という
「制限時間の壁」で行き詰まり,その「壁」を打開する為に
東側のミクロ化の研究の権威ベネシュ博士の西側への亡命を手引きするが
東側の妨害工作で移動中に事故を起こし…
ベネシュは頭部に大怪我を負い…脳出血に伴う脳血栓を併発する。
西側陣営はベネシュを救う為に5人乗りの特殊潜航艇「プロテウス」を
ミクロ化しベネシュの頸動脈に注射する。
「体内」には血管が網羅され血管を経由して血液が体内を循環している…。
「プロテウス」は血流に乗って脳の血栓に到達し…
血栓をレーザー照射で焼き…再び血流に乗って脱出しようと言う
世にも奇想天外な作戦を実行しようと言うのである…。
だが…「体内」は未知の宇宙に匹敵し…
なおかつ5人の乗組員のひとりが東側のスパイであって,
このミッションが失敗する様画策して来るうえに
「体内」に侵入してから治療行為を行い…
脱出するまで制限時間が1時間しかない…。
1時間過ぎたら…「プロテウス」は元の大きさに戻り
ベネシュは勿論乗組員の命もまた潰えるのだ…。
果たしてこの…困難極まりないミッションは成功するのだろうか…。
「ミクロの決死圏」は…原題をFantastic Voyage(幻想的航海)といい…
「体内」は解剖学的な写実性を伴って描かれず幻想的に描かれている。
頸動脈から侵入した「プロテウス」は
事故によってベネシュの静脈と動脈が癒着し…
行く予定の無かった「心臓」に向かう羽目となる…。
このままでは心臓通過時に「拍動」の衝撃で
「プロテウス」は圧壊してしまう…コレを一体どう回避するのか…。
また内耳通過中の「絶対に音を立ててはいけない」選手権開催時に
「外の世界」の看護士が期待通りにメスの束をまとめて床に落とし
大音響を発してベネシュの鼓膜を激しく震わせてしまう…
この想定外のトラブルをどう乗り越えるのか…。
また…血栓をレーザー照射で焼き始めると
「白血球」が異物を排除に襲い掛かり…。
加えて手術に成功されては困る「謎のスパイ」の妨害工作によって
予定を大幅に超過し…脱出ポイントまでとても間に合わない…。
どうやって体外に脱出すればいいのか…。
始終緊張して心臓バクバクである。
この「ミクロの決死圏」に本邦の特撮番組「ウルトラセブン」が
大いに影響を受け…「悪魔の住む花」というエピソードで
若き日の松坂慶子の体内に寄生した怪獣ダリーを
セブンがミクロ化して松坂慶子の体内に侵入して
コレを退治に行く…という一篇に仕上がっている。