ハーマン・ヤウ監督&アンソニー・ウォン主演の映画「エボラシンドローム 悪魔の殺人ウィルス」レビュー「「八仙飯店之人肉饅頭」のコンビが再度タッグを組み東洋人は名誉白人でも「白人の友達」でもないと「本当の事」を突き付けて来る。」
1986年香港でヤクザの組長の女を寝取った
チンピラ・カイ(アンソニー・ウォン)が落とし前にナニを切れと言われ逆上,
組長,組長のスケ,ヤクザ構成員の3人を惨殺し,南アフリカに逃亡する。
10年後,南アのレストランで,こき使われる料理人に身をやつしたカイは,
肉の仕入れに訪れた原住民の村で
エボラ出血熱に感染し,ゴザの上に転がされ
死を待つばかりの村娘を強姦し発熱するものの,
彼は世にも珍しい抗体を持っており感染せず,
代わりに病原菌をばら撒くバイキンマンと化す。
レストランでトラブルを起こした彼は主人とその女房,親戚の3人を
惨殺してバラバラにしてハンバーガーの具にして客に振る舞う。
人肉バーガーであることも問題だが,
彼がエボラ出血熱の保菌者である事が更に問題で被害者が増えて行く。
彼はレストランの主人の隠し財産を発見し,
その金で香港に戻りホテルのロイヤルスイートに泊まり
風俗嬢を呼び付けて性交渉三昧。
当然風俗嬢も感染する。
南アと香港を股に掛けた彼の乱行は,
そのまま感染範囲の拡大に繋がって行くのだった…。
八仙飯店の従業員(アンソニー・ウォン)が賭け麻雀に負けて逆上して
主人一家全員を殺し,店を乗っ取り,
殺した死体を饅頭の具にして新メニューとして客に振る舞う
映画「八仙飯店之人肉饅頭」はハーマン・ヤウが
映画「羊たちの沈黙」の大ヒットに便乗し
香港の実録犯罪を映画化した香港版「羊たちの沈黙」だという。
逆上したアンソニー・ウォンが割り箸の束を女の股に突っ込んで
大出血させた挙句,強姦殺人に及ぶ映画の
一体何処が「羊たちの沈黙」なのかは皆目分からんが…。
ともかく「八仙飯店之人肉饅頭」は大ヒットし
ハーマン・ヤウ&アンソニー・ウォンが
3年ぶりにコンビ再結成して作ったのが
本作…「エボラシンドローム」となる。
要するにい…今度は「アウトブレイク」を参考にしたって訳…。
例によってこれっぽっちも似てねえから
誰もパクリと気付かない・気付けないだけで。
アンソニー・ウォンの好色と乱行と不衛生さは
同じ東洋人として他人事とは思えず,
映画を観ていて身につまされる事多数。
彼が自分が保菌源と判明すると,
「俺はエボラだ~」と叫びながら周囲の人間に唾を吐きかける有様。
火炎放射器で焼かれる彼の断末魔を観ながら
「頼むからもう死んでくれ」と祈りたくなる。
自分の事を名誉白人と思っている日本人は少なくないだろうが,
先ず鏡を見て,次いでアンソニー・ウォンの顔を観れば,
名誉白人なんかではなく東洋人である事は明らか。
その東洋人アンソニー・ウォンが南アでこう言うんですよ。
「南アで一番偉いのは白人で次いで黒人,一番差別されるのが東洋人で」
「その東洋人の店で使用人としてこき使われる俺が一番身分が低い」って。
本作に於ける「東洋人」が
1.銭勘定大好き。
2.セックス大好き常時発情。
と描かれてるんだから例え南アでなくとも軽蔑されて当たり前で
ハーマン・ヤウの「東洋人」評価は
僕達日本人の「僕達は名誉白人で白人の一番の友人」って幻想を
ブチ壊しにする破壊力に満ちているのですよ。
「白人の一番の友達」が
何で白人の荷物持ちしたり白人におべっか使ってるんだよ。
「白人におべっかを使う黒人」をアンクルトムとか
指差して笑える身分じゃないんだよ品性卑しい卑しい卑しい東洋人は!
…とハーマン・ヤウは「本当の事」を突き付けて来る。
本作を観ると詰まらない夢から覚める効果があるが,
ずっと夢見ていたい向きには目を覆いたくなるだろう。
「八仙飯店之人肉饅頭」と比較するとゴア度も凄惨度も1枚落ちるが,
東洋人を嫌な気持ちにさせる露悪度は遥かに上回っている。
そこの所を評価して4つ星とする。