深沢真一監督の映画「地獄の血みどろマッスルビルダー」ブルーレイレビュー「傑作邦画が先ず海外で評価され…最初に海外でブルーレイが出るコトは…国辱ものだと愚考する次第です。」(再投稿レビューです。)
就職もしないでボディビルに精を出す
ボンクラ・直人(深沢真一監督本人)が
元カノの依頼で霊能者を伴って
同じくボンクラだった亡父の住んでた家にやって来る。
かつてその家で亡父は元カノとの痴情の縺れが原因で
元カノを殺害し床下に埋めており元カノの怨霊が
亡父に生き写しの直人に勘違いして襲い掛かって来たのだ。
直人の元カノと霊能者もとばっちりで怨霊に監禁され
恐怖の一夜を過ごす事となるのであった…。
深沢監督は「死霊のはらわた2」の大ファンで海外で本作は
和製「死霊のはらわた」(Japanese evil dead)と呼ばれている。
本作には「死霊のはらわた2」「燃えよドラゴン」「ターミネーター2」等々
監督の「好き」が一杯詰まった煮凝りの様な作品となってる。
ボンクラの父はやっぱりボンクラとか
ボディビルやってても一文の得にもならず
当然の結果として就職出来ないボンクラの主人公とか
辛い現実をさらっと挟み込んで来る
苦み走った作風が好き者には堪らないのである。
深作欣二監督の「魔界転生」がそうである様に
国内ではDVD止まりで
本作のブルーレイが先ず海外で出た事を,
本作が海外で先に評価された事を残念に思う。
海外のブルーレイだけど原語(日本語)が100%理解出来る
大船に乗った様な安心感が嬉しいね。
先ず言いたいのは非常に観ていて楽しいって事。
メイン&サブメニューもアニメ処理でグリグリ動くし,
チャプター分割のサムネも動画。
サブメニューでは深沢監督の「うおおお」「マッスルゥゥゥ」
「(筋肉が)盛り上がったぜぇぇぇ」等の渾身のシャウトが聴けて観る前から,こっちの気分も盛り上がる絶妙な構成。
映画本編はオリジナルテープからのSDマスターを使用で
画面はスタンダードサイズ。
画質は粒子感と褪色感を生かしつつ解像度を上げた
あくまでも「味」を殺さない方針を感じます。
尺の長さは国内DVDと同じ62分なので完全版だと思う。
英語字幕はON/OFF可能。
OFFにすれば普通の邦画のブルーレイとして堪能出来るし,
ONにすれば滑舌の問題で聞き取りにくい日本語の意味を
中学生レベルの英語で理解が進みます。
特典は深沢監督へのインタビュー
(DVD版のインタビューとは別物です。)
が収録され,
インタビューに神妙に答えるシャイで謙虚な若者の心中に
「俺は死霊のはらわたシリーズに
インスパイアされた血みどろ映画を作ってやるぞ」
ってマグマの様な情念が流れているとは到底思えませんね。
音声解説の1つ目は映画監督のアダム・グリーンと
ミュージックビデオ監督のジョー・リンチによるもので
最初は神妙に解説してるのだが,
ゴア描写になると英語字幕を感情を込めて読み,
死霊が磔にされた右手を引き抜き反撃すると
「俺はキリストだァ!復活したぜェェェ!」
とか
ショットガンで死霊が部位破損すると
「今吹っ飛んだのチンコ?」
とか死霊が直人の股間を蹴ると
「今キンタマ蹴った!」
とか大の大人2人が中学2年生に逆戻り。
最後は二人声を合わせて
「マッスルゥゥゥ」
「盛り上がったぜェェェ」
の大合唱。
こういうね,映画を心の底から楽しむ姿勢は見習いたいですね。
もうひとつの音声解説は日本映画の歴史を研究してる
ジェームズ・ハーパーによるもので,
過去のホラー映画からの影響の点から本作を解説してます。
直人の「グルービー(Groovy)」って台詞を取り上げて
「日本ではアカシてるぜ…いや…イカシてるぜって言うんだよ」
って解説に悪い人じゃないと思いました。
英語字幕で気になったのは日本語の台詞を真面目に全部英訳すると
字幕の量が多く,英語ネイティブの人でも追い駆けられない模様。
字幕翻訳の難しさを感じました。
どうでもいいんですが直人の「地獄で会おうぜベイビー!」も
真面目に"See you in hell,baby!"って英訳してて
ココは「ターミネーター2」の玄田哲章氏による吹替のパロなので
"Hasta La Vista,baby!"と訳して欲しかった所(勿論減点対象にはなりません)。
隅から隅まで心配りが行き届いた丁寧で,真面目で,遊び心が一杯な作りに
文句なく5つ星を進呈する次第です。
YouTubeでも本ブルーレイの海外のレビュアーのレビュー動画が
ドシドシ挙げられてて何と言うかさあ
「(日本は)このままじゃいけない」
って早見優と化す僕なのでした。
YouTubeの海外のアニキ達の本作品への評価は残念ながら辛い。
その「辛い」理由と言うのが…
「シンイチは筋肉の鍛え込みが足りない」
「まさかシンイチは…働いてるんじゃあるまいな?」
勿論解説が必要で
海外のアニキ達が筋肉を極めるに当たって
最初にするのは「会社を辞めるコト」であり
「働くコト」は「余計なコト」なのである。
深沢監督は働きながら映画を創られており…
ソレを海外のアニキ達は見逃さなかったのだ…。