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ジェラルド・カーグル監督の映画「アングスト/不安」レビュー「『男はつらいよ』…統合失調症となる程ね…」
子供の頃,母と妹から馬鹿にされ軽んじられた男が
殺害現場を見せつけることによって
相手を震え上がらせ畏怖させようと試みるも
本来の支離滅裂さが災いし計画殺人が衝動殺人に転じる。
僕は彼と同じ家族構成,同じ境遇だったから共感出来る。
毎日毎日母親と妹からバカにされて…
妹から
「ワタシより先にフロに入るな!」
「汚らわしいッ!」
と罵られ無視して風呂に入ったら
妹はこれ見よがしに風呂のお湯を全部抜いて
浴槽を綺麗に洗ってから風呂を沸かし直して入っていた…。
毎日毎日…母親と妹が寝入ってから金属バットを握り締め…
「今日こそ殺してやるッ」
と葛藤したコトは一度や二度ではない…。
毎日毎日…暗い顔をして「今に見てろ」って思ってた。
結局…母親と妹を金属バットで殴り殺す道を選択せず…
アタマが破裂する程勉強していい学校に進んで…
「学歴」でふたりを屈服させる道を選んだ…。
推薦入試で「いい学校」への合格が決まると妹は…
「お兄ちゃん!友達にお兄ちゃんのコト自慢していい?」
だってさ…。
「お兄ちゃん」…?
今までは「オイオマエッ」だったのに…。
まあまあまあ…。
妹の「物の考え方」に言いたいことは山ほどあれど…。
以降妹との関係は至極良好となりました。
妹は僕に…「自慢の兄」になって欲しかったんだなあと…。
本作…「アングスト」の主人公Kは…非合法な方法で
人から認められ…母親と妹の尊敬を得ようとした…。
僕は合法的に母親と妹の尊敬を得ようとした…。
「方法論」の違いこそあれ…
「K」とは即ち「僕のコト」であり…
映画にはね…「コレ僕の話!」
と思える瞬間が絶対に必要なのだよ…
コオロギくん…。
「K」が言うところの「完璧な犯罪計画」とは
「行き当たりばったり」「支離滅裂」と同義であり…
「一体ッオマエはッ何がしたいのだッ」
と画面に向かって絶叫するコト多数。
「K」に「コロンボ」の犯人の様な計画性を求めてはダメ。
実行可能な計画が立てられない「困ったちゃん」観察映画。
初回版限定ブックレットを読むと…
主演女優の
「今まで本作を観て…」
「『まあまあだな』『いまいちだな』といった反応は無く…」
「『大好き』か『大嫌い』かの2択」
との証言に…「K」の支離滅裂な行動に「激しい共感」を覚えるか…
「激しい嫌悪」を覚えるかの二択なのだろうと思う…。
前者は「僕の感想」であり…
後者は「かつての妹の僕を見る目」が「圧倒的嫌悪」が…
「激しい嫌悪」と化しているのだと思う…。
言い方を変えれば妹が期待する理想の兄を演じられれば
妹は僕に「好意」を示し…
演じられなければ
妹は僕に「嫌悪」を投げつける…。
妹が僕に期待する「ロールプレイ」こそが
「兄らしさ」…ひいては「男らしさ」へと繋がる
「女が男に期待するもの」であり…
「K」は…遂に母親の期待にも妹の期待にも応えられず…
母親や妹の期待する
ロールプレイを演ずるコトが出来なかった場合…
罵倒された挙句衝動殺人に走り…
残りの人生を刑務所で過ごすコトになると言う…
「女が期待する『男らしさ』を発揮出来なかった男の末路」
を演じているのである。
「K」の心を絶えず「不安」が支配するのは…
女が男に期待する「男らしさ」のロールプレイを
演ずるコトが出来なかった場合…
また昔の様に…女から…母親と妹から…
罵倒される日々が戻って来ると言う…
「過去の再現」に…「原初の光景」に…「根源的恐怖」に…
怯えているからなのである…。
この映画ね…邦題は「不安」だけど…
原題は「統合失調症」なんですよ…
男の…
「女の期待するロールプレイを演じられなかったらどうしよう」
と言う「不安」は…「統合失調症」となる程…男の心を蝕んているのです…。