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ブラッド・バード監督の映画「アイアン・ジャイアント」レビュー「怪獣映画の定石を踏まえた完璧な導入!」
米国がソビエトを疑う疑心の象徴であるスプートニクが
衛星軌道上を周回する様を映し場面は一転大嵐の中心へ。
SOSを発し続ける漁船の老船長は流星の落下を目撃し,
次いで暴風雨と雷鳴の中,天を衝く様な巨人の幻影を目撃し意識を失う。
あれはソビエトの新兵器では…。
怪獣映画の定石を踏まえた完璧な導入だ。
鉄人が相手の敵意の大きさに応じて武装し対抗する描写は
寺沢武一先生のコブラの最終兵器,
松本零士先生の古戦場エルアラメインの戦車群を連想させる。
戦争の跡地で砂に埋もれているときが一番「安全」なのだ。
本作は1999年に製作されたオリジナル劇場公開版(86分)と
2016年に製作されたシグニチャー版(90分)とがある。
シグニチャーとは元々「署名」という意味なのだが
シグニチャーエディションとは
Kindleの通常モデルに対する特別モデルという意味で使われている。
シグニチャーエディションのオリジナル版からの変更点は2点あり
まず鉄人の「手」が見ているTV番組が
シリアルのCMから
実在のTVヒーローアニメ「TOMORROW LAND」に差し替わっている。
ブラッド・バード監督は往年のヒーローに敬意を表したかったが
1999年の公開時にはディズニーの許可が下りず,今回漸く許可されたという。
また鉄人が都市ごと破壊する「銃」だった頃の夢,
星ごと破壊する「銃」だった頃の夢,
「鉄人兵団」の一員だった頃の夢が追加されている。
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「コピペ」と言ってしまえば,それ迄なのだが
鉄人が無個性な「量産型兵器」である事をよく表していると思う。
エンドロールも追加分延長。
ブルーレイには両バージョンとも収録されている。
オリジナル版も収録。
ブラッド・バード監督の音声解説は変更箇所のみ新録されている。