見出し画像

VVRオルタナティブレーベル第1回リリース作品…ケヴィン・ヴァン・スティーヴンソン監督の映画「バタフライズ」レビュー「『青春』とは…何ひとつイベントのない日々がダラダラ死ぬまで続くコトを思い知らされる連続と覚えたり…」

2024年7月30日。
信じられん程のインディーズ系ウルトラゴアホラー映画ばかりを
BD-R化して日本国内向けにリリースして来た
ヒロシニコフ代表による世界一小規模で世界一尖った
レーベルVIDEO VIOLENCE REALEASING(VVR)より
以下の告知が電撃的に投下された。

『レーベル活動5周年! 新たな展開ができないかと、
サブレーベルのスタートを準備中。
その名も「VVR ALTERNATIVE」!
略してVVRオルタナ。
ここではホラー映画やクラシックなエクスプロイテーション映画、
はたまた青春映画まで、レーベル愚代表が「良い!」と思った映画を
闊達に扱います。乞うご期待!』

VVR ALTERNATIVE(VVRオルタナティブ)なる
新サブレーベルをVVR内に立ち上げようと言うのである。

「オルタナティブ」とは
「型にハマらない」「既存の概念を打ち壊す」という意味である。

そもそもVVRからして「型にハマらない」「既存の概念を打ち壊す」
ウルトラゴアホラー映画ばかり扱って来たと言うのに…
「VVRオルタナ」で更に既存の概念を打ち壊そうと言うのである。
ジャンルも「ホラー」に限らず
「青春映画」や「クラシックなエクスプロイテーション映画」などを
代表が「良い!」と感じたものを闊達に扱って行くと言う…。

正直な話…「具体的なイメージ」がとんと湧かず…
「青春映画」というキーワードを頼りに…
「酷い酷い酷い地獄の青春映画」を夢想しながら待つこと1ヵ月半。

記念すべき「VVRオルタナ」の第1回リリース映画が
「バタフライズ」であると発表され…
当たり前の話だが「映画」と言うものは
観てみないと何も言えんので
BD-Rを購入して…
つい先ほど「バタフライズ」の視聴を終えたところだ…。

「バタフライズ」と言うのは卒業を間近に控えた高校生の群像劇だ。

「海」以外見所が何にもないカリフォルニアの小さな町で
数人の男子高校生がひとりの家に押しかけ…
テレビゲームをしながら話をしている…。

話題は専らジョシュアというリーダー格の少年が
ガールフレンドのモリガンにフラれた話に終始する…。

モリガン「ワタシ…アンタとセックスしたいんだけど…」
ジョシュア「そう言うコトは結婚してからでないと…」「神の教えでは…」
モリガン「『神の教え』などどうでもいい…」
「ワタシは…い・ま・アンタとセックスがしたいと言っている…」
「ワタシの欲求をアンタが満たせないと言うのなら…」
「アンタとは別れ…『他の誰か』とセックスするしかない…」

こうしてジョシュアはモリガンにフラれた訳だが…
ジョシュアはモリガンに「恥をかかされた」と憤り…
「モリガンをブッ殺す」と息巻いている…。
小学5年生の頃からの付き合いの友人達は
「そうだそうだ」
「モリガンをブッ殺そうぜ!」
「どうやってモリガンをブッ殺そうか?」
と盛り上がっている…。

僕の中のプロシュート兄貴が…
彼等に説教を始める…

おいオメー等…
さっきからうるせーぞ
「ブッ殺す」「ブッ殺す」ってよォォォ~
どういうつもりだオメー等…
そんな弱虫の使う言葉をよォォォ~

「ブッ殺す」…
そんな言葉は使う必要がねーんだ…
何故なら…
その言葉を頭の中に思い浮かべたときには!
実際に相手を殺っちまって…
もう既に「終わってる」からだッ

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!
そのときスデに行動は終わってるんだッ!

僕の中で彼等は…
『そこら辺のナンパ道路(ストリート)や仲良しクラブで』
『「ブッ殺す」「ブッ殺す」って大口叩いて』
『仲間と心を慰め合ってる様な負け犬ども』
に…大確定した…。

『彼等』はッ!
『プロシュート』はおろか…
『ペッシ』にすらなれねえ…
負け犬どもの集団なんだッ!

この若ハゲ(ジョシュア)が終盤官憲の尋問を受ける場面で
それはもう平身低頭して国家権力に媚びへつらっていてね…
オマエ…
さっきまで「ブッ殺す」「ブッ殺す」って粋がっていた癖に…

このッ!
マンモーニがッ!

未来永劫プロシュート兄貴に蹴られ続ければいいと思いました…。

この…「バタフライズ」に登場する高校生たちは…

継父との折り合いが悪いとか…
宗教上の理由でセックスを拒んで彼女に見限られたとか…
死んだ兄に責められる幻覚に苦しんでるとか…
母親が自殺したとか…
トルコ人なのに
「テロリストのアフガニスタンのニガー」
って仇名を付けられて
「戦争反対!」と
体育会系に殴られ続けるとか…。

「個人的な悩み」に追い詰められ…
圧し潰されそうになってる少年少女達であって…

映画の題名が「バタフライズ」なのに…
未来永劫変態(メタモルフォーゼ)出来ない…
誘蛾灯に集まる訳の分からぬ虫の集団であり…

何ひとつままならぬ人生に於いて…
常に真っ白な予定表に…
唯一二重丸が付いてるのが「パーティの夜」であり…
映画みたいに…
「Tonight is the night」と…
張り切って「ハレの日」を期待しても…
彼等の人生には…「ハレの日」が来る予定がなく…。
「パッとした事」が何ひとつ起こらず…
その彼等の…「何にもイベントがない人生」は…未だ始まったばかりで…
起伏の全くない道を…トボトボ死ぬまで歩き…
未来永劫この町から出られない運命だけが大確定しているのだ…。

面白いのはね。

彼等は時折…「こっち」に向かって話しかけて来るのよ。
「『オマエ(=僕)』が『何でもない人間』だってのは鏡見りゃ分かるだろ?」
みたいに。

ホントにね。

夜中にひとりで映画観てて…
映画の「中の世界」から話しかけられると
ドキッとするね…
僕も…一生町から出られない…
『何でもない人間』仲間なんだよ…。

彼等は…「ブッ殺す」「ブッ殺す」と…仲間内で心を慰め合って…
未来永劫「行動」を起こせない…「負け犬どもの集まり」であり…
ソレが…決して蝶(バタフライズ)になれない…
決してプリキュアにメタモルフォーゼ出来ない…
決して小宇宙を燃やすコトの出来ない…
決して「キラキラした何か」が訪れない…
「何にもない人生」がダラダラと死ぬまで続き…
「自殺」して逃げるコトも命の炎を燃やすコトすら出来ない…
そんな…「詰まらない人生」が
永劫に続くコトのみが約束されているのだ…。

士官候補生のリチャード・ギアに絡んで…
腕を折られるだけの人生…
ソレだって…「主役」と絡める分…
「シアワセ」な部類に入るのだ…。

未来永劫…決して主役になれず…
「町人A」としか認識されない木石同然の脇役人生が…
彼等に許された「青春」だと言うのである…。

じっ…「地獄」だって…
もう少し何かこう…「起伏」ってもんがあるぞ…。

いやあ…「VVRオルタナ」が提示する「青春」とは…
斯くも過酷で…斯くも全く「何もない」…
ただ『虚無』だけが…前途に無限に広がっているのかよう…

映画の最後で…死にたがりの少女の腹が裂けて蝶(バタフライズ)が飛び立つ…
彼女にあるのはただ蝶に成り得る「可能性」…「未来」だけであり…。
そんな…ありもしない「可能性」に縋らねば生きて行けぬとは…
「希望」と言うのは…
重たい石を奴隷に運ばせる為だけの方便に思えて来るのである…。

何故なら…オマエに…何かしらのイベントが発生する予定は…
「神の予定表」の…何処を探しても無いからである…。
オマエの人生には…何ひとつ「予定」が無いのだ…。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集