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フィル・スティーヴンス監督の映画「フラワーズ」3部作連続鑑賞レビュー「フィル・スティーヴンス…オマエに生と死を超越したサトリの境地に到達するコトは…未来永劫絶対に不可能であると断言するッ!」

僕は今まで…
「ラング」「フラワーズ01」「同 02」を個別に鑑賞してきたが
3部作であるのに「通し」で鑑賞したことはなかった。
コレは…「ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間」「同 二つの塔」
「同 王の帰還」を「通し」で観たことないのと
同程度の手落ちに思えて来た。

ソコで今回初めて…
「ラング」「フラワーズ01」「同 02」を
連続鑑賞した次第である。
ハテサテ…如何なるレビューとなりますことやら…。

数え切れない程の生と死を見詰めて来た外科医が
生と死の隘路に迷い込み流離う(さすらう)。
外科医が求めるのは東洋世界が言うところの「サトリ」であり
生と死を見詰め続けて来たオレなら
容易に到達出来る筈との自負と自信があった。
なれど「答え」も「閃き」も「サトリ」も訪れぬまま
外科医は
「LOST=誰もオレの事を分かってくれない…オレは心身ともにボロボロだ…」と書かれたボール紙を首からぶら下げて
ホームレスとして下水道の中で失意のどん底に沈む。
(「ラング」完)

次に男は死体を繋ぎ合わせて
「自分の記憶」を移植した6人の女の不完全な人造人間を作り上げ
6人の人間の出来損ないに腐肉の隘路の迷宮=巨大な女体の胎内を彷徨わせ,
「オギャア」と生まれ変わらせ自分が啓けなかったサトリを啓かせ
「サトリの代行」を託す。

なれど6人の出来損ないは
自分達が人間の出来損ないだと!
自分達が人間の形骸だと!
自分達が継ぎ接ぎだらけの人造人間だと!
自分達が既に死んでいると!
死んでいる人間は決して生まれ変われないと!
自分達を犯して殺した男に生きる事を強要されている
花(フラワーズ)は花でも生命のない造花だと!
自我に目覚めて自分達のカラダを裂いて
自らの意思でかりそめの生命活動を停止させて果てて行く…。
(「フラワーズ01」完)

「フラワーズ01」を久しぶりに観たけど…。
皐月臨さんによるジャケットデザイン…。
なんてバカなんだ僕は…。
アレはワタだったんだ…。
ハラの綿(ワタ)の零れた肉人形だったんだ…。
僕は出来損ないの肉人形を見てたのか…。
誤読にも…程があるッ!

ワタシ ポンコツ ニクニンギョウ

次に次に男は人が苦しんで死んで行く様を映した記録と共に自殺して
人の死を無限に再生(リプレイ)する
スタンド能力「ムーディー・ブルース・レクイエム」を暴走させて
「永遠」の中に逃げ込もうとする。

なれど…レクイエム能力の発動の副産物として無限に殺される様を
無限に再生(リプレイ)され続けることによって
生きてもいなければ死んでもいない
チェシャ猫の如き女…「ミドリ」というイレギュラーが発生し…。
ミドリは「死ぬ」という真実に到達する為に
レクイエム能力発動の結果生じた「形骸の迷宮」内を探索し…。
レクイエム能力発生源の男の死体を焼却し…レクイエム能力は消失し…。
「永遠」もまた消失し
ミドリは「死ぬ」という真実に到達する…かに見えたが…。

男…フィル・スティーヴンスは銃を乱射して悪あがきし…。
「死ぬ」という真実に到達するのを再三再四卓袱台返しされた
ミドリは激昂し…。

ミドリ「無駄無駄無駄無駄無駄ムダァァァァァァーッ!」
フィル「ヤッダーバァァァーッ!」

と8頁ぶっ通しでフィルを焼き続け…。
遂に「フラワーズ」3部作はミドリによって強制終了させられ…
フィルは…少なくとも「安心」なんてないところで
未来永劫業火で焼かれ続けるという「真実」に到達する。

ミドリ「『天国』とか『地獄』とかがあるのかどーかは知らんが…」
「念の為に書いといてやるよ…」

『地獄へ行く』

バァァァーン!
(「フラワーズ02」完)

「ミドリですぅ~」

何故フィルがサトリを啓けなったのか…?
その「答え」は「ラング」の中にあった…。

フィルが自分の血をインクにして
自由自在にカンバスに書き殴った絵の数々。

フィルは描いた絵の裏面に逐一
「PS(=フィル・スティーヴンス)」と署名していたのだ。

この無造作に書き殴った絵の数々を描いたのは!
他の誰でもないこのオレであり!
このフィル・スティーヴンスなのだと!
オレは…LOST(誰も分かってくれない心身共にボロボロの)
状態からの脱却を要求し!
天下万民全てが「フィル・スティーヴンス」の名を
未来永劫記念し銘記することを望んだが故に!
フィル・スティーヴンスが「我」を捨て去るコトが!
どうしても出来なかったが故に!
サトリを啓けなかったのだ…!

フィル・スティーヴンスがサトリを啓くには!
「オレはフィル・スティーヴンスなんだッ!」
という思いを真っ先に捨て去る必要があったが…。

この素晴らしい「フラワーズ」世界を構築した
世にも類稀なる創造主の名は!
「フィル・スティーヴンス」なんだッ!
という思いは…消し去れる筈など無く…。

オマエの様な「オレがオレが」の存在に!
生と死を超越したサトリの境地など永劫に無縁であり!
自分が骨の髄まで「俗物」であると認めるコトが
オマエにとっての「救い」なのだと愚考する次第である。

フィル・スティーヴンス…キミは…全ての人間がそうである様に
生と死の隘路に迷い込んで
もがき苦しんでいるときに実にいい創作をする…。
これからももがき苦しみながらいい創作をしてくれよ…。

ソレが…キミにとってもキミの作品を待っている
僕達にとっても一番いい…。
サトリなんか啓かなくたっていいんだよ…。
これまでもそうだった様に
これからも骨の髄まで俗物として生きていけばいい…。
「特別」になんかならなくたっていいよ…。

キミは…自分のコトを…
「誰もオレのコトを分かってくれない」
と言うけど…そんなコトないよフィル…。
そんなコトはない…。

少なくとも僕は…。
キミのコトをよおく分かってる…。
「メンドくさいやっちゃな!」ってね!

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