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クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの「オオカミの家」レビュー「『オオカミの家』よりも…『緑のおばさん』の方が…100万倍酷い酷い酷い地獄を…描いてるよ…『上級者』の挑戦を待つ…」

1973年9月11日南米チリで軍事クーデターが勃発し選挙によって選ばれた
現行社会主義政権「人民連合」は転覆させられ…。
サルバドール・アジェンデ大統領が倒されピノチェトによる
軍事独裁政権(1973年-1990年)が樹立する模様が
映画「サンチャゴに雨が降る」で些か以上にセンチメンタルと言っても
過言ではない筆致で国民の主権が侵害され…。
労働歌を歌った男が軍隊に虐殺される模様が描写されている。

チリ国民に社会主義革命の為に立ち上がろうと
呼びかける歌を歌ったら虐殺される…。
こうした政情で健全な批判精神など発達する筈もなく…。
先に紹介した「サンチャゴに雨が降る」の中でフランス特派員のカルベは
チリの軍事政権をナチスドイツ同様のファシスト政権だと吐き捨てた。

カルベがナチスを持ち出したのには
彼がナチスドイツ占領下のフランスを知る
フランス人である以外にも理由がある。

チリのドイツ人パウル・シェーファーによるドイツ人共同体(コミューン)「コロニア・ディグニダ」はピノチェト独裁政権と結託し
暴虐の限りを尽くした。

コロニア・ディグニダは表向きはキリスト教の元で人道や博愛を謳う
牧歌的な生活共同体だが…その実態は教祖シェーファーが君臨する
独裁国家チリ内部のもうひとつの独裁国家であり
ピノチェト反対派の拷問や処刑の場所として
コロニアを使わせていたと言う。
コロニアでの教義や生活に疑問を感じ信者が脱走しても
チリの官憲がコレを捕縛し
コロニアに連れ戻すコトに協力したと言う。
ピノチェトとシェーファーの「蜜月」を
本作ではズバリ「コロニアの蜜」と表現している。

コロニアはシェーファーが2005年に逮捕されるまで続き…
「コロニア・ディグニダ」は1980年生まれのチリのふたりの若者…
クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャに霊感を与え…

「もし自分達が『コロニア・ディグニダ』のプロパガンダ映像を
制作したとするなら…ソレは如何なるものになるのだろうか…?」

との発想の元に…「Das Wolfhaus」(オオカミの家)と題された
ドイツ語による本作の脚本の原型が完成する。
勿論ナチスドイツの総統大本営「狼の巣」(Wolfsschanze)が
念頭にあると考えられ…ピノチェト独裁政権と結託した
ファシストの狼たちの「家」とは…
一体如何なるものであったのかを描こうと言うのである。

しかしながらモーションストップアニメーション「オオカミの家」は
コドモ向けの童話の体で語り始められる…。

極めて閉鎖的なコミューン「コロニア」で命令されるのが嫌になって
3匹の子豚を持ち逃げして脱走した少女マリアが
チリの無人の民家に隠れ住んで子豚を自分の子の様に育てる話…。

しかし「不安」がマリアの心中に黒雲の様に広がって行く…
「誰からも命令されない日々」
「自由気ままな日々」
がかえって彼女を不安にし…子豚の「アナ」と「ペドロ」が親である自分に反抗してグレるのではないか…自分を縛り上げて食う気なのではないか…
「コロニア」の日々が懐かしい…
命令に従っていれば何も考えずに済んだ日々が…。
「不安」がマリアの心を蝕み…
「アナ」が体中の穴と言う穴から血を噴出させ…
「ペドロ」の体に火がついて燃え上がる幻視に苦しみ始める…
こんなに苦しいのなら
こんなに辛いのなら
「自由」なんて要らない。
ワタシは「オオカミの家」に戻って…
誰かの命令に従うだけの方が…
余程心安らかな日々を送れるのだ…。

「僕達が映画を作ると」
「何故かホラーになってしまうんだ」

と両監督は語る。

「不安」こそがありとあらゆるホラー映画の力の根源であり…
その「不安」を映画にしてるのだから
その映画は当然ホラーとなるのだ。

実を言えばな。

僕はこの映画を2日前まで何も知らなかった。
ある方のnoteの映画レビューを拝読して僕は…死ぬ程驚いた…。

その方が「最近買った円盤」として4種類の円盤を挙げられていた…
1.血のバレンタイン

2.ムカデ人間BD-BOX

3.ノクタ

なあ。

こんなコトってあるかい?

その方が挙げられた4本の映画のうち3本が…
僕が大好きな映画だったんだよ…。

そりゃあ…「血のバレンタイン」は長らくアンカット版の発売が望まれた
スラッシャー映画の円盤故に購入するのは「分かる」。

だが「ムカデ」BOXを「2」をカラーで観たいが故に購入し…
「ノクタ」の国内版の存在を知っているのは「分からない」。

「ムカデ」や「ノクタ」の如き
糞尿塗れの映画の円盤を買う人間が
僕の他にいようとは…。

そしてその方が挙げられてた「最近買った円盤」の最後のひとつが…
「オオカミの家」だったんだよ…。
僕は脊髄反射でAmazonで投げ売りされてた
「オオカミの家」をカートに突っ込んで…。
今こうやって恐怖に震えながら観ているってワケだ…。

全く…こんな理由で…神のお告げか何かで…円盤を買ったのは初めてだよ…。
でも…動物的直感に従って「オオカミの家」の円盤を買って正解だった…。

本円盤には「魔女と恋人」という短篇映画が収録されている…。

「魔女」…通称「緑のおばさん」

本短篇映画は…
この国にこんなに地震が多いのも…
地震のせいで地獄の門が開いて彼岸から死人が帰って来るのも…
この国がこんなに貧しいのも…
この国に未来が存在しないのも…
この国が地獄なのも…
この国がいつまでもゴミ溜めなのも…
「『xxx・xxxx』(政治家の実名)のせいだッ」
とこの…緑のおばさんが吠えながら「ひとりえっち」に励むと言う…
全宇宙全世界全人類にとって永遠に未来永劫に
「早過ぎる」先進的映像が20分も続く拷問動画である。

緑のおばさん
「どれ…ワタシのあられもない姿で…オマエ達を興奮させてやるとするか」
「ワタシのコトを…「恋人」と思って励んでええんやで…?」

イヤァァァァァ
そのお気持ちだけで十分です
未来永劫お腹一杯です
伏してお願い申し上げ奉りますので加減して下さい
堪忍して下さいっ

ハッキリ言って…「オオカミの家」よりも…
「緑のおばさん」の方が…100万倍酷い酷い酷い地獄を描いてるよ…。

「上級者」の挑戦を待つが…
例え誰も挑戦しなくとも…僕はキミ達を責めたりはしないよ…。


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