ゆるエンタメ劇『悪口の弾丸』
これは、とある福岡のBARで行われた交流しながらゆる〜い空間でエンタメを楽しもう!というイベントで披露したオリジナル声劇の脚本です!
同じビルのBARで働く、ぴょんぴょん飛び跳ねるうさぎみたいな女の子と
別の交流会で出逢った、不思議な雰囲気を纏う女の子
彼女達のキャラクター性と実体験のエピソードを抽出したオリジナル物語を創り、
実際にお客様の前で一緒に演じてみました。
物語の世界、キャラクターに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
ここから、台本。⏬
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震えるぴょん(ラビット)と
眠りこくるリツカ(ファストサマー)
真っ暗ななか、ムーランが動く。
震えるぴょんの手を取り、大丈夫だよと言い聞かせ、毛皮を被せてあげる。
眠るリツカの頭を撫でて起こしてあげて、さあ行こうと手を取る。
ムーラン、座る。
明転。
会議室のような場所で、リツカとぴょんは互いと目が合わない斜めの方を向きながら座る。
険悪な雰囲気の2人を心配したように、リツカとぴょんの顔を交互に覗き込むムーラン。2人の間、少し後ろに座っている。
リツカ「ロシアンルーレット?」
ぴょん「そ。拳銃に弾を1つだけ装填して、交互に自分の頭に銃口を向けて引き金を引く。運が悪かった方が死ぬ。カンタンなゲームだよ」
リツカ「それは知ってる。舐めないで」
ぴょん「へぇ、意外。臆病者の甘ちゃんでも、こんな危険な遊び知ってんだ」
リツカ「で?」
ぴょん「それをいまからやろうっつってんの。アンタと、アタシで」
リツカ「べつに、いいけど」
ムーラン「ちょいちょいちょいちょい!どしたのどしたの、なんだってそんなことになってんのよ、ファストサマーにラビットちゃあん!」
リツカ、ぴょん、ムーランの方を向く。
ムーラン「今日は俺たち、白色のカラーギャング『スモークテール』の集会だろう!?」
リツカ「うん。しゅうかい。ひさびさ」
ムーラン「これから俺たちが、このカラーギャングに溢れてカラフルになっちまった街を、白一色に──白紙に戻してやろうって言うのにさぁ!なんだって仲間割れなんかしちゃってんのよ!」
ぴょん「せんせー。まずわたしはこいつを仲間だと認めてませーん」
ムーラン「先生じゃない!統領ね、統領!学校じゃないんだから!」
リツカ「だれかを仲間外れにしようとする人の方こそ、本当の仲間じゃないと思います。せんせい」
ムーラン「だから先生じゃないっての!」
ぴょん「あん?お前いまなんつったよ、文句あんならステゴロで勝負してみろやコラァ!」
リツカ「はぁ。はいはい、またそうやって暴力圧力喧嘩腰。これだから脳筋は…いまの時代、武力でギャング稼業はできないって、いい加減理解できない?」
ぴょん「だったらそうやって、メソメソメソメソしてたら敵さんは勝手に潰れてくれんのかよ、あぁ!?」
ムーラン「はいストーップ!なんでかなぁ、なんで統領の言うこと聞いてくれないのかなぁ!?」
リツカ・ぴょん「「先生は黙ってて」」
ムーラン「だから先生じゃ…もういいよこの際。なんでかなぁ、なんで先生の言うこと聞いてくんないのかなぁ!? いいかい、何度も言うけど俺たちは仲間なんだよ、ナ・カ・マ! これから俺たちが、カラーギャングに溢れてカラフルになっちまった街を白一色に──白紙に戻そうって言うのにさぁ!」
ぴょん「つーけどよぉ、先生。アタシはその、カラーギャング業界ってのがイマイチよくわかってないんだけどさあ」
ムーラン「え?わかってなかったの?わかってないのに仲間になったの?」
リツカ「カラーギャング。ひとつの"色"に"誇り"を宿して旗に掲げるチーマー集団。チームメイトは身にその同じ一色の色を纏って、陣地──縄張りを拡げ合うの」
ムーラン「解説ありがとう。わかったかな、ラビットちゃん? あ、ちょっと難しかったかな」
ぴょん「…ふうん。要は、スプラトゥーンみたいなもんか」
ムーラン「うん、まあ。概ねその解釈で合ってるよ」
リツカ「バカ」
ぴょん「お前いまボソッとなんつったコラァ!」
ムーラン「ラビットちゃあん!ファストサマーも煽るのやめて!」
リツカ「いまはその抗争が激化してて、どのチームが街のトップに君臨するか読めない、まさに群雄割拠の状態ってわけ。だから先生は、この『スモークテール』で覇権を取ろうと、躍起になってる。」
ムーラン「そういうこと。さすがファストサマー、物分かりがいいね」
ぴょん「アタシがまるで物分かりの悪いバカみたいじゃねえかよ」
ムーラン「ラビットちゃんはなにもわからなくていいんだよ。考えなくてもいい。ただその豪胆な度胸で、こう、ガツンといっちゃってよ!」
ぴょん「…おう!やってやるぜ!」
リツカ「まあ、わたしは抗争にはさほど興味がないんだけど。」
ムーラン「え?興味なかったの?興味ないのに、仲間になったの?」
ぴょん「だったらいますぐにでも抜けてもらっていいんだぜ、いっつも眠そうにしやがってよぉ、お姫様が」
リツカ「あなたこそ、どうせ考える頭もないんだからこんな集会なんて抜けて、敵地でぴょんぴょん跳ね回ってくればいいじゃない。毛皮にされないことを祈ってるわ」
ムーラン「もう!仲良くしてよ頼むからぁ!」
ぴょん「ぷっちーん!だったらロシアンルーレットで決着じゃこらあ!」
ムーラン「だからなんでそうなるの!」
リツカ「上等よ」
ムーラン「わかった!じゃあ、やろうロシアンルーレット!その代わり、実弾はなしだ!2人はスモークテールの貴重な人材、どちらも失うわけにはいかないからね! いいね!」
ぴょん「うーす」
リツカ「うん」
ムーラン「わかったら『はい』は!?」
ぴょん・リツカ「「はーい」」
ムーラン「よし!…先生っぽいなこの感じ」
ぴょん「でもよぉ、拳銃を使わないなら、どうやってやんだよ?」
ムーラン「言葉でやろう」
リツカ「ことば?」
ムーラン「そう。いいかい?よく見てて。(銃口を頭に向けて)喧嘩が弱い。頭が悪い。根が暗い。お笑いセンスがない。お金持ってない。」
リツカ「せ、先生?」
ムーラン「部下が言うことを聞いてくれないくらい、人望がない。……うっ!(倒れる)」
ぴょん「先生!?」
ムーラン「とまあ、こんな感じで。それぞれ六発──6言葉ずつ、自分自身に、"悪口の弾丸"を撃ち込むんだ」
ぴょん「悪口の…」
リツカ「弾丸…」
ムーラン「それで、図星の悪口を先に決め込んでしまった方が──ズダンッ⭐️」
ぴょん「……はっ、なんだそのゲーム」
リツカ「ルールに穴がありすぎて…というかそもそも、破綻してます」
ムーラン「まあ、いいからやってみろって。これもスモークテールの、お前たちの為だ。いがみあってばっかいても始まらない。まずはお互いを、知るところから始めよう。白黒、つけようぜ。あ、ちなみに僕の言葉の拳銃、本物は最後の1発だけだからね?」
ぴょん「でもよ、こんなんさぁ」
リツカ「……(指で銃を作って、頭につける)
言い訳ばっかで、うじうじ、いじいじしてる」
ぴょん「あん?」
リツカ「ふぅ、せーふ。わたしは無事。次は、あなたの番よ?ラビット」
ぴょん「てめぇいまの、もしかしてアタシのことか…?」
リツカ「ほら、銃。」
ぴょん「いいぜ、やってやんよ。(指で銃を作って、頭につける)嫌味ばっかでネチっこいなぁ!」
リツカ「(指銃を頭に)乱暴で粗雑」
ぴょん「(指銃を頭に)根暗で不気味」
リツカ「(指銃を頭に)無神経で図太い」
ぴょん「(指銃を頭に)神経質で猫被り」
リツカ「(指銃を頭に)動物虐待経験がある」
ぴょん「(指銃を頭に)指定難病持ちの罪人」
リツカ「(指銃を頭に)思考が読み易すぎ」
ぴょん「(指銃を頭に)なに考えてっかわかんねぇ!」
ムーラン「お互いのこと、よく理解してるじゃないか。やっぱり"君たちは"仲間だよ。さぁ、最後の一発だよ」
リツカ、ぴょん、指銃を一度下ろして。
リツカ「わたしはたしかに、抗争とか、トップとか、そんなものに興味はないけど」
ぴょん「アタシはやっぱり、業界とか作戦とか、そんなんはよくわかんねぇけどよ」
リツカ、ぴょん、立ち上がる。
リツカ「(指銃を頭に)わたしを助けてくれた人にはカンタンに着いていっちゃうくらい、惚れっぽい」
ぴょん「(指銃を頭に)アタシを救ってくれたヤツにはどこまでも付いてっちまうくらい、惚れっぽい」
リツカ、ぴょん、ムーランを一瞥してカウンター側へ移動。
本音は隠して逃げる。ふわふわと、煙のように。
ムーラン「白色のカラーギャング『スモークテール』……直訳して、"煙の尻尾"。都合の悪いことや恥ずかしいことやよくわからないものは、煙に巻いて尻尾を巻いて、退散してうやむやの白紙にもどしちゃうのが、俺たち流ってわけ。」
リツカ「眠りっぱなしだったわたしを、起こしてくれて。」
ぴょん「ウサギの毛皮に覆われてぶるってたアタシを、叩き起こしてくれて。」
ムーラン「どんなに意地を張っても、どれだけ心を隠しても。言葉を吐き続けていたら、いつかは本音がポロッと溢れてしまうもの」
リツカ「わたしたちをこのチームに入れてくれたお返しは」
ぴょん「きっと返すから」
リツカ・ぴょん「「この、真っ白な景色で」」
ムーラン、白いリモコンを取り出す。
リモコンをリツカとぴょんの方に向けて、操作しながら、怪しげな雰囲気で。
ムーラン「そこに漬け込むのさ、僕たちギャングってやつはね。油断しちゃいけないぜ、根っからの真っ白な人間なんてのは、この世に居やしないんだからさぁ──」
照明、消える。
いつも通りの調子のムーランの声が響く。
2人を追いかけるように、その場を去る。
ムーラン「あ!ていうか集会途中なのに2人とも帰っちゃったじゃん!ちょっともぉ、ファストサマー、ぴょんちゃあ〜ん!」
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彼女たちの物語は、まだまだ続きます。
引き続き、興味を持ってくれたら幸いです!
to be continue…