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父の自死後に癒やされたこともあった

これまでは「父の首吊り自殺に伴い辛かったこと」をメインに書いてきましたが、心温まる経験がなかったわけではないんです。

ちなみに、書いてこなかった嫌な事柄の中には、この2点もあったことを事前に追記しておきます。

①昔から管理費を着服していた管理人(自主管理のマンションなので、住人の老人男性)から、売買成立後しばらくして、

「あなたのお父さんが新しくしていた廊下の窓ガラスを古いバージョンに戻してね。そのために10万円徴収します」

という電話がきた。
売買契約は「現状渡しで良い(だから安く売った)」としていたのにも関わらず。

どこまでもお金に汚い管理人だなと思ったものの、一応、弁護士さんや不動産やさんに確認。

「払う必要はない」とのことだったので、「払わなくて大丈夫みたいです♪」とだけ留守電に入れ、後は無視することに。

②父がうつ病になった原因は、会社の資金繰りだったのですが、そうなったのは、メインバンクの●田銀行の貸し渋りでした。
(父が口頭で私にも言っていたのと、日記のような終末ノートに逐一書き連ねていました)

なんでも課長が新しく赴任してきて、父に「もうご年配だから経営無理なのでは?」とバカにしたようなことを言ったのだそうです。

かなり悔しそうでした。

数年前の元気を失うきっかけになった交通事故でも、ガラの悪いチンピラのような男性に「じじいだからそんな運転なんだろう」と怒鳴られたと聞いたので、それまでハキハキと判断能力に自信があった父は、この時期に年齢のことを言われるのは、プライドが許さなかったのかもしれません。

私は経営者ではなく、銀行から借り入れをしたこともなかった身。
この貸し渋りや、返済を急に求められたことが、父の会社をどれほど窮地に立たせたのかは、当時はよくわかりませんでした。

父の死後、急に来訪した銀行員二人は、「父が死んで・・・」と告げると、一応ビックリしていました。
「自分が死に追いやった」と、その課長さんが思ったのか、「バカな老人だ」と感じたのかは全然表情からは読み取れませんでした。

一言で表すと【慇懃無礼】というか、差し障りがないようなリアクションだった印象でした。

その後、私が銀行の借り入れの対応に入るのですが、この【慇懃無礼】な印象はずっと変わらず、かと言って、私が恨んでいいのかなんなのかもよくわからず、ぼーっとこの二人とは応対していました。

前回書いた葬儀屋の「人の心を忘れるビジネス」と同じで、金貸しも人の心的なやつはどっかに置いていかないとできない仕事なのかなぁなんて、ぼんやり考えながら、二人と話していました。

この二人に関しては、顔ものっぺらぼうで、全然記憶にないのです。
何度も会ったはずなんですけどね😶

とりあえず、この2点も備忘録として書いておきます。

テーマの「癒やされた事柄」ですが、上記の②に関係があります。

残された負債を生命保険(少額過ぎて泣いた😶)やらなんやらで返していっていたのですが、大きいものが銀行の借り入れで、どうしようかな・・・と後に残して置いてました。

会社の会計士さんに「相続放棄」なんてテもあるよ☆と聞き、それを詳しく調べ、もうそうしようかな〜って思考がストップしていたくらいです。

私の定期預金は父が残さず使い0円、あったはずの土地も手放していました。
マンションの買い手がまだ見つからない時期は、「あとどのくらい借金あるんだろう?会社の家賃も毎月30万円かかるし・・・」とドキドキでした。

相続放棄を選ぶと、父の財産は受け取れない分、銀行の負債や、家や会社の処分を丸投げできるのです(片付けも含めて)。
本気で放棄を考えました。

もう嫌すぎて・・・・。
当時は雇われて仕事していたのですが、父の身辺整理にいつまでかかるのか不明過ぎて、出勤できないこともストレスでした。

頭が働かなかったんです。
ショックや不安で、全て投げ出して、元の単調な職場での日々に戻りたかった。

そんな中、父が数十年テナントとして借りていた会社のビルのオーナーさんや、職員さん、税理士さんが助けてくれました。

多額のお香典をいただいてお礼や、会社の整理に伺ったところ、皆さんが良くしてくれたのです。

社交辞令じゃなくて、本当に気遣ってくれているのがわかり、慰めの言葉をいただいたわけでもないのに、一緒に片付けてくれたり、そばにいてくれた時間で、泣いてしまったことが何度かありました。

父が死んでから、変な人達にたくさん会って疲弊していたからか、

「あ、これは私が馴染みのある世界線の人達だ。そうだよね、普通の感覚の方も父の周りにはいたんだよね」

とほっとしたんです。

家賃は片付け終了まで止めてくれて、大きな業務用の機材や重要書類などは倉庫で無期限で預かってくれるとのこと。

自宅の遺品整理だけでも25万円の見積もりがきていたので、正直すごく安堵しました。

また、「銀行のこと困ってない?」と、そちらの会社の税理士さんがお声掛けくださり、「●田銀行はうちのメインバンクだから、一緒に同席して話を聞いてあげる」と間に入ってくれました。

ビルオーナーさんの応接室で対面してくれて、「うちとの取引もあるからな?」的な圧をかけてくれたんです。

どういう対応をしたら良いのかも教えてくれました。
右も左もわからない小娘には、ほんとに守り神のように見えました。

銀行の件の二人も、取引先の役職のある男性が矢面に立ってくるとなると、私一人で応対するよりも、私への当たりが全然違ったことでしょう。
そんなに強い要求や失礼な態度をされることがなく、終始はれものに触るような扱いで終わりました。

オーナービルの皆さんには、長年オフィスを構えていた父への敬意と、銀行の父への対応に対する怒りを感じ、言い表せないくらい、とても嬉しかった。

暗闇の中で、唯一光を見せてもらえた出来事でした。

税理士さんには、お時間を割いていただいたお礼に、心ばかりのものを持参したことがあったのですが、ぶっきらぼうにその税理士さんには「いらない!ほんとにいらない!」と突っぱねられました。

ちょうどオーナービルの会社が60周年だったのもあり、お花とお菓子をせめてと贈りましたが、それも「お金はあっても困らないんだから、自分に使いなさい!」と叱られました。

さんまさんの番組に出てくる、池田清彦氏みたいなおじさまでした。

当時、父と同じくらいのご年齢だったけれど、今はどうしてらっしゃるのだろう?と、9年経過して今でも頻繁に思い出します。

お元気でいてくださったらいいな。

俺のことやこんな悲しいことは忘れなさい的なことを言われた気がします。
だから、色々終わった後には、全く連絡をしていません。

若そうなのに真っ白な白髪頭の誠実そうな従業員の方も、言葉すくなに色々オフィスの整理を手伝ってくださいました。

若くて可愛らしい女性従業員の方に「あ、もしかしてお嬢さんですか?」と声をかけられ、
「●●さん(父)とはいつも会社の前で通勤時お会いして、こんな話をしてくださってたんですよ〜」なんて話をシェアしてくださったことも。

「話好きの父はさぞかし毎朝嬉しかっただろう」と心がほっこりしました。
オフィスの掃除をしている時に、お菓子を差し入れしてくださいました。

ささやかな思いやりが、あの時は本当に染みました。
ありがとうございました。

その時に痛感しました。

私も悲しい状況の人がいたら、いや、別に悲しそうじゃなくても、親切にしよう。

会った人のこころをほんの少しでも軽くできたり、ちょっとでも笑顔を見せてもらえるようにコミュニケーションしよう、と。

頼まれごとをされたら、できる範囲で誠意を持ってお応えしよう。

人は傷ついた経験があればあるほど優しくなるって、きっと本当ですね。





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むらかみーたん
サポートしてくださるあなたにありったけの感謝を込めて…そのお気持ちにいやされます🥲🙏