読書メモ(お金2.0)

■感想

・久々にこの本を読んだが、今後の社会の方向性が非常に具体的に書かれてある良書だと思った。①全く新しいものが出てきた時には既存の枠組みの延長で考えてはいけない ②より内面性を重視することが重要な社会になる との主張が非常に印象的である。個人的には「人生の意義を見つけなければ」というある種の強迫観念も強くなってきていると感じている。Wantedlyの仲さんの本にもあったが、まずは自分自身の状況を正しく把握することが非常に重要であり、その重要性が今後増していくと確信を持てた。


■作者及び概要

・作者は佐藤航陽。メタップス代表取締役社長。お金を「ツール」として深く理解することで今後の新しい経済を乗りこなし自己実現ができるようとの趣旨で書かれている。今後は資本主義から価値主義(価値を軸として回る社会)へ変わっていくとの主張

■良かったインプットメモ

・現実はおおよそ「お金」「感情」「テクノロジー」の3つの要素が未来の方向性を決めている。影響力はお金が一番強いが3つ揃っていないとうまく機能しないのが現代社会。

・お金1.0とは既存の概念の元、ITを使ってその業務を限界まで効率化していくタイプであり、お金2.0とは枠組み自体を無視して0ベースから再構築すること。

・現代社会システムには富の極端な偏りと極端なつながり(世界恐慌など)の2つの弱点がある。作者が提案する新たな仕組みには①インセンティブ(報酬の明確さ)②時間によって変化し、そのことを参加者全員が知っている③運と実力の両方の要素がある④秩序の可視化(ヒエラルキー)と新陳代謝を促す仕組み⑤コミュニケーション⑥同システムには寿命があり永続的なものではない⑦共同幻想を持てていること(システム寿命が飛躍的に伸びる) が必要である。これは組織においても同様である。

・自然は非常に持続可能的なシステムが整っており、自然に似ているシステムであるがゆえに資本主義はここまで大きくなったと言える。具体的には自発的に秩序が保たれる仕組みがあり、エネルギーが循環し、情報を内部に記憶することでしの秩序を強固なものにするという3点である。逆に社会主義は感情面以外でこの3点を捉えていなく失敗した。

・テクノロジーは変化を糸つの事象として捉える(線で捉える)ことが大切である。今後10年でいうと「分散化」の波が来る。これは近代社会が情報の非対称性を前提とし情報の中央集権化を進めたが、スマホにより個人間で情報をやり取りできるようになり分散化したネットワーク社会になった。分散化が進むと仲介だけでは価値を発揮できず独自に価値を発揮するシステムを作ることが求められる。(例でシェアリングエコノミー。独自に回るシステムを構築している)

・分散化する社会において①トークンエコノミーが発達する。ネットワーク内で完結する経済であるぶん、トークン発行者が利益を享受し代わりに参加者の利益を最大化させる義務を背負う。ポイント型や配布型(金融商品に近い)会員型などがある。一方ビットコインは発行者だけでなく、採掘者も通貨発行益を得られるという点で利益の分散化が進んでいる。

・今後は「自律分散」がテーマになる。全体を統合する中核機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能する仕組みである。インターネットやビットコインがこれに当たりブロックチェーン技術によりこれらが加速される。テクノロジーにより経済そのものの民主化が進んでいく

・価値には①有用性(役に立つか)②内面性(感情的)③社会性 がある。資本主義は有用性のみに特化しており、価値主義は内面性と社会性にも対応しているという点でお金は価値を媒体する1つの手段に過ぎないという考え方が今後世の中に普及していくであろう。これらを実現しうる要素として内面性や社会性の可視化がある(例で投げ銭)。今後はソーシャルキャピタル(社会的ネットワーク)を増やすことが非常に重要である

・一方評価経済にも落とし穴がある。1つ目が注目や関心=価値とはならない点(炎上商法など)、2つ目が注目や関心のために内面性や社会性が損なわれているケースがある点である。

・自分自身で生きる経済を選べるようになる、あらゆるものが満たされた社会だからこそ人生の意義を持つこと自体が非常に価値になる。そして自分自身がそれらを持てるだけでなく、他者へそれらを与えられることが非常に価値である。


■その他メモ

・お金には価値の保存、尺度、交換の3つの役割があり紀元前1600年ぐらいの貝殻が最古と言われている。そこから地位の影響力が強い社会へ、その後お金の影響力が強い社会へと移り変わり現代に至る。価値を運ぶツールだったお金が現代ではお金を生み出すためのものになっている

・ビットコインとは中央に管理者がいなくても成り立つ(中央銀行がいらない)バーチャル状の通過で2009年にできた。一定期間のデータを1つの塊(ブロック)として記録し。それを鎖(チェーン)のように繋げていくことでネットワーク全体に取引履歴を残し、第三者が勝手に改ざんできないようになっている。ビットコインはハイエクの「通貨は市場の原理にさらされるべき」との主張を体現している

・全く新しいものが出てきた時には既存の枠組みの延長で考えてはいけない。

・上位1%の富裕層が全体の富の48%を保有し、上位80%と下位35億人の所得がほぼ同じ。世の中のお金の流通の9割以上は資産経済によるもの(消費ではない)

・現代社会では生物的な欲求よりも社会的な欲求3M(儲けたい、モテたい、認められたい)の方が特に強く、これらを満たすサービスは急速に成長する

・脳は報酬が得られる時だけでなく、得られることが期待できる環境でも快楽物質をだす

・レオナルドダヴィンチは様々な領域で功績を残したがおそらく全ての領域を同質のものとして見ていたのではないか。「私の芸術を理解できるのは数学者だけである」との発言

・リープフロッグ現象;例えば新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、通常の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうこと。 既存の技術を導入する前にさらに新しい技術を導入すること。


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