読書メモ(インダストリー4.0)
■感想
・大学時代に買った本を久々に読んだ。今回のコロナもあり、工場の自動化はさらに進んでいくことが予想されるが、国として産業をどう守るかというもう一段上の動きも同時に活発化していくのではと思った。工場のデジタル化が進むとD2Cはより活発になるんだろうな〜、仲さんの本に書いていた数社のプラットフォーマーとそれに乗っかる多数の小規模集団という姿が前よりも鮮明にイメージできる。
■作者と概要
・作者は尾木蔵人。三菱UFJリサーチ&コンサルティング国際営業部副部長。世界における産業の変化及び取り組みを説明している本。インダストリー4.0の概要及び背景、各国の取り組みと日本がすべきことが記載されている。
■よかったインプットメモ
・インダストリー4.0とは大予示産業革命のこと。ネットワークで情報をつなげ、コンピュータ、人工知能を活用して生産や流通などの自動化を最適なレベルまで引き上げるという試み。インターネットの普及によるIOT化が背景にある。
・インダストリー4.0への国家単位での取り組みはドイツが最初である。2013年に政府、企業、大学や研究所が一体隣邦夫あげてインダストリー4.0の推進に当たる姿勢を明確に打ち出した。その後アメリカで2014年にシリコンバレーを中心にインダストリアル・インターネット・コンソーシアムが設立。現在はドイツ企業も参画をし、世界一体となってインダストリー4.0を進めている。背景にはドイツでは工場やものづくりのデジタル化、スマート化がテーマなのに対して、アメリカでは広く産業自体をスマート化するという構想だったため、アメリカの取り組みの一部分がドイツが取り組みたいことという点で利害が合致したためである。
・スマート工場を実現するためにはサイバー・フィジカル・システムが必要である。これは世界中の工場の情報をデジタルデータに置き換えてコンピュータに情報として吸い上げ人工知能などのITを活用して一番効率的で速い生産を実現するシステムである。ドイツは工場の垂直方向でのデジタル統合を理想としている。工場内がクラウドにより一元管理されている状態を目指している。
・スマート工場が普及するであろう背景には消費者のオーダーメイドが当たり前になる世界が予想されるからである。「マス・カスタマイズ」と呼ばれるように1850年の多品種少量生産から大量生産大量消費時代を得て、再度多品種少量生産に戻っているという事実がある。
・ドイツがインダストリー4.0を急いで勧める理由は3つある。1つ目はインターネットの普及である。IT分野でアメリカの一人勝ちが続く中で、今後ドイツ企業がアメリカIT企業の単なる下請けになってしまい低い収益性の叩き合いに巻き込まれることを防ぎたいとの思惑である。2つ目が生産コストである。資源がない、原発を止めるなど今後エネルギーコストが下がるシナリオが想定されないこと前提に戦う必要があるからである。3つ目が消費者ニーズの多様化である。大量生産大量消費構造が変わる中で、他国が真似できないレベルで工場の生産効率を上げて生産コストを下げる必要があるからである。
・インダストリー4.0には①スマート工場というプロダクト自体の輸出②中小企業支援 という2つの狙いがある。②に関して、リソースが不足する中小企業が自力でできるIT化をできるだけ進めておくことが、大手が水面下で行なっている大規模なIT化の準備が整った段階で花を咲かせるといった構想である。
・アメリカは「コア」と「オープン」をうまく使い分けている。コアとは開発した商品の最も重要なソフトウェア部分である。例えばiphoneはコアとしてブランド、製品デザイン、UI、IOSを置き、たとえ模倣品が流出してもアップルのインターフェースや知的財産部分をライセンスしないと使えない仕組みを作った。オープンリソースに乗るときは「何がコアか」を考えることが重要である。
・日本はセンサー技術や世界シェア50%を超える産業用ロボット技術、光ファイバー技術などのICT技術がある。世界全体で現在ルール作りの段階にあるインダストリー4.0の流れに乗り遅れなければリーダーとなれる可能性は十分にある。そのためにも鎖国(国内のみで取り組む)ではなく、開国(ドイツやアメリカ、中国と協力する)道をとることが懸命である。ルールができてからでは手遅れである。
■その他メモ
・ドイツの中小企業は日本に比べて輸出を行う割合が高い(ドイツ20%、日本3%)中小企業が99%など構造自体は日本と非常に似ている国である。
・ドイツにはフラウンホーファー研究所という非営利団体がある。売り上げに占める政府予算は22%で企業から得られる実績を非常にうまく活用している。産学連携のハブ機能として非常に重要であり、ドイツの理系学生の就職先ランキングでも常にトップ10に入る。
・中国は一人っ子政策の影響もあり、今後世界で最も急速に高齢化が進んでいく。環境汚染と高齢化という課題から「中国製造2025」を掲げ、ドイツとの提携を進めている。
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