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詩:当たり前だと思っていた帰るメール💧当たり前の貴重さに気づくのはそれを失った時💧


「今から帰る」と夫のメール
「疲れたわ~今日のおかず何?」

毎日、判で押したように同じ文面だった
「たまには気の利いたことを書けばええのに」
そんな風にいつも適当にあしらっていた

私の携帯に毎日毎日
同じ文面のメールが溜まっていった
毎日来るのが当たり前だと思っていた
鬱陶しくさえ感じていた

ある日、夫は社員旅行に出かけた
「富士山に行くんや……
遠いな、疲れに行くようなもんや
行って来るわ」
夫はそう言って出かけた

夫が出かけて
夕食の準備をしなくてもいい日
私は羽を伸ばしてのびのびできた
でも、その日は
「早く帰ってきてほしい」
何故かそう思った

「明日になったら帰ってくるのに」
自分でもなぜそう思ったか不思議だった

翌日の夕方、夫は家に帰ってきた
帰ってきたけれど
棺桶に入って帰ってきた
旅行先で亡くなったのだ

通夜、告別式のことは
頭にカスミがかかっていて思い出せない
初七日が終わった頃
私は何気なく自分の携帯メールを見た

受信トレイに夫からの帰るメールが
ぎっしり詰まっていた
9月1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日
メールは8日でパッタリ途切れた

あんなに適当にあしらっていたメール
毎日毎日同じ文面のメール
ずっと毎日来ると思っていた私は
なんて愚かだったのだろう!

同じ文面の夫からのメールが
ものすごく愛おしい
もう一度、送ってきて欲しい
必ず返信するから
すぐに返信するから
お願い!もう一度!

でも、どんなに願っても
夫からの帰るメールが
送られて来ることは
二度となかった




夫が亡くなったすぐ後に書いたエッセイを、15年経った今、詩に書き直しました。少し切なくつらい気分です。

でも、エッセイを詩に書き直して、当たり前の日常を、当たり前だと思っていた自分の愚かさを、改めて痛感しました。人は、当たり前だと思っていることの貴重さを、失って初めて実感するのですね。



心の制限を外し夢を叶える作家&セラピスト★村川久夢


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