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公園を育てることで、市民の力が育つ。

公共空間の活用に注目が集まるようになり、これまであまり使われずに放置されていた公園が、気持ちよい空間へとリニューアルされるケースが増えてきました。芝生を植えたり、全面改修したり、カフェが建てられたり。居心地のよい公園が増えるのはとても良いことです。

と同時に、公園にはもっと大きな可能性があるような気がしています。

気持ちのよい公園を休日のお出かけ先に選ぶ視点は、消費者のもの。来園者が増えたと喜んでみても、消費者目線で行楽地や映画館やショッピングと比較検討した結果、たまたま公園を選び取ってくれただけなのかもしれません。この消費者目線の行き着くところ、来園者がよろこぶ商品やサービスのラインナップをひたすら充実させようというドライブがかからないか、少し心配です。

民間企業も行政も、消費者のニーズをくみ取ろうとして目を光らせているのが今の時代。私たちは、気がつくと誰かの問題解決型サービスを消費するだけの存在になりがちです。公園の未来像としてはいろんなバリエーションがあったとしても、あくまでも基本形としては、需要と供給のせめぎ合いから自由になれるところであってほしいと思います。

東遊園地で活動していて実感したのは、地域のために何かしたいと考える人や企業はまちがいなく増えている、ということ。そして、地域活動を空間に刻んでいきたいと考える人や企業にとって、公園はそのフィールドになれる、ということ。公園のもっと大きな可能性は、そこにあります。

市民的・社会的な活動のレンジは幅広く、例えば福祉には福祉の、教育には教育の活動フィールドがありますが、空間的にまちを良くしていきたいという考える市民や市民的企業にとって、活動しやすい「場所」はあまりありません。町内会や自治会を通しての活動は地縁的すぎて馴染めない人も多いでしょうし、道路での活動には警察との協議が必要です。大手デベロッパーのように自社でコントロールできる敷地でもない限り、空間的にまちを改善したいという思いは、かなり実現しにくいものなのです。

もちろん公園も勝手にさわれるものではなく、多くの場合、地方自治体の担当部署との協議は避けて通れません。公園を取り巻くステイクホルダーと信頼関係をつくっていくには、それなりのハードルもあるでしょう。

それでも今、公園活用のムードは確実に広がっていて、自治体の担当部署も今後の活用方法を探っています。法制度的にも、先行事例を見ても、「公園でできること」の範囲は広がっているいま、空間的にまちを改善していくためのフィールドとして、公園を活用する好機が到来しているのです。

東遊園地でも、まずは公園を育てることを体験してもらいたくて、公園に本を寄贈する仕組みをつくったり、芝生を植えるプログラムを開催したりと、色々と試してきました。「公園って本当に自分たちで育てられるんだ」という感想を初めて聴いたときの嬉しさは忘れられません。公園もまちも自分たちで育てられるという実感は、まちの他の領域にも波及するはずです。

いま、民間企業の資本やアイデアを公園の活性化に投じていこうという動きも全国で広まっています。今まで行政が担っていた管理や、手薄だった魅力付けやPRをしていくために、民間の運営者を中心にお金が回るしくみはとても重要です。

しかし、だからといって公園運営の全体を「お金がないと回らないしくみ」へと変えていく必要はないと思います。むしろ、市民が公園のために見返りを求めずに貢献していくことは期待していいし、市民が自発的に活動する領域をふさいではいけないと思います。

人は、自分の暮らす環境に手を加え続けて、何百万年も生きてきました。自分の環境をよりよくしようと動き出す人びとにとって、公園はそのステージの第一候補。それを実感する事例が、これからどんどん出てくることを期待しています。

写真  :公園に落書きできるのも、毎夕消してくれる人がいればこそ。

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