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お酒を飲まないという選択

お酒は好きだ。特にサッポロ黒ラベルの缶ビールは、ガツンとくる苦味とコクのある泡がたまらない。缶ビールを開けたときの「プシュッ」という音だけで、クゥ~っとなる。

もうすぐで30歳になる。気づけば、お酒を飲まなくなった。夫が「僕とはなちゃんはソバーキュリアスだね」と言った。
ソバーキュリアスとは我慢して禁酒するのではなく、選択のひとつとしてお酒を飲まないことだそう。あれほどお酒にどっぷり浸っていた20代前半を考えると、ライフスタイルががらりと変わった。

20歳になるとお祝いがてら同僚が飲み会を開いてくれた。お酒に強い両親のもとに生まれたからか、はじめて飲んだビールはおいしかった。
「ビールはねぇ、のどごしなんだよ」なんて生意気を言っちゃう20歳だった。

ある日、飲み会で調子にのって飲みすぎてしまった。翌日は頭が痛くて身体が重く、仕事が全然はかどらなかった。午後になると元気になった。どうやら、あれが二日酔いというものらしい。飲みすぎても戻すことなく、二日酔いになるだけ。お酒に強い。
それならばと、金曜日はひとりで晩酌するようになった。ビールを飲みながら、しっぽり本を読んだり、ラジオを聴いたりした。

コロナ禍で2年間だけ上京した。恋人(夫)と同棲しながら、東京のデザイン学校へ通った。学校のプレゼン課題がうまくいったり、夫が試験に合格したり、なにか良いことがあるとご褒美にふたりで晩酌した。お酒を飲んでいる時間は、ふくふくとした気持ちになった。
でも、そのあと少し酔った状態で学校の課題をするから、100%の力が出せない。おまけに次の日は身体が重くて、家事がしんどくなった。胃薬がかかせなくなり、お酒を飲むと数日間は胃薬にたよる生活になっていた。

ならばとノンアルコールビールに切り変えてみるものの、どこかもの足りない。ビール味のジュースなのだ。
そんな中、アサヒから微アルコールの「BEERY(ビアリー)」が販売された。わたしたちには画期的な商品だった。
アルコールはわずか0.5%なのに、クラフトビールのような味わい。いわゆる本物のビールの味がした。しかも、飲み終わっても意識がはっきりしている。翌日にやってくる、あの独特なだるさがない。胃薬不要で元気もりもりだ。
「もう、これでいいじゃん」と我が家の定番になった。

卒業後は仕事のため、実家へUターンした。実家は変わり果てていた。
父は毎晩、お酒を飲むようになっていた。2年前はスタイル抜群だったのに、ぽっこりお腹になっていた。いわゆる中年太りだ。母はあいかわらず睡眠導入剤として、毎晩お酒を飲んでいた。もう、かれこれ20年以上続けている。眠りが浅く、睡眠負債が年々重なっているようだった。この前は、ただの夏風邪なのに1週間以上も寝込んでいた。

わたしもあと30年したら、両親のようになるのだろうかと不安になった。
もっと上手にお酒と付き合うことはできないのだろうか。

案の定、コロナ禍で職場の飲み会は一切なかった。必然的にお酒を飲む機会が減った。
それでも、3〜4か月に一度のペースでご褒美のお酒が飲みたくなる。そんなときは迷わず「BEERY」だ。ふわふわとほんのちょっぴり酔いを感じつつ、読書やデザイン制作ができる。

お酒は好きだ。でも、今の自分には微アルコールが合っている。お酒を飲みながら、ほろよい気分で好きなことを楽しみたい。そして、翌日も早起きして、もりもり活動したい。そんないいとこ取りができる時代になった。

無理に禁酒をしなくても、お酒とうまく距離をたもちながら生活していけたらいい。そして、お酒を飲もうと強要しない。人それぞれの距離感で、お酒とケンカすることなく、みんなとお友だちでいたい。

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