日々のアウトプットが私の大切な習慣
はじめに
梅雨入りした休日の早朝、ライオン株式会社とnoteによる「 #日々の大切な習慣 」の投稿企画を見つけた。私の「日々の大切な習慣」とはなんだろう…。すぐに頭に浮かんだのは、「日々のアウトプット」であった。
文書の長さはどうあるべきか
日々のアウトプットを始めた頃の私は、作業療法士として病院に勤務していた。作業療法士とは、リハビリテーションの専門職の一つで、対象となる方の「よりよく生きる」を共に考えて伴走することを仕事としている。
対象者の「よりよく生きる」を考えるためには、医学の知識やリハビリテーションの技術はもちろん必要であるが、生活の知恵や工夫、新規性のある発想力も求められる。そのために、私はたくさんの論文を読み、そして書いてきた。
私が論文を書いたときは、同じ医療チームの医師に添削していただくことが多かった。あるとき、論文の内容がこれまでと違う区分であったことから、別の医師に添削をしていただいた。そのときに指摘された言葉は、10年以上経った今も強烈に覚えている。
「文章が冗長的すぎる」
当時の私は、できるだけ詳しく長く書くことを意識していた。論文の文字数は、投稿規定で上限が定められている。この文字数の上限いっぱいを使って、できるだけ詳しく書くものだと私は思い込んでいたのだ。
しかし、一般的には、医学論文は端的で短いほど好まれるようだ。論文のタイトルの末尾に「?」を付し、論文の要旨は「Yes」(あるいは「No」)のみという海外の医学論文もあるという。臨床の合間に効率的に情報をアップデートするには、論文は短いほど都合がいい。しかし、そのこと以上に、文章は端的で短い方がわかりやすいのだ。
これまで努めて長く書いてきた文章を短くする…。その日から、私は価値観の転換と短い文章を書く能力の向上を迫られたのだ。
文才の無さをいかに補うか
私が短い文章を書く練習として目をつけたのは、SNSである。効果的なリハビリテーションには、「数をこなすこと」と「主体的に取り組みこと」が大切となる。これを具現化できる手段が、SNSであった。
私のアカウントの記録を見ると、Facebookは2011年7月、Instagramは2012年10月、X(旧Twitter)は2022年7月、Threadsは2023年7月、TikTokは2023年12月から始めている。その他にも、Clubhouseとnoteも数年前から始めている。私がSNSを始めたきっかけは、「これまでの冗長的な文章をできるだけ短く表現できるようになるため」である。したがって、私が今も積極的に発信しているSNSは文字を扱うものである。特に、140文字が上限となるXは、最適な練習帳である。
SNSに主体的に取り組むには、自身の喜怒哀楽に向き合うのがよい。日々必ず感じる喜怒哀楽を文字で表現する。しかも短く。表現した文章を見た方が、「いいね」や「♡」を送ってくれる。人とのつながりも、誰もが持つ承認欲求も同時に満たしてくれる。まさに、最適な練習帳である。しかし、10年以上続けてきて、嫌なこともあった。皮肉や陰口である。ここで学んだのは、人間の喜怒哀楽のうち、「喜」と「楽」に対しては妬む人が一定程度いることだ。私が評価されたこと、私が人前に立ったこと、私の努力が報われたことなどはその対象となる。私が見聞きする私に対する皮肉や陰口は、ほぼこれらに起因しているようにみえる。
端的で短い文章を書くためのコツ
端的で短い文章を書く練習をSNSで10年以上続けてきた私が感じるのは、「翌桧(あすなろ)の木のような文章を心がける」ことがコツであるということである。突飛な表現でわかりにくいかもしれないが、翌桧の木は「幹はまっすぐで枝は短い」という特徴がある(冒頭の写真は翌桧)。つまり、伝えたいことを一本まっすぐに示し、それを補足する枝葉を最低限にする作業が、端的で短い文章を書くためのコツである。
これは、文章を書く場合に限らず、人に話すときも重要な視点となる。一般的に、わかりにくい話には共通点がある。まず、幹がまっすぐではない。幹の太い部分の話や細い部分の話を行ったり来たりしている。そして、枝葉が多い。補足する内容が多すぎて、肝心の幹が見えなくなってしまう。
他方、翌桧の名前の由来は、「明日はヒノキになろう」という意味から名付けられたという説もあり、枕草子にもその意味で記されているらしい。語源にひそむ「向上心」も、端的で短い文章を書くためのコツの象徴として相応しく感じる。
おわりに
私の日々の大切な習慣は、SNSを練習帳とする喜怒哀楽のアウトプットである。何かを改善したいときは、数をこなすことと主体的に取り組むための工夫が必要となる。SNSはその手段として、私には適していた。しかし、SNSを習慣の手段とすることで、思いもよらずに傷つくこともある。その際は、別の工夫も必要となる。
「翌桧の木のような文章を意識する」。日々の大切な習慣として、これからも、これまでのように、たくさんの翌桧の木を育てていきたいと思う。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(写真は「庭木図鑑 植木ペディア」より引用しました)
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