作業療法士として臨床を行っていた私は、対象者の活動や(社会)参加の視点で自立支援を行ってきました。しかし、私が身を置いていた医療や介護の領域から手の届く範囲は狭く、対象者が経済的な自立にまで至ったか否かを確認できる機会は限られていました。そこに、私はずっと強い無力感を感じていました。私が自身のSNSのプロフィールに、”地域住民の医療リテラシーの向上及び障がい者の自立支援のあり方を模索中”と記載している根源はそこにあります。
”「この子を残して死ねません。たった1日でいいから、私は子どもより長生きしたい」”
この言葉は、父親が経営していた大和運輸株式会社をヤマト運輸として急成長させた小倉昌男氏が、阪神淡路大震災後の共同作業所で耳にした言葉です。共同作業所で月給1万円程度で働く障がい者の保護者の方の心の叫びでした。
近年では、障がいのある方を「貴重な労働力」として考える企業は増えているようです。その背景には、社会や企業による障がいの理解や労働力低下、障害者雇用に対する国の政策の影響が考えられています。
現在、民間企業の法定雇用率は2.3%です。国はこれを、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げる計画です。一方、令和4年の集計では、法定雇用率達成企業の割合は48.3%という状況です。
私は、障がいのある方の経済的な自立について、残りの人生のどこかでお手伝いしたいと本気で考えています。だから、今は大変だなと感じることや、できれば逃げたいと感じるような役割を与えられた際も、「これは(この役割は)、将来どのように障がいのある方の経済的な自立支援に繋がる経験かについてを考え、それに役立つはずだから頑張ってみようと自分を納得させながら取り組んでいる感があります。
いずれにしても、いつの日か、作業療法士と経営の補助に携わった経験を活かした社会貢献をしたいと、私は考えています。
本noteを記すきっかけとなったのは、株式会社ヘラルボニーの設立の経緯と歩みをまとめた書籍(松田文登,松田崇弥『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える』)を読んで感銘を受けたためでした。
この書籍の書評を、私が尊敬する経営学者のひとりである、一橋大学大学院の楠木建教授が記しています。この書評を引用して、本noteを閉じたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考
厚生労働省「令和4年障害者雇用状況の集計結果」
厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」