カツサンド界のイノベーション
とんかつを食べに行こう、というので、
なおかつ商店のナオト(※)に「とんかつ清水」に連れて行ってもらった。
バーみたいなとんかつ屋
「夜はバーになって、有名な人や変わった人や、
いろんな人たちが集まってくるんだけど、
とんかつ屋なんです」
たしかに、入口は料理屋っぽいたたずまいだが、
扉を開けて店の中に入ると、
薄暗くてカウンターしかなくて、
バーそのものだった。
味と雰囲気で、遠くからもお客さんがやってくる。
https://www.instagram.com/tonkatsu_shimizu/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D
カウンターの奥の方につかつか進んで座ると、
ほかのお客さんから、ちょっと距離がある。
お店の不文律で常連さんしか使えない場所なのか、
オーナーがラグビーをやっていたそうなので、
元日本代表のナオトはこの店でもいいポジションをもらっているんだろう。
バイトのタロウくんとも親しげに会話をしている。
タロウくんのタロウは名字で、田老と書く。
その字の町が岩手にあるよ、といったら、
「山田町の出身です」
という。
山田町は釜石からちょっと北に上がっていった、
かつてはクジラの水揚げ基地として有名だった町だ。
びっくりのカツサンド
ナオトはカツサンドを注文。
タロウくんは「ヒレにしますか?ロースにしますか?」。
ナオトは「両方」。
てっきりとんかつ定食を食べるのかと思っていたし、
昼飲みが目的だったので、
とんかつ定食でどうやって盛り上げようか考えていたわたしなので、
カツサンドだとビール飲みながらでも相性がいい。
なおかつ商店が卸した生ビールを飲みながら、
突き出しのもつ煮を食べながら、
なおかつ商店の卸した生ビールをお代わりしながら、
カツサンドのご登場を待った。
待つこと10分ぐらいか。
カツサンドがお出ましになって、びっくりした。
肉の厚さが4cmか5cmもある。
口をかなり大きく開けないと、かじれない。
発想のジャンプが生んだストロングスタイル
カツサンドといえば、「まい泉」のカツサンドである。
空港や鉄道の駅のお弁当売り場で売っている、あれ。
とんかつの衣がソースを吸ってしっとりと、
そのソールがしっとりとしたパンとの接着剤にもなって、
パンがかつを優しく包み込み、
パンとかつとソースが一体感と高級感を醸し出している。
そんなまい泉のカツサンドは、
箱を開けてひと切れ目を食べているときが高揚感のピークで、
ふた切れ目を楽しんだあとは、いちまつの寂しさを感じ始め、
食べ終わったあとは満足感はあれども満腹感まではもう一歩のところ。
いってみれば、寸止めの美学的な、
そんなたおやかな風情のあるのがまい泉のカツサンド。
対して、京都清水のカツサンドは、
パンなんてどでかいカツにちょこんとくっついてるだけのような、
むき出しの肉がマウントを取ってくる、ワイルドなストロングスタイル。
ひと切れ両手に持ち(片手ではムリ)、大きく口を開けてワンバイト。
まさにかじりつく、という感じ。
低温でじっくり揚げられて、肉がまさに肉肉しい。
肉汁とやや甘めのソースといっしょになって、
口の中にじゅわ〜っと旨さが広がっていく。
ひと切れ食べたあとは、付け合せの柴漬けで、油感を緩和させる。
京都らしいお漬物の使い方でもある。
ナオトがいうには、
飲食業界に転職しようとしていたオーナーは、
たまたま居抜きでこの物件を買い、
そこにフライヤーがあったから、とんかつ屋にした。
特別にとんかつを修行したわけではなく、
そんな感じでとんかつ屋を開いて、
いろんな試行錯誤をしたのちに、いまのストロングスタイルにたどり着いた。
厚さ5cm、付け合せに柴漬け、バーのスタイル。
こうした思考の飛躍、発想のジャンプが、
カツサンドにイノベーションを起していた。
なおかつ商店のナオト(※)