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太陽が赤いのはなぜなんだろうか

太陽が赤いのはなぜなのか。
「真っ赤な太陽」はどうしてなのか。

『漢文の素養』を読んでいる。

中国から日本に漢字が渡ってきたのは弥生時代。
そのとき、すでに歴史書や思想書も書き残せるくらいに高度に発達した漢字文化に比べ、
日本の言葉(やまと言葉、和語)は未熟な言葉で、
漢字文化を吸収することで「日本人」になっていった。
(そもそも「日本」「日本人」という呼び方自体が漢語)

日本人(というか、古代のヤマト民族)の言葉である和語は、
色を表す言葉をあまり持ってなかった。
「赤」は「明(あか)し」
「青」は「淡(あわ)し」
「黒」は「暗(くら)し」
という、明暗や濃淡を示す言葉の転用、だそうで、
だからギラギラ光っているのに「真っ赤な太陽」で、
白に近いうすーい黄色なのに「月がとっても青い」からわざわざ遠回りして帰りましょうね、という歌になる。

日本人お得意の、外国の文化技術をわがことのように身につけて、
社会にどんどん実装していくイノベーションは言葉の界隈でもあてはまり、
幼稚な和語が漢語を吸収することによって、
7世紀ごろには色彩の美に耽っていくようになるし、
8世紀になると、奈良に巨大な木造建築と金や銅でできた大仏をつくり、
19世紀半ばには、西洋の文明をいち早く漢字の造語になおして明治維新につなげ、
「科学」「進化」「経済」「自由」「権利」「民主主義」「哲学」など、
日本製漢語である新漢語として、中国であたり前に使われるようになっている。

子どもたちは誰に教えられもしないのに、太陽を赤く描き、
淡く光る月を眺めながら、夏目漱石は I love you を
「月がキレイですね」
と訳した。

日本語ってなんて不思議で豊かなんだろう、と思う。

(『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』加藤徹 光文社新書 2006年)