見出し画像

加速主義のオンラインから離れて

東京の知り合いと話をしていると、
「仙台ぐらし、どうですか?」
と、ときどき聞かれる。

すんごい遠いという思い込みと現実

遠い東北=仙台、
という図式というか思い込みは、
わたしにもかつてあった。
仙台に赴任してる先輩にたまに会って、
「遠くて大変ですね」
というと、
「そんなことないよ、2時間ぐらいだよ」
と。新幹線で2時間なのが仙台で、
わたしはもっと北の岩手で、
岩手でも新幹線なら盛岡の手前の新花巻で、
盛岡なら「はやぶさ」で2時間30分、
(東京ー上野ー大宮ー仙台ー盛岡)
新花巻は「やまびこ」で3時間。
(東京ー上野ー大宮ー宇都宮ー……新花巻)

新花巻から釜石線に乗って2時間。
トータル5時間でようやく東京から釜石にたどり着く。
実際、すんごい遠い。

でも「それちょ」

でもわたしにとって、その5時間がすごく好きなのだ。
「それはちょうどよかった(それちょ)」、なのだ。

というのは、新幹線の場合、車内でwifiが飛んでいるから、
パソコン使っての仕事ができる。
(書類はすべてクラウド化してるから)

ローカル線の中では、wifiを使わない仕事に切り替えられる。
wifiなくてもメールを送ったり調べ物をしたりもできるけれども、
ネットに繋げないと割り切って、
本を読んだり資料を読んだり、
ペンで紙に描き出して考えてることをまとめたり。

それらを25分タイマーかけて切り分けながら仕事をしてると、
ローカル線で4つの仕事、
新幹線で6つの仕事ができる。
(だいたい)

とくに、ローカルの釜石線のwifiなしの時間が好きだ。
アナログな時間。

加速主義のオンラインから離れて

そういえば、最近注目されているZ世代のライター竹田ダニエルさんの本を読んでると、

生まれた時からインターネットがあるZ世代にとって、常にネットで「繋がっている」ことの反作用として、ネットから「離れる」こともまた大切だ。むしろ現代的なテクノロジーが存在しなかった、ノスタルジックで「レトロ」なカルチャーに強い魅力を感じていることも、わかりやすい例だ。レコード収集やヴィンテージファッションといったレトロ回帰のトレンドの延長線上には、加速主義のオンラインから離れて、お風呂やアロマを楽しんだり、本を読んだり、ヨガをするなど、「地に足のついた」セルフケアが存在する。

『世界と私のA to Z』 竹田ダニエル  P15

加速主義のオンライン、なるほど。
たしかにオンライン化された忙しない日常や仕事を
「加速主義」
とは言い得て妙だ。

とすれば、釜石線のなかでわたしは、
ネットから離れてセルフケアをしている、
ということにもなるのか。

釜石と東京の間の5時間はわたしにとって、
加速主義とセルフケアの両方があるから楽しいのだろう。


『世界と私のA to Z』 竹田ダニエル 講談社 2022年